PTSDの診断とは?診断基準・受診先・治療まで丁寧に解説|PTSD診断の流れをわかりやすく紹介
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、事故や災害、暴力体験など強いストレスとなる出来事をきっかけに、長期的な精神的苦痛が続く状態を指します。PTSDの診断では、症状の現れ方や生活への影響を丁寧に確認する必要があり、早めに専門機関へ相談することが重要です。元の体験が突然よみがえる、避けたい記憶がある、気持ちが落ち着かないなどの症状が続くと、日常生活に影響が出る場合もあります。ここでは、診断の前に知っておきたいポイントをわかりやすくまとめています。
PTSDとは?診断の前に知っておきたいこと

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の定義
PTSDは、強い恐怖やショックを伴う出来事を経験した後、その記憶が心身に大きな負担を与え続けることで発症する精神疾患です。事故や災害、虐待、犯罪被害など、誰にでも起こり得る体験がきっかけとなることがあります。PTSDの診断では、これらの体験によって現在の生活にどの程度影響が出ているかが慎重に評価されます。単なるストレス反応とは異なり、日常生活が送りにくくなるほど強い心理症状が続く点が特徴です。
主な症状(再体験・回避・過覚醒など)
PTSDには代表的な3つの症状があります。まず、出来事が突然よみがえる「再体験症状」です。フラッシュバックや悪夢など、日常の中で急に思い出してしまうことがあります。次に、記憶や場所、人を避ける「回避症状」。つらい気持ちを避けるために行動範囲が狭くなることもあります。そして、神経が過度に高ぶり続ける「過覚醒症状」。眠れない、落ち着かない、小さな音にも驚きやすいなど、身体的な反応も強く出ることが特徴です。これらが1か月以上続く場合は、早めの受診が大切です。
トラウマ体験とストレス反応の違い
大きなショックを受けた後、一時的に気持ちが不安定になるのは自然な反応です。しかし、時間の経過とともに落ち着いていくのが通常のストレス反応であるのに対し、PTSDでは症状が長期間続いたり悪化したりします。特に、再体験や強い不安、感情のコントロールが難しい状態が続くと、本人の努力では改善が難しいこともあります。PTSDの診断では、この「時間の経過で回復するストレス反応」と「治療が必要な症状」を区別するため、詳細な聞き取りや症状の確認が行われます。
PTSDの診断方法

問診表・患者の状態をもとに診断
PTSDの診断では、まず患者さんの日常で起きている変化や困りごとを丁寧に把握することから始まります。医療機関では、最初に問診表を用いて症状の有無や強さを確認し、その後の診察内容の基礎とします。問診表には、再体験・回避・過覚醒といった症状に関連する設問が含まれており、PTSDの診断に必要な情報を整理する役割があります。体験した出来事を思い出すのがつらい場合もありますが、記入した内容は診察を進めるうえで大切な手がかりとなります。問診によって医師が患者さんの状態をより正確に理解できるため、不安を抱いている方でも安心して受診できます。
診断の流れ
PTSDの診断は、問診と診察を段階的に進める形で行われます。多くの医療機関では、来院後に問診表を記入し、その後医師が症状や生活への影響について詳しく話を聞いていきます。出来事を話すことに抵抗がある方もいますが、診断では無理に思い出させるような進め方は行われず、患者さんの負担に配慮して進められるため、安心して臨むことができます。以下では、一般的な診断のステップを紹介します。
ステップ①問診表の記入
問診表では、体験した出来事や現在の症状をできる範囲で記入します。WEB問診に対応している医療機関もあり、自宅で落ち着いて記入できるメリットがあります。事前に記入しておくと、診察がスムーズに進み、自分の状況を整理する助けにもなります。問診内容は医師が状態を把握する重要な資料となり、PTSDの診断の正確性にもつながります。
ステップ②医師との診察
問診表の内容を踏まえて、医師が症状の経過や生活への影響について確認します。再体験や睡眠の質、気分の変化、避けている行動など、患者さんが普段どのように過ごしているかを丁寧に聞き取り、診断に必要な情報を集めます。気になっている点や不安な症状は遠慮せずに相談することで、より適切な診断と治療方針の決定につながります。
診断基準をもとに患者を診察する
PTSDの診断は、国際的に定められた診断基準(DSM-5)に沿って行われます。医師は問診と診察を通して、再体験・回避・否定的思考や気分の変化・覚醒亢進といった症状がどれだけ当てはまるかを慎重に確認します。症状が似ている他の疾患(うつ病、不安障害、適応障害など)との区別も重要であり、誤診を防ぐためにも細かいヒアリングが不可欠です。つらい症状が続いている場合や生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関へ相談することで悪化を防ぐことができます。
PTSDの診断基準(DSM-5より)

