ナルコレプシーの診断基準と検査方法を徹底解説|症状・治療法・他の睡眠障害との違いも紹介
睡眠障害の中でもナルコレプシーは、「怠けているだけ」と誤解されやすい病気ですが、実際には脳の睡眠と覚醒を調整する働きに異常が生じることで発症します。
適切な検査と明確な診断基準に基づく評価によって、正しく理解し治療につなげることが大切です。
この記事では、ナルコレプシーの検査方法と診断基準を中心に、症状の特徴や治療法、他の睡眠障害との違いを詳しく解説します。
「眠気が強く日常生活に支障がある」「朝起きても疲れが取れない」と感じている方は、早期に医療機関を受診することが重要です。
精神疾患や睡眠障害でお困りの際は、専門のスタッフが在籍するシンプレ訪問看護ステーションまでお気軽にご相談ください。
ナルコレプシーの検査方法と診断基準を徹底解説

ナルコレプシーは、日中の強い眠気や情動に伴う脱力発作(カタプレキシー)を特徴とする睡眠障害です。診断には、客観的な検査と臨床症状の総合的な判断が必要とされます。
主に「反復睡眠潜時検査(MSLT)」「睡眠ポリグラフ検査(PSG)」「髄液オレキシン検査」の3つの方法で評価を行います。
それぞれの検査には明確な診断基準があり、眠気の強さ・レム睡眠の出現タイミング・オレキシン濃度をもとに総合的に判断されます。
特にMSLTでは昼間の眠気の強さを客観的に測定し、ナルコレプシーか他の過眠症かを見極める重要な検査です。
PSGは睡眠中の脳波や呼吸、筋肉の動きを詳細に調べることで、睡眠時無呼吸症候群など他の疾患を除外します。
さらに、髄液オレキシン検査はⅠ型・Ⅱ型ナルコレプシーの区別に有効です。
このように複数の検査を組み合わせて総合的に評価することで、正確なナルコレプシーの診断が可能になります。
思春期から発症することも多いため、「睡眠不足ではないのに強い眠気が続く」と感じたら、専門医への早期相談をおすすめします。
反復睡眠潜時検査(MSLT)
反復睡眠潜時検査(MSLT)は、昼間の眠気の強さや入眠の早さを数値化して評価する検査で、ナルコレプシー診断の中心的役割を担います。
検査方法の流れ
脳波・眼球運動・筋電図・呼吸センサーを頭部や顔に装着し、2時間おきに5回、各20〜30分間の昼寝テストを行います。
検査当日はカフェイン摂取を控え、各セッションの間は居眠りをしないなど、事前に守るべき注意事項があります。
診断基準のポイント
5回の検査のうち、平均睡眠潜時が8分以内であり、入眠時レム睡眠が2回以上確認された場合にナルコレプシーと診断されます。
この検査は、昼間の眠気を訴える特発性過眠症の診断にも用いられます。
睡眠ポリグラフ検査(PSG)
睡眠ポリグラフ検査(PSG)は、夕方から翌朝まで睡眠の状態を詳細に記録し、脳波や呼吸、心拍、筋肉の動きを測定する検査です。
検査方法の詳細
脳波、鼻カニューレ、心電図、筋電図、胸腹部の呼吸センサーなどを装着して睡眠の質を観察します。
また、ビデオカメラによるモニタリングで寝言や体動も確認します。
診断基準に基づく評価
ナルコレプシーでは入眠から15分以内にレム睡眠が出現する特徴があります。
この所見が確認されるとともに、睡眠時無呼吸症候群など他の疾患を除外する目的でも利用されます。
髄液オレキシン検査
髄液オレキシン検査は、ナルコレプシーの原因とされるオレキシン欠乏を確認するために行われます。
検査方法について
腰椎穿刺により脳脊髄液を採取し、オレキシン濃度を測定します。
大学病院などの研究施設で実施されることが多く、保険適用外のケースもあります。
診断基準と判定の目安
脳脊髄液中のオレキシン濃度が110pg/ml以下、または正常値の3分の1以下の場合、ナルコレプシーと診断されます。
白血球型検査など他の結果も併せて総合的に評価します。
ナルコレプシーの症状をチェック

ナルコレプシーは、単に「眠気が強い」だけの病気ではありません。睡眠障害との関係を理解することで、症状の背景にあるメカニズムを知ることができます。ここでは、ナルコレプシーに見られる主な症状や病型ごとの特徴を詳しく解説します。
睡眠障害との関係
睡眠障害とは、睡眠の質や量が不足して日常生活に支障をきたす状態を指します。ナルコレプシーはその一種であり、覚醒と睡眠を切り替える脳の仕組みに問題が生じているのが特徴です。
