摂食障害の診断基準と治療法を徹底解説|DSM-5による拒食症・過食症の違いとは?
摂食障害は、「食べることを極端に制限してしまう拒食症」と「食べ過ぎを繰り返してしまう過食症」に大きく分けられます。
一見、症状は正反対ですが、いずれも心と身体のバランスが崩れてしまう深刻な病気であり早期の診断と治療がとても重要です。
本記事では、摂食障害の診断やDSM-5に基づく診断基準、拒食症・過食症それぞれの特徴、そして治療方法までを詳しく解説します。
「自分も、もしかして…」と思った方や、ご家族に心配な方がいる場合は、ぜひ参考にしてみてください。
摂食障害の診断と診断基準を知ろう

摂食障害の診断の流れとは?
摂食障害が疑われる場合は、まず心療内科やメンタルクリニックを受診しましょう。
初診では問診票を記入し、医師による面談や心理テストを通じて、食行動や心理状態を丁寧に確認します。
診察の流れは「問診 → 予診 → 心理テスト → 診察」という順序で進むのが一般的です。
医師は、患者さんの訴えや表情、行動傾向をもとに治療方針を提案します。質問がある場合は遠慮せず確認し、納得のいく説明を受けることが大切です。
このように、摂食障害の診断は一人ひとりの心身の状態を総合的に見極めることから始まります。
症状によって異なる診断基準
摂食障害には「拒食症」と「過食症」があり、それぞれ診断の基準が異なります。
拒食症では「太ることへの強い恐怖」や「極端な食事制限」が特徴であり、やせているのに自分を太っていると感じるなど、一方的な自己認識が見られます。
一方、過食症では「食べることを止められない」状態が続き、その後に嘔吐や下剤の乱用といった不適切な行動で体重を調整しようとする傾向が見られます。
症状が進行すると、心身ともに疲弊し、生活に支障をきたすことも少なくありません。そのため、症状ごとの診断基準を理解することは早期治療の第一歩です。
DSM-5に基づく摂食障害の診断基準
摂食障害の診断は、米国精神医学会の「精神障害の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」に基づいて行われます。
DSM-5では、拒食症と過食症を中心に、それぞれの特徴や行動パターンを明確に定義しています。
医師や心理士はこの基準に沿って、患者の体重・食行動・心理状態などを評価し、適切な診断を下します。
DSM-5の基準は国際的に広く用いられており、客観的な診断を行うための重要な指標となっています。
少しでも思い当たる症状がある場合は、自己判断せず、専門家へ早めに相談することが大切です。
摂食障害の種類と特徴を解説
・極端に痩せようとする傾向がある
・体重増加を強く恐れる
過食症(神経性過食症)
・食べることをコントロールできない
・過食後に強い罪悪感を抱く
拒食症は特に女性に多く、体重が減ることに喜びを感じ、常に食事内容を気にしてしまう傾向があります。
一方、過食症は10代後半から20代前半に多く見られ、過食後に自己嫌悪に陥るなど、精神的な苦痛を伴うのが特徴です。
両者ともに、「食べる・吐く・我慢する」を繰り返してしまい、体にも心にも大きな負担がかかります。
拒食症(神経性やせ症)の診断基準

拒食症の診断基準について
拒食症(神経性やせ症)は、摂食障害の中でも「体重を極端に減らしてしまう」タイプに分類されます。
体重が健康的な範囲を大きく下回っているにもかかわらず、本人にはその自覚が乏しいことが特徴です。
DSM-5における拒食症の診断基準では、
- ・年齢・性別に対して著しく低い体重
- ・体重増加に対する強い恐怖心
- ・自分の体型に対する誤った認識
以上の項目が重視されます。
拒食症は見た目のやせだけでなく、心理的な要因が深く関係しています。
「もっと痩せたい」「太るのが怖い」といった強い思い込みが、病気を長期化させる原因となります。
摂食障害の診断では、医師がこれらの心理的側面も丁寧に確認していきます。