基準①侵入症状の診断
侵入症状とは、外傷的な体験が繰り返し頭に浮かぶことで、突然つらい気持ちや身体反応が起こる状態を指します。悪夢やフラッシュバックなどが代表的で、日常生活の中で急に当時の感覚がよみがえることがあります。PTSDの診断では、この侵入症状がどの程度続いているかを確認することが重要です。同じ体験をしたとしても、苦痛の強さや頻度には個人差があるため、医師は問診を通じて慎重に判断します。
基準②回避症状の診断
回避症状では、つらい出来事を思い出すきっかけとなる場所・人・情報などを避けようとする行動が見られます。これは「思い出したくない」という自然な気持ちからくる反応ですが、続くと行動範囲や人間関係が制限され、生活に影響が及ぶことがあります。診断では、これらの行動が意識的・無意識的に続いていないか、そしてそれにより困りごとが生じていないかが丁寧に確認されます。PTSDの診断の基準として非常に重要な項目です。
基準③認知・気分に対する悪影響の診断
DSM-5では、トラウマ以降に生じる否定的な感情や思考の変化も診断項目として定められています。例えば、罪悪感が強まる、興味が湧かなくなる、人とのつながりを感じにくくなるといった症状があります。これらは本人が「気分の落ち込み」とだけ感じてしまい、PTSDと気付かないケースも多くあります。医師は、症状がどのくらい続いているか、日常生活にどのような影響が出ているかを総合的に確認し、他の疾患との違いも慎重に見極めながら診断します。
基準④覚醒度・反応性の変容の診断
覚醒度の変化とは、心身が常に緊張した状態が続くことで、眠れない、怒りっぽくなる、集中力が落ちるなどの症状が現れる状態を指します。小さな物音で驚いてしまう「驚愕反応」が強くなることもあります。これらの症状は周囲から気づかれにくい反面、患者本人にとっては大きな負担となるため、診察では丁寧なヒアリングが必要です。PTSDの診断では、この覚醒亢進が1か月以上続いているかが確認されます。
診断の結果、他の疾患である可能性も
PTSDは多様な症状が現れるため、うつ病や不安障害との区別が難しい場合があります。そのため、診断では症状の背景を丁寧に確認し、「トラウマ体験との関連」が重要な判断材料となります。ストレスが強くかかる状況が続くと、複数の疾患が併発することもあり、適切な治療を受けるためには正確な見立てが欠かせません。つらい状態が続いている場合、まずは専門医に相談し、必要な治療につなげることが大切です。
PTSDの診断を受ける場所