十分な睡眠をとっているにも関わらず強い眠気が続くことや、眠ってはいけない状況で突然眠ってしまうことが多く、学校や職場でのパフォーマンス低下、交通事故などのリスクもあります。
また、夜間の睡眠にも特徴的な異常が見られます。中途覚醒や夢に似た幻覚、金縛りなどが起こり、眠りの質が悪化することで日中の眠気がさらに強まる悪循環が生じるのです。
このように、ナルコレプシーは単なる過眠症ではなく、「睡眠リズムの制御がうまく機能しない状態」といえます。
ナルコレプシーの代表的な症状
・過度の眠気(耐えがたい眠気が突然出現)
・情動脱力発作(カタプレキシー:笑いや驚きなどの感情で筋力が抜ける)
夜間や入眠時の症状
・入眠時・覚醒時の幻覚(夢と現実が混ざるような感覚)
・睡眠麻痺(金縛り)
・夜間の中途覚醒や熟睡困難
これらの症状は個人差がありますが、日中の強い眠気と情動脱力発作が同時に見られる場合は、ナルコレプシーの可能性が高いと考えられます。特に学業中や運転中など、集中している場面でも突然眠り込んでしまうケースがあり、本人だけでなく周囲の安全にも影響を及ぼします。
病型による違い(Ⅰ型・Ⅱ型)
ナルコレプシーは、症状と脳脊髄液中のオレキシン濃度によって「Ⅰ型」と「Ⅱ型」に分類されます。
・カタプレキシー(脱力発作)を伴う
・髄液中のオレキシン濃度が著しく低下している
Ⅱ型ナルコレプシー
・カタプレキシーを伴わない
・オレキシン濃度が正常または軽度低下
Ⅰ型ではオレキシン神経の働きが顕著に低下しているため、情動脱力発作や極端な眠気が目立ちます。一方、Ⅱ型ではオレキシン濃度が正常なことも多く、脱力発作が見られない分、他の過眠症との鑑別が難しくなるケースもあります。
いずれの場合も、早期に正確な診断を受けることが、その後の生活改善や治療効果を左右する大切なステップです。
ナルコレプシーの治療法とは

ナルコレプシーは完治が難しい病気とされていますが、適切な治療によって症状をコントロールし、日常生活を快適に過ごすことが可能です。治療は薬物療法と非薬物療法の両面から行われ、症状の重さや生活環境に応じて方法を組み合わせます。
薬物療法を伴わない治療
まず基本となるのが、生活習慣を整えることです。十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを作ることで、日中の眠気を軽減できます。また、昼寝を計画的に取り入れることも有効です。ここでは、薬を使わずに行える代表的な対策を紹介します。
生活習慣を整える工夫
毎日決まった時間に就寝・起床することで体内時計を整えます。スマートフォンの使用を寝る直前まで続けない、寝る前のカフェイン摂取を避けるなども効果的です。
仕事や学業でリズムを整えるのが難しい場合は、医師に相談し診断書などを活用して、十分な休息をとる環境を整えることが大切です。
昼寝できる環境をつくる
ナルコレプシーの方は日中に強い眠気が生じやすいため、短時間の昼寝を習慣にすることで集中力を維持できます。昼休みや帰宅後の夕方など、1回10〜20分ほどの仮眠を取るのがおすすめです。
周囲の理解を得ながら、無理のない範囲でリズムを作ることが症状安定への第一歩となります。
薬物療法による治療方法
非薬物療法で改善が難しい場合には、症状に合わせた薬物療法が検討されます。薬は主に3つの目的で使用されます。
① 昼間の過度な眠気の軽減 ② レム睡眠関連症状(脱力発作・幻覚など)の抑制 ③ 夜間の中途覚醒の改善です。
| 薬名 | 特徴 |
|---|---|
ベタナミン![]() |
朝のみの服薬で効果が持続。半減期が短く依存性が少ない。 |
モディオダール![]() |
中枢神経刺激薬で、眠気の程度を軽減。比較的副作用が少ない。 |
リタリン![]() |
効果が強いが、依存性リスクがあるため専門医の管理下で使用。 |
薬物療法は眠気を抑えるだけでなく、社会生活の質を維持するためのサポートとして重要です。
抗うつ薬が処方されることもあり、レム睡眠に関係する幻覚や脱力発作の軽減が期待できます。夜間の中途覚醒が強い場合は、睡眠薬を補助的に用いることもあります。