BMIなどを用いた健康状態の数値化
拒食症の重症度を判断するには、BMI(体格指数)などの数値評価が欠かせません。
BMIが17.5未満である場合、拒食症が疑われ、15未満になると「重度の低体重」と判断されます。
また、日本人の体格に合わせた「平田法」により、標準体重を算出して比較する方法も用いられます。
これにより、現在の体の状態を客観的に把握できるため、治療計画を立てるうえで重要な指標になります。
やせすぎが進むと、筋力の低下や疲れやすさ、骨粗しょう症、冷えや貧血など、さまざまな身体的症状が現れます。
これらの症状が見られた場合には、できるだけ早く医療機関での検査・診断を受けることが大切です。
拒食症の診断は、単なる体重の問題ではなく、身体全体と心の状態を総合的に判断することが求められます。
診断から病型(制限型・過食排出型)を判断
拒食症には、「制限型」と「排出型」という2つの病型があります。
どちらも摂食障害の診断において重要な分類であり、行動パターンによって区別されます。
3か月間、過食や排出行為(嘔吐・下剤など)を繰り返していない
排出型
3か月間、過食や排出行為を繰り返している
「制限型」の場合、過剰な食事制限や運動で体重を減らそうとする傾向があります。
一方、「排出型」は、過食後に嘔吐や下剤の乱用などによって体重をコントロールしようとするタイプです。
どちらのタイプも、体型や体重への強い執着心が背景にあります。
家族や周囲の人が気づかないほど、隠れて行動するケースも多く、本人の苦しみは深刻です。
そのため、摂食障害の診断では行動・心理・身体の3側面を丁寧に見ていくことが大切です。
過食症(神経性過食症)の診断基準

過食症の診断基準について
過食症(神経性過食症)は、摂食障害の中でも「食べることを止められない」状態が続き、心身に影響を及ぼす病気です。
DSM-5における診断基準では、以下のような特徴的な症状が挙げられます。
- 通常よりも明らかに多い量の食事を短時間で摂る
- 食べ始めると自分ではコントロールできない感覚がある
- 体重を減らすために不適切な方法を行う(嘔吐・下剤など)
- 過食と不適切な減量を繰り返す
- 体型や体重に過度にこだわる
このように、過食症は単なる「食べすぎ」ではなく、心理的ストレスや自己否定感からくる行動のくり返しによって悪循環が生じるのが特徴です。
標準体重ややせ型であっても発症することがあり、体型や体重に対する強いこだわりが診断の重要な要素になります。
摂食障害の診断では、医師が患者の食事行動だけでなく、精神的な背景まで丁寧に評価します。
不適切な減量行動とは何か?
過食症の診断において注意すべき点が、「不適切な減量行動」です。
過食後に摂取したカロリーを帳消しにしようと、嘔吐・下剤の乱用・絶食・過剰な運動などを繰り返してしまう行為を指します。
これらの行動は一時的に体重を減らすように見えますが、実際には身体を衰弱させ、心身のバランスを大きく崩してしまいます。
また、「食べてしまった」という罪悪感が強まることで、再び過食に走るという悪循環が生まれやすくなります。
このサイクルを断ち切るには、医師や心理士による専門的なサポートが不可欠です。
過食症を放置すると、脱水・電解質異常・胃腸障害など身体への負担も大きくなります。
そのため、摂食障害の診断を受け、適切な治療方針を早期に立てることが大切です。
過食症の治療では、食事療法や心理療法に加え、生活リズムの改善・ストレスケアなど、心と体の両面からのアプローチが求められます。
症状を一人で抱え込まず、医療機関や専門の訪問看護などに相談することが回復への第一歩となるでしょう。
摂食障害の治療方法をチェック

外来治療と入院治療の違い
摂食障害の治療は、症状の進行度や身体状態によって、外来治療と入院治療に分かれます。
外来治療では、栄養指導や心理療法を通して、正しい食事習慣を取り戻すことを目的とします。
