アルコール依存症の治療薬で用いられているものや効果について紹介

アルコール依存症の治療には治療薬が使われます。治療のサポートとして用いるためです。
身体が酒の依存性を覚えているため、再び酒を飲んでしまう可能性があります。治療薬は飲酒すると身体が拒否反応を示したり、飲酒欲求を減らすことも可能です。
そんなアルコール依存症に用いられる治療薬を詳しく紹介します。
アルコール依存症と治療薬
①断酒治療
アルコール依存症からの脱却
治療概要
・断酒を実行
・様子を見つつ精神療法、投薬治療
・治療後経過観察
アルコール依存症の治療をおこなう際には、原則としてお酒をのまない断酒治療をおこなう必要があり、多くの場合は入院治療が選択されます。
治療には入院しておこなう「解毒期」、「リハビリテーション期」、通院しておこなう「アフターケア」と3つのステージがあり、経過にあわせた治療が必要です。
まずは断酒をおこなって、治療の経過であらわれるアルコール離脱症状に対応するための薬物治療や心理社会的治療をおこなうことで、心身の状態を落ち着かせます。
アルコール依存症は治療後にも再発することがありますので、通院して経過を観察したり、予防するための行動が大切です。
②減酒治療
・いきなり飲酒をやめられない方向け
・依存症予防として酒量を減らしたい
・軽度のアルコール依存を改善
治療概要
・減らす酒量を設定
・酒量を観察しつつ投薬治療
・治療後経過観察
断酒治療とは別の選択肢として、お酒をのむ量を減らし、お酒による害をできるだけ減らす「ハームリダクション」をコンセプトにした、減酒治療もあります。
減酒治療にも断酒治療とおなじように3つのステージがあり、それぞれ「導入期」、「治療開始時」、「継続管理期」です。
減酒治療の際には心理社会的治療を中心におこない、アルコール依存症への理解や、目標とするお酒の量の設定、治療の継続を目指します。
必要な場合には専門の施設と協力して治療をすすめることもあり、治療のサポートの選択肢として薬物治療を選択することも可能です。
治療で用いられる薬とは
アルコール依存症の治療では、治療の経過であらわれる症状に対して、薬を使った薬物治療もおこなわれることがあります。
アルコール依存症の治療で使われる薬は、断酒を維持するための薬(抗酒薬・アカンプロサート)と、お酒をのむ量を減らすための薬(ナルメフェン)などです。
また、大量にお酒をのんだあとに、急にお酒をやめたり量を減らしたりすると、アルコール離脱症状があらわれることがあります。
アルコール離脱症状があらわれた時には症状を落ち着かせる必要がありますが、その際にはベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬を使用することも1つの方法とされています。
もし依存症の治療をしなかったら
・酒を執拗に探す
・常に飲酒する
離脱症状
・手のふるえ
・イライラ
・焦燥感
・睡眠障害
心理特性
・屁理屈をいう
・周囲を過小評価する
行動異常
・暴言、暴力
・徘徊、行方不明
アルコール依存症の方は、お酒をのんではいけない状況でもお酒をのみたくなったり、「コントロール障害」とよばれる行動をとることがあります。
血液のなかのアルコール濃度がゼロに近づくと離脱症状があらわれますが、これは重症になると離脱けいれん発作や振戦せん妄がみられることもあり、注意が必要です。
患者さんは問題を認めない、または小さく評価する「否認」と、ものごとを自分に都合よく解釈したり、ほかの人に配慮しない「自己中心性」などの特性をもつとされています。
暴言や暴力行為、その他の行動異常は数ヶ月から数年つづき、アルコール依存症の治療が始まるきっかけになることもあります。
治療薬の詳細
①抗酒薬
・ジスルフィラム
・シアナミド
効き目
身体のアルコール拒否反応
(嘔吐、頭痛、動悸など)
抗酒薬は2種類ありますが、どちらも内服している時にお酒をのむと、血液のなかのアセトアルデヒド濃度が高くなることで、からだに不快なアルコール拒否反応をおこします。
アルコール拒否反応がおこる理由は、抗酒薬によってアルデヒド脱水素酵素の作用が阻害されるからです。