ただし、頭痛や動悸、肝機能障害、不安感などの副作用が生じる場合があるため、服薬中は定期的な診察が必要です。医師の指導を守り、自己判断で中断しないことが治療の継続において最も重要です。
ナルコレプシーと区別が必要な睡眠障害

ナルコレプシーは強い眠気や脱力発作などが特徴ですが、似た症状を示す睡眠障害も存在します。正確な診断のためには、それらとの違いを見極めることが重要です。ここでは、睡眠不足による過眠症状や中枢性過眠症、睡眠覚醒リズムの乱れなど、混同されやすい疾患を紹介します。
睡眠不足による過眠症状
・睡眠時無呼吸症候群
・周期性四肢運動障害
睡眠時間が不足するケース
・慢性的な睡眠不足(睡眠不足症候群)
・不眠症
慢性的な睡眠不足は、ナルコレプシーと同様に「日中の強い眠気」を引き起こします。しかし、原因は睡眠時間や質の不足であり、脳内のオレキシン異常によるものではありません。
睡眠不足が続くと集中力の低下や情緒不安定を招き、うつ病や高血圧、糖尿病などの生活習慣病のリスクも高まります。日中の眠気がある場合、まずは十分な睡眠が確保できているかを見直すことが大切です。
中枢性過眠症との違い
- ナルコレプシー
- 特発性過眠症
- 反復性過眠症
- 薬剤性過眠症
中枢性過眠症は、睡眠時間が足りているにもかかわらず強い眠気が続く疾患の総称です。その中で代表的なものが「特発性過眠症」と「反復性過眠症」です。
特発性過眠症では日中に長時間の睡眠を取っても眠気が取れず、目覚めても頭がぼんやりとした状態が続きます。一方、反復性過眠症は数日から数週間の過眠発作が周期的に起こるのが特徴です。
ナルコレプシーと異なり、入眠直後にレム睡眠が出現しない点が診断上の大きな違いです。
また、風邪薬や抗ヒスタミン薬、抗うつ薬などによっても眠気が引き起こされることがあります。特に高齢者では代謝が遅くなるため、短時間作用型の薬でも注意が必要です。
こうした要因による眠気は一時的であり、原因薬剤の調整で改善することが多いですが、ナルコレプシーの診断基準と区別するには医師の判断が欠かせません。
睡眠覚醒リズムの乱れ
・睡眠相後退症候群(すいみんそうこうたいしょうこうぐん)
生活習慣による影響
・時差ぼけ
・夜勤・交代勤務(シフトワーク)
人の体は本来、昼に活動し夜に眠るように設計されています。しかし、体内時計が乱れると夜眠れず朝起きられないといった問題が生じます。代表的なのが睡眠相後退症候群で、就寝・起床の時間が極端に後ろへずれてしまう病気です。
長期休暇や受験勉強などで夜型生活が続くと発症することが多く、学校や仕事に支障が出ます。治療では、光療法や生活リズムの調整を用いて生体リズムを整えることが有効です。
また、夜勤を伴うシフトワークや海外出張などによる時差も、睡眠覚醒リズムを乱す原因になります。これらは一見ナルコレプシーに似た眠気を引き起こしますが、原因が環境や生活習慣にある点で区別されます。
生活パターンを見直し、睡眠環境を整えることが改善の第一歩となります。
精神疾患や睡眠障害でお悩みならシンプレへ

ナルコレプシーをはじめとする睡眠障害は、精神的なストレスや生活環境の変化とも深く関係しています。症状を放置してしまうと、うつ病や不安障害などを併発することもあるため、専門的なサポートを受けることが大切です。ここでは、精神疾患や睡眠障害でお悩みの方を支える「シンプレ訪問看護ステーション」の特徴と対応エリアをご紹介します。
シンプレ訪問看護ステーションの特徴
シンプレは精神疾患・発達障害・睡眠障害など、心のケアと生活支援を専門とした訪問看護ステーションです。看護師・准看護師・作業療法士など多職種のスタッフが在籍し、利用者さま一人ひとりに合わせた支援を行っています。
- 精神疾患や睡眠障害に特化した看護体制
- 利用者さまの自主性・尊厳を大切にした支援
- 医療機関・行政・ご家族との連携体制
- 退院後の生活支援や再発予防サポート
また、訪問スタッフは精神科領域に特化した経験を持ち、うつ病・統合失調症・ナルコレプシーなど、さまざまな症状に対応しています。
「病気と上手に付き合いながら自分らしく生活すること」を目標に、利用者さまのペースに寄り添った看護を提供しています。
シンプレの対応エリア
シンプレ訪問看護ステーションは、都内および近郊エリアを中心にサービスを提供しています。