精神科・心療内科
PTSDの診断を受ける際、もっとも一般的なのが精神科や心療内科です。これらの医療機関では、トラウマ体験による心理的影響や日常生活への支障度を総合的に確認し、PTSDの診断に必要な評価を行います。再体験や回避、眠れない・落ち着かないといった症状が続いている場合、まず相談する窓口として最適です。医師は問診を通じて症状の背景を丁寧に確認し、必要に応じて心理療法や薬物療法などの治療方針を提案してくれます。精神科・心療内科は予約制のところも多いため、受診を検討している場合は早めに連絡することをおすすめします。
専門のトラウマ外来
近年では、トラウマ治療を専門に行う「トラウマ外来」や「PTSD専門外来」を設置している医療機関も増えています。これらの外来では、PTSDに特化した心理療法(EMDR、持続エクスポージャー法など)を行える専門スタッフが在籍している場合が多く、より深い治療が必要な方に適した環境が整っています。PTSDの診断だけでなく、その後の治療方法についても専門的な説明が受けられるため、強い症状が続いている方や過去に治療がうまくいかなかった方にも有効です。医療機関によって対応している治療法が異なるため、事前に公式サイトや電話で確認すると安心です。
自治体や相談機関での初期相談
病院へ行く前に「まず自分の状況を相談したい」という場合は、自治体の相談窓口や地域のメンタルヘルス支援機関を利用することもできます。保健センター、地域包括支援センター、精神保健福祉センターなどでは、専門スタッフが悩みを聞き、適切な医療機関や支援につなげてくれます。トラウマ体験を言葉にすることが難しい方でも、負担にならない範囲で相談できるのが特徴です。症状が続く場合は、これらの機関を足がかりに、受診のハードルを下げながら支援につないでいくことが可能です。
PTSDの診断後の治療と治療期間について

治療は大きく分けて二通り(薬物療法・心理療法)
PTSDと診断された後は、症状の程度や生活状況に応じて治療方針が決定されます。代表的な治療として「心理療法」と「薬物療法」があり、多くの場合はこの2つを組み合わせて進めていきます。心理療法では、認知行動療法(CBT)やトラウマに焦点を当てた治療が行われ、出来事に対する捉え方や感情の調整をサポートします。薬物療法では、抗うつ薬や抗不安薬などを使用し、強い不安感や睡眠障害を和らげることが目的です。これらの治療は患者さんの負担を減らしながら症状改善を目指すもので、PTSDの診断後に適切な治療につながる大切なステップです。
3カ月以内で回復することが多い
PTSDはすべての方が長期化するわけではなく、早期に治療を開始することで比較的短期間で改善するケースも少なくありません。一般的には、外傷体験から3か月以内に症状が落ち着く方も多いとされています。しかし、トラウマの強さや環境の影響によっては、慢性化してしまうこともあるため早めの受診が重要です。診断後は、焦らず自分のペースで治療を進めることが大切であり、生活環境の整備や周囲の理解も回復を支える大きな要素になります。PTSDの診断を受けた後の適切な対応が、症状の軽減につながります。
診断を受ける際のポイント
PTSDは「時間が経てば自然に治る」と誤解されることがありますが、強い症状が続く場合は専門家のサポートが必要です。受診の際は、症状を無理に隠したり我慢したりせず、感じている不調をそのまま伝えることが診断の精度を上げるポイントとなります。また、自分でも気づかないサインが現れていることもあるため、心身の変化を早めに把握することが重要です。
ポイント①早期に病院を受診する
外傷体験直後は一時的なストレス反応が出ることがありますが、1か月以上症状が続く場合はPTSDが疑われます。早期に受診することで、症状の悪化や慢性化を防ぐことにつながります。とくに再体験や睡眠障害が強いときは、早めの治療が回復の近道となります。
ポイント②サイン・言動を見逃さない
気持ちが落ち込みやすい、イライラしやすい、以前は楽しめたことへの興味が薄れるなど、ささいな変化がPTSDのサインであることもあります。セルフチェックを行うことで、症状を自覚しやすくなり、早期治療につながります。また、身近な人の変化に気づいた場合は、無理のない範囲で声をかけ、安心できる環境を整えてあげることが大切です。
精神疾患をお持ちならシンプレへ