家族へのカウンセリングや支援も行い、家庭内でのサポート体制を整えていくのが特徴です。
一方、体重が著しく減少している場合や合併症がある場合、入院による集中的な治療が必要です。
入院治療では、内科的ケアと精神的ケアを両立しながら、体力回復を第一に考えます。
摂食障害は心理面だけでなく身体的リスクも高いため、早期に診断・治療を受けることが非常に大切です。
摂食障害の主な治療内容(心理療法・栄養指導など)
摂食障害の治療では、心理療法・栄養療法・薬物療法などを組み合わせて進めていきます。
特に心理療法は、食行動の背景にあるストレスや思考の一方性を見直すことに焦点を当てています。
根本的な原因を探り、ストレスや不安のコントロールを学ぶ
栄養指導
正しい食事量と栄養バランスを身につける
心理療法には、認知行動療法(CBT)や対人関係療法などがあり、食べることへの恐怖や自己否定感を和らげる効果が期待できます。
また、栄養指導では、専門の管理栄養士が一人ひとりに合った食事プランを作成し、無理なく健康的な体重へ戻せるようサポートします。
このように、摂食障害の診断後には、症状や背景に合わせた個別の治療計画が立てられるのが一般的です。
薬物治療で用いられる薬について
現在、摂食障害を完全に治す薬は存在しませんが、症状の緩和を目的とした薬物療法が行われることがあります。
主に抗うつ薬(SSRI)や抗不安薬などが使用され、気分の落ち込みや衝動的な過食を抑える効果が期待されます。
たとえば、SSRI(セルトラリン)は、過食や嘔吐を減らす可能性が報告されており、数か月の服用で改善が見られるケースもあります。
また、デュロキセチンなどの抗うつ薬も、気分の安定や過食回数の減少に役立つことがあります。
ただし、薬だけに頼るのではなく、心理療法や生活習慣の見直しと併用することが重要です。
医師の指導のもと、自分に合った方法を見つけることが、回復への近道となります。
在宅で支えられる精神科訪問看護という選択肢
摂食障害のように長期的なサポートが必要な場合、精神科訪問看護を利用する方法もあります。
訪問看護では、看護師が利用者の自宅を訪問し、服薬管理・健康チェック・生活支援などを行います。
- 日常生活のリズムを整える支援
- 対人関係や家族関係の調整
- 服薬の確認や体調のモニタリング
- 再発予防と社会復帰のサポート
自宅で支援が受けられるため、病院へ行く負担を減らしつつ、継続的なサポートが可能です。
特に、再発予防や生活習慣の安定を目指す方にとっては大きな助けとなるでしょう。
シンプレ訪問看護ステーションでは、摂食障害をはじめとする精神疾患のある方を対象に、安心して生活できるよう支援を行っています。
精神疾患をお持ちならシンプレ訪問看護ステーションへ

当ステーションの特徴
シンプレ訪問看護ステーションは、うつ病や摂食障害など精神疾患を中心にサポートを行う訪問看護サービスです。
看護師・准看護師・作業療法士が在籍し、利用者さまの心身の状態に合わせて支援を行います。
「誰かに話を聞いてもらいたい」「治療を続けたいけど外出が難しい」──そんな方々の生活を支える存在でありたいと考えています。
緊急時には医療機関や行政と連携し、迅速な対応が可能です。
また、就労支援センターなど外部機関とも協力し、社会復帰に向けた自立支援も行っています。
訪問看護を通して、摂食障害の診断を受けた後の生活や治療の継続をサポートすることもできます。
シンプレのサービス内容
シンプレでは、心の回復だけでなく、生活リズムや社会とのつながりを取り戻すための支援を行っています。
・日常生活の維持、リズムの安定化
症状の悪化防止・服薬支援
・服薬の確認、体調変化の把握
社会復帰へのサポート
・主治医や関係機関との連携を強化
家族の方への支援
・関わり方のアドバイスや相談対応
服薬のサポートや健康状態の観察を通じて、再発を防ぎながら安心して暮らせる環境を整えます。