以下の地域での訪問が可能です。
・東京23区
・西東京市、武蔵野市、三鷹市、調布市、府中市、東久留米市
・埼玉県一部地域
※上記以外の市区町村でも訪問可能な場合があります。お気軽にお問い合わせください。
訪問時間は1回あたり30〜90分、週1〜3回を基本としていますが、必要に応じて週4回以上の訪問にも対応可能です。土曜・祝日も訪問を行っており、急な体調変化や生活の困りごとにも柔軟に対応します。
また、医療保険を中心に「自立支援医療制度」「心身障害者医療費助成制度」「子ども医療費助成制度」「生活保護」などの制度を利用することができます。
介護保険をお持ちの方でも、精神科訪問看護は医療保険が適用されるため、経済的な負担を抑えながら支援を受けることができます。
ご相談は電話・メールのほか、LINEやSNSからも受け付けています。
「眠気が強く生活がつらい」「精神的に不安定でサポートがほしい」など、どんな小さな悩みでもお気軽にご連絡ください。シンプレのスタッフが、あなたの生活と心を丁寧に支えます。
まとめ|ナルコレプシーの判断基準を理解し早期対応を

ここまで、ナルコレプシーの検査方法や診断基準、症状、治療法、そして他の睡眠障害との違いについて詳しく解説してきました。
ナルコレプシーは「怠けている」「ただの眠気」と誤解されることが多い病気ですが、脳の覚醒を維持する仕組みの異常によって生じるれっきとした疾患です。
診断には「反復睡眠潜時検査(MSLT)」「睡眠ポリグラフ検査(PSG)」「髄液オレキシン検査」などがあり、それぞれの診断基準に基づいて総合的に判断されます。これらの検査を受けることで、ナルコレプシーか他の過眠症かを明確に区別でき、適切な治療につなげることができます。
特に思春期から20代前半にかけて発症するケースが多く、放置すると学業・仕事・人間関係などに大きな影響を及ぼします。早期に正確な診断を受け、生活リズムを整えながら医師の指導に沿った治療を続けることが大切です。
また、薬物療法だけでなく、生活習慣の改善や昼寝の取り方、ストレスケアなども組み合わせることで、日中の眠気を和らげることができます。
症状が安定すれば、仕事や学校生活を維持しながら社会復帰を目指すことも可能です。
もし「眠気が強く集中できない」「脱力発作が起きる」「周囲の理解が得られずつらい」などの悩みがある場合は、一人で抱え込まずに専門機関へ相談してください。
シンプレ訪問看護ステーションでは、精神疾患や睡眠障害を持つ方を対象に、退院支援・服薬支援・社会復帰サポートなどの訪問サービスを行っています。
うつ病や統合失調症、発達障害、パニック障害など、併発しやすい疾患にも幅広く対応しており、看護師・准看護師・作業療法士がチームでサポートします。
「眠気のコントロールが難しい」「外出が不安」といった方も、自宅で安心して支援を受けられるのがシンプレの強みです。
早期に正しい診断を受け、生活の質を高めながら症状と向き合うことが、ナルコレプシー治療の第一歩です。
少しでも不安を感じたら、まずは専門医やシンプレ訪問看護ステーションへご相談ください。
記事検索
人気記事
最近の投稿
これまでの記事
- 2025年4月 (3)
- 2025年3月 (8)
- 2025年2月 (12)
- 2025年1月 (6)
- 2024年12月 (7)
- 2024年11月 (5)
- 2024年10月 (4)
- 2024年8月 (7)
- 2024年7月 (7)
- 2024年6月 (8)
- 2024年5月 (3)
- 2024年4月 (3)
- 2024年3月 (1)
- 2024年2月 (10)
- 2024年1月 (6)
- 2023年12月 (5)
- 2023年7月 (2)
- 2023年6月 (11)
- 2023年5月 (6)
- 2023年4月 (8)
- 2023年3月 (9)
- 2023年2月 (28)
- 2023年1月 (20)
- 2021年10月 (1)
- 2021年9月 (10)
- 2021年8月 (21)
- 2021年7月 (12)
- 2021年3月 (5)
- 2021年1月 (10)
- 2020年11月 (31)
- 2020年10月 (7)