当ステーションの特徴
シンプレ訪問看護ステーションは、精神科に特化した訪問看護サービスを提供しており、PTSDを含む幅広い精神疾患に対応しています。利用者さまの生活リズムや価値観に寄り添い、再発予防から服薬支援、日常生活のサポートまでトータルで支援します。訪問する職員は看護師・准看護師・作業療法士で構成され、精神疾患に対する専門的な理解を持ったスタッフが担当します。PTSDの診断後の生活に不安がある方でも、自宅で安心して過ごせるよう、状態に合わせたケアを行っているのが特徴です。また、祝日や土曜の訪問にも対応しており、利用者さまの状況に合わせて柔軟に支援ができる環境を整えています。
対象となる精神疾患
当ステーションでは、PTSDをはじめ、うつ病・統合失調症・発達障害・自閉スペクトラム症・双極性障害・不安障害・パニック障害・認知症など、多様な精神疾患に対応しています。精神的な不調は、症状の出方や困りごとがひとりひとり異なるため、患者さまの状態に合わせた個別支援が必要です。シンプレでは、専門職員が利用者さまの生活背景をふまえながら、再発予防や生活リズムの改善など、実際の生活に根ざした支援を行います。PTSDの診断後の不安や孤立感を軽減するために、訪問看護は心強い伴走者となります。
シンプレの対応エリア
-
<東京都>
・東京23区
※足立区、荒川区は1部エリアとなります。
・西東京市
・三鷹市
・調布市
・武蔵野市
・府中市※1部エリア
・東久留米市※1部エリア
<埼玉県>
・和光市
・朝霞市
・戸田市※1部エリア
・川越市※1部エリア
・新座市※1部エリア
・川口市※1部エリア
シンプレ訪問看護ステーションは、東京23区、西東京市、三鷹市、武蔵野市、調布市、府中市、東久留米市、さらに埼玉県の一部地域を中心に訪問を行っています。近隣市区町村でも対応可能な場合があるため、エリア外にお住まいの方でも一度ご相談ください。訪問は週1〜3回を基本とし、状況に応じて週4回以上の訪問が可能な場合もあります。1回30〜90分の訪問時間のなかで、生活支援・服薬管理・心身状態の確認など幅広いサポートを提供しています。自宅で過ごしながら治療を続けたい方にとって、訪問看護は大きな助けとなるサービスです。
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まとめ

PTSDの診断は問診と診断基準に基づいて行われる
PTSDの診断は、問診で症状の経過や困りごとを丁寧に確認し、その内容をもとにDSM-5の診断基準へ照らし合わせて進められます。再体験・回避・過覚醒・気分や認知の変化など多面的な症状を総合的に評価することで、PTSDの診断の正確性が高まります。似た症状を持つ疾患との区別が必要となるため、自己判断せず専門医へ相談することが大切です。
診断後は治療方針が決まり、早期対応で回復可能性が高まる
診断がついた後は、心理療法や薬物療法など、状態に合わせた治療方針が決定されます。早期に治療を開始することで、症状の悪化や慢性化を防ぎ、回復の可能性を大きく高めることができます。PTSDの診断を受けた際には、不安や疑問を抱えることも多いですが、焦らず自分のペースで治療を進めることが大切です。生活環境の調整や周囲のサポートも、改善を支える重要な要素となります。
診断は精神科・心療内科など専門機関で受けられる
PTSDが疑われる場合は、精神科・心療内科・トラウマ外来などの専門機関で診断を受けることができます。症状が続いているのに受診をためらってしまう方もいますが、医療機関では負担の少ないかたちで話を聞き、状態に合わせた治療へとつなげてくれます。適切な支援を受けるためにも、気になる症状があれば早めに医療機関へ相談することが大切です。
不安を感じたら早めに相談することが大切
PTSDの症状は、時間が経てば自然におさまるものと誤解されることもありますが、強い不安やつらさが続く場合は早期対応が重要です。自分で抱え込むのではなく、医療機関や相談窓口、訪問看護など、頼れる支援につながることで回復への道が開けます。つらい症状が続くときは、「まだ大丈夫」と我慢せず、心や身体のサインに気づいた段階で相談してみましょう。
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