また、利用者さまご本人だけでなく、ご家族への支援も重視しています。
「どう接していいか分からない」と悩むご家族に対し、専門的なアドバイスや精神的な支えを提供します。
対象となる精神疾患一覧
- 摂食障害
- うつ病
- 双極性障害
- 自閉スペクトラム症
- アルコール依存症
- 統合失調症
- ADHD
- その他精神疾患全般
シンプレでは、摂食障害をはじめとした幅広い精神疾患に対応しています。
病気が原因で日常生活や人間関係に困難が生じている方にも、安心して相談いただけます。
訪問スタッフと事務所のバックオフィスが連携し、地域全体で支える仕組みを整えています。
シンプレ訪問看護ステーションの対応エリア
-
<東京都>
・東京23区
※足立区、荒川区は1部エリアとなります。
・西東京市
・三鷹市
・調布市
・武蔵野市
・府中市※1部エリア
・東久留米市※1部エリア
<埼玉県>
・和光市
・朝霞市
・戸田市※1部エリア
・川越市※1部エリア
・新座市※1部エリア
・川口市※1部エリア
シンプレの訪問エリアは、東京23区・西東京市・武蔵野市・三鷹市・調布市・府中市・東久留米市・埼玉県一部などです。
近隣の地域であっても、訪問が可能な場合がありますのでお気軽にお問い合わせください。
年齢や性別に関係なく、精神科訪問看護を利用できます。
シンプレは「一人で抱え込まない社会」を目指し、あなたに寄り添うサポートを提供しています。
ご相談の問い合わせはこちら▼
まとめ|摂食障害の診断は早期発見と適切な支援がカギ

摂食障害には、「拒食症(神経性やせ症)」と「過食症(神経性過食症)」の2つの主なタイプがあります。
拒食症は、健康的な体重を維持できていないにもかかわらず「もっと痩せたい」という強い思い込みを持ち、極端な食事制限や過度な運動を続けてしまうことが特徴です。
一方、過食症は、短時間に大量の食事を摂取してしまい、その後に嘔吐や下剤の使用などの「不適切な減量行動」を繰り返してしまいます。
このような行動は、心のバランスが崩れているサインであり、早期に専門的な診断と治療を受けることが大切です。
DSM-5に基づく摂食障害の診断では、食行動だけでなく心理的な要素や体重・健康状態などを総合的に判断します。
そのため、自己判断ではなく、専門医や心理士のサポートを受けながら進めることが回復への第一歩です。
また、摂食障害の原因は人それぞれ異なり、ストレス・トラウマ・自己肯定感の低下など複数の要因が関係しています。
心理療法や栄養指導を通して、少しずつ心と身体を取り戻していくことが求められます。
「食べられない」「食べすぎてしまう」という悩みの背景には、必ず心の苦しさが隠れているのです。
シンプレ訪問看護ステーションでは、摂食障害をはじめとした精神疾患をお持ちの方を対象に、訪問看護を通じた支援を行っています。
自宅での服薬支援や生活リズムの調整、家族へのサポートなど、治療の継続を支える体制が整っています。
「外出が難しい」「通院を続けるのが不安」という方でも、看護師や作業療法士が自宅を訪問し、一人ひとりに合わせたケアを行います。
また、摂食障害は再発しやすい病気のひとつですが、定期的なフォローアップや信頼できる支援者の存在があることで、回復を長く維持することが可能です。
一人で抱え込まず、専門家や支援サービスに相談することが、未来を変える第一歩になります。
心の不調を感じたときこそ、サポートを受ける勇気を持ってください。
シンプレは、精神科訪問看護を通して「あなたらしい生活」を取り戻すお手伝いをしています。
摂食障害の治療や診断後の生活に不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。
専門スタッフがあなたのペースに合わせ、安心できる環境づくりをサポートします。
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