この効果により、抗酒薬を内服している患者さんは、お酒をのんでもアルコール拒否反応で不快な思いをするようになるため、お酒をのむ欲求が弱くなります。
結果的に断酒を続けやすくなるため、抗酒薬の内服をすることはアルコール依存症の治療を継続するために効果的と考えられています。
②飲酒欲求を抑える薬
アカンプロサート
効き目
・脳内の神経活動を抑制
・飲酒欲求を減退
アカンプロサートは、海外のアルコール依存症治療では20年ほど前から使用されていますが、日本では2013年に発売された薬です。
服用することで脳のなかの神経の伝達を阻害し、お酒をのむことへの欲求を軽減させることで、繰り返しお酒をのむリスクを下げることができるとされています。
アカンプロサートは断酒している人が服用すると断酒できる確率があがりますが、お酒をのんでいる人が服用しても効果がないと考えられています。
そのため、アカンプロサートを用いて治療をおこなう場合は、断酒治療も一緒におこなうことが前提となる条件です。
副作用も存在する
アルコール依存症の薬にも副作用がありますので、みていきましょう。
抗酒薬
アレルギーによる皮疹、肝障害がおこる場合があります。そのため血液検査を行うことが望ましいです。重症な肝硬変や、心臓・呼吸器疾患のある方は使用できないとされています。
重大な副作用としては、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群、落屑性紅斑といった症状があらわれることがあります。
飲酒欲求を抑える薬
下痢・軟便がおこることがありますが、多くは一時的なもので、しばらくすると症状がよくなることが多いです。腎臓に重い障害がある方は使用できないとされています。
重大な副作用としては、アナフィラキシーがあらわれることがあったり、舌腫脹、リンパ節腫脹などの症状を伴う血管浮腫があらわれることもあります。
併用して使われる場合もある
これらの薬はそれぞれ単独で使用するのではなく、効果を高めるために抗酒薬・飲酒欲求を抑える薬のどちらも併用して使う場合もあります。
さらに、薬物療法の効果を向上するために重要となるのが、アドヒアランスと呼ばれているものです。
アドヒアランスとは、患者さん本人がなぜ薬が必要なのかを理解して、積極的に治療に参加し、正しく薬を服用することをいいます。
アドヒアランスの向上のためには、家族に見てもらいながら薬をのんだり、薬箱を作って服用したかどうかチェックできるようにするなどの工夫をおこなうとよいでしょう。
薬以外でのアルコール依存症の治療
薬以外の治療カリキュラム
薬のほかにどんな治療カリキュラムがあるのか、それぞれ見ていきましょう。
①解毒治療
解毒治療では、補液(点滴)やベンゾジアゼピン系の薬を使うことで離脱症状をおさえ、必要であれば抗精神病薬、睡眠導入薬、抗うつ薬などを使うこともあります。
アルコール離脱症状は早ければ1週間くらいで治まることもありますが、肝臓やそのほかの臓器にも病気がある場合などは、この時期に並行して治療をおこないます。
②リハビリ治療
症状がおちついたらリハビリ治療に入りますが、ここからはお酒をのむ習慣の改善や、良好な社会生活を送れるよう支援するための心理社会的治療を中心におこないます。
心理社会的治療では、数名でテーマについて話しあう集団精神療法や、自分や周囲のことも相談できる個人精神療法、認知行動療法などがおこなわれます。
③アフターケア
アルコール依存症の治療が完了した患者さんは退院し、通院によって状態を維持しつつ、再発を予防するためのアフターケアをおこないます。
同じ問題や悩みをかかえた人が集まる「自助グループ」に参加し、仲間に自分の体験を語ったり、人の体験を聞いたりして支えあうことで、継続した治療につながるとされています。
特定非営利活動法人を利用する
アルコール依存症の予防には、特定非営利活動法人であるaskなどの行う再発防止・予防のための講演に参加することも有効とされています。
アルコール薬物問題に関しては、集会や講演などを行うことでアルコール依存症をはじめとした依存症の治療・回復支援を行っている特定非営利活動法人が複数あります。
同じ病気からの回復に取り組む意思をもった仲間と会ったり、コミュニケーションをとる場に参加したりすることで、治療に前向きに取り組むきっかけをつかむことができます。
療養者の方のみでなく、その家族の方も交えて相談を受けている団体もあるため、悩みをもつ方、そのご家族は利用してみることも1つの方法です。
精神科訪問看護も利用してみる
サービス名 | ![]() 精神科訪問看護 |
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職種 | ![]() ・看護師 ・准看護師 ・作業療法士 |
訪問日数 | ![]() 原則週3日以内 (※例外もあります。) |
精神科訪問看護では、精神に障害をもちながら地域で生活している方が、安心して生活を送ることができるようスタッフが定期的に訪問し、必要な支援をおこないます。
支援の内容としては、症状のコントロールや治療の相談、日常生活の援助、お薬の管理状況の確認や援助、家族の悩みや不安の解消などです。
訪問看護を受けるためには医師の指示書が必要になりますので、通院している方は主治医へ相談してください。
費用は各種健康保険が適用になり、自立支援医療制度を利用することもでき、生活保護受給者の方の場合は、費用はかかりません。
精神疾患をお持ちならシンプレへ
当ステーションの特徴
シンプレは精神疾患に特化した訪問看護サービスステーションであり、精神科の勤務経験もしくは精神科の訪問看護の資格を持ったスタッフが在籍中です。
専門的な知識のあるスタッフが在籍しており、これまでの経験で得た知見を活かしながら、利用者様の自主性・価値観を大切にし支援させていただきます。
シンプレ訪問看護ステーションでは、医療機関や行政と常に情報を共有しており、連携をとることで各方面の意見を取り入れ看護を行うようにしております。
精神疾患の一例
・酒類(アルコール)に依存する
・アルコール中心の生活になってしまう
統合失調症
・幻覚や妄想という症状が特徴的
・生活に支障をきたしてしまう
アルツハイマー型認知症
・脳の神経細胞が破壊、減少する
・徐々に日常生活が送れなくなる
その他精神疾患全般
シンプレ訪問看護ステーションは、限られた疾患だけでなく、精神疾患全般の患者様にご利用いただいております。
今回ご紹介したアルコール依存症のほかにも、統合失調症に代表される妄想性障害や、アルツハイマー型認知症やその他の認知症なども対象です。
ほかにも、子どものころに発症する多動性障害や自閉症、発達障害、はたらく世代のうつ病や適応障害など、お子様から高齢の方まで年齢や内容にかかわらず訪問します。
精神疾患で治療を受ける利用者様や社会復帰を目指す利用者様本人だけでなく、自宅でその支援をおこなう、ご家族のご相談もお受けしています。
シンプレの対応エリア
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<東京都>
・東京23区
※足立区、荒川区は1部エリアとなります。
・西東京市
・三鷹市
・武蔵野市
<埼玉県>
・和光市
・朝霞市
・戸田市※1部エリア
・新座市※1部エリア
シンプレ訪問看護ステーションの現在の訪問エリアは、上記中心に行っています。
訪問対応エリアを順次拡大しています。上記以外のエリアにお住まいでも、対応できる場合もございます。
こころの健康問題をひとりで抱えて悩むのではなく、相談することが大切です。お気軽に電話や問い合わせフォームにてお問い合わせください。
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まとめ
アルコール依存症では、抗酒薬やお酒をのみたいという欲求を抑える薬などを併用することで、お酒をのむ量や行動の改善をめざします。
アルコール依存症は再発する可能性もあり、治療後も周りの人の助けやサービスを利用して、再発を予防していくことが大切です。
治療を継続するために有効な方法として、自助グループに参加したり、精神科訪問看護を利用することもできるため、有効に活用しましょう。
現在アルコール依存症で悩んでいる方や、そういった方がご家族におられる方で、当ステーション、シンプレが気になるという方は、ぜひご相談ください。おまちしています。
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