アルコール依存症で悩むご家族に知って欲しい。接し方や相談窓口について

アルコール依存症は本人だけの問題ではありません。場合によっては同居している家族にも被害が及ぶのです。
例えば、暴行・虐待の被害、故意ではないが治療を妨げる、などが挙げられます。
では、家族たちは依存者を相手に耐え忍ぶしかないのでしょうか?今回は家族がアルコール依存症に立ち向かうためにすべきことについて、紹介します。
アルコール依存症と同居家族
家族も関わる必要がある理由
アルコール依存症の患者さんと身近な関係にある家族は、患者さん本人をとても心配する気持ちがあります。また、心配以外にもたくさんの苦労を感じているといえます。
ご近所さんや親戚に対しても、恥ずかしく、事実を隠したいという思いがあります。家族自身もみっともないと感じている間に家族も地域で孤立していきます。
こういった家庭環境で、子どもが育つ場合に子どもにも大きな影響があります。子どもが成長する過程で、子どもにも依存症の問題が引き継がれることもあります。
このような家庭内での悪循環を生じないためにも、家族と患者さん本人とで治療をすすめていく必要があります。
家族が被害にあう一例
- 依存者本人と恨む・非難する
- 酔った本人の失敗を後始末をする
- 家庭内暴力、虐待などの被害にあう
- 経済的な生活苦の穴埋めに奔走する
- 近所、会社などの目を恐れ本人をかばう
アルコール依存症の患者さんは、さまざまな身体やこころの不調にみまわれます。しかし、それだけでなくアルコールの影響で社会的な問題も抱えがちになります。
アルコール依存症の患者さんを支える家族は、そのような社会的な問題に本人に代わって対応することになります。このような苦労や心配が家族と患者さんの関係を悪くします。
アルコールで泥酔した家族の尻ぬぐいに追われたり、経済的に苦しいために患者さん以外の家族が働きづめになることもあります。
こういったこと以外には、アルコールで酔った時に、家族へ暴力をしたり、家庭内のものを破損したりといった被害を受けることもあります。
こうならないためには
- 依存症の知識を得る
- 相談や治療、回復の場を見つける
- 自分のコンディションを整える
- 回復を信じる
- 味方をつくる
アルコール依存症は、アルコール飲料を多く飲み続けることが原因で依存症を生じます。アルコールは身近な飲み物ですが、依存症という病気を発症する可能性のあるものです。
飲酒の延長にある病気ですが、家族はどのように対応すべきか知って関わる必要があります。アルコール依存症の知識をもつことで、病気として理解することができます。
アルコール依存症のことや関わり方を知ることは、家族の心の健康にも役立ちます。また、アルコール依存症の根本的な治癒へ近づくことにつながります。
アルコール依存症の治療にむけて、精神科に相談したり、家族会等につながったりすることが大切です。
アルコール依存症の経過や症状
経過
- ① 常習的な飲酒や飲酒機会で耐性がつく
- ② 以前と同じ効果を得るために飲酒量が増える
- ③飲酒をしていない時の不快な症状が起こる
- ④ 飲酒の制御が困難になる
- ⑤ 身体的、精神的、社会的問題・悪影響が頻発
アルコール依存症は、アルコールを飲む機会がある人は、だれしもかかる可能性のある病です。アルコールを飲むうちに知らず知らずのうちに依存症となります。
アルコールの飲み方が、変化していくことに、本人も周囲も気が付きにくいことがあります。明らかにはっきりした理由があり、飲酒量が増える場合もあります。
徐々に、飲酒して泥酔していないと、ストレスを感じる状態になります。飲酒をしていないときの不安などの不快な症状が現れます。結果的に飲酒量がさらに増えることになります。
飲酒をしないと、身体にも不調が現れ常時飲酒することにより、身体や心に変調をきたします。さらに、社会的な問題や悪影響が生じます。
本人でも気づきやすい症状
- お酒の勢いで寝付くがお酒が切れると途中で目が覚める
- 朝起きると気分が落ち込みだるくなる
アルコール依存症の症状で、ご本人でも気づきやすい症状の一つにお酒がないと眠れず、お酒で泥酔して入眠することが習慣化してしまうということがあります。
寝るために、お酒で酔うことが必要になっている状況です。酔いが覚めると、目が覚めるため、また飲酒を繰り返す場合もあります。
また、朝の目覚めの悪さも自覚しやすい症状の一つです。朝の目覚めが悪いと、一日の活動に支障がでる場合もあります。
この目覚めの悪さや身体のだるさを感じて、耐えられずに朝から飲酒するということもあります。こうして、常に酔っていないと辛いという症状があります。
健康診断等で指摘されやすい疾患
- 肝障害
- 胃腸障害(胃炎や下痢、胃潰瘍など)
- 膵炎や糖尿病
- がん
- 睡眠障害
- うつ病
アルコール依存症になっていると、その時にはさまざまな検査データに影響が出ます。血液検査では、肝臓の障害を現すデータの異常が出ます。
アルコールを多く摂取して、食生活がおろそかになることによって糖尿病の症状がでることもあります。糖尿病は血液検査で兆候がわかります。
また、食道や胃のような消化器のがんもアルコール依存症の患者さんに併発しやすいです。がんや低栄養、体力低下といった悪循環がおきます。
アルコール依存症は睡眠障害やうつ病といった、他の精神疾患との併発も多いといえます。アルコール依存症と精神科疾患の二重の辛い症状を抱える方が少なくありません。
家族でやるべきこと
やるべきこと一覧
- 依存症から目をそむけない
- 話し合うならお酒を飲んでいない時を選ぶ
- 自尊心を傷つけないように病気であることを伝えていく
- 世話をしたい思いにブレーキをかける
- 被害の尻ぬぐいをしない
- 回復の喜びを言葉や態度で具体的に表現する
- 冷静に対応するゆとりを身に付ける
- 必ず外部に相談する
アルコール依存症の患者さんを支えるご家族は、上記のポイントを抑えて患者さんに関わる必要があります。
これらのポイントを押さえて関わることで、アルコール依存症の患者さんとの距離感を保ちながら関わることが可能になります。
家族がこのような態度をとることは、世話をするという観点から意外に思われる内容もあります。しかし、これらのことは、家族自身の健康や生活を守る上でも重要になります。
家族がこういった態度をとって、患者さんを支えていく中で迷うことや不安なこともあります。そういったときには、相談できる医師や看護師、ケアマネージャーが必要です。
外部の相談先について
- 精神保健福祉センター
- 保健所
- 医療機関
- 自助グループ
地域には、本人や家族がアルコール依存症の治癒に向けて、相談できる場所があります。相談先について、理解をして活用することが大切になります。
精神保健福祉センターは、精神科の悩みに特化した専門家が多く在籍する施設になります。保健所も精神科の悩みに対応可能です。保健所は地域ごとに担当者が決められています。
医療機関としては、精神科病院やクリニックがあります。アルコール依存症で生命の危険がある場合には、精神科病院にて入院治療することも可能です。
訪問看護も医療の一部として、地域で暮らすアルコール依存症の方の支援をします。自助グループには、断酒会やAAといった組織があります。
自助グループについて
自助グループとは、同じ病気を抱える人が集まり、支えあうことで治療にいかすことです。
断酒会
断酒会は、日本で組織的に活動してきた自助グループです。断酒会は、飲酒をやめ、酒害をうけた生活を回復し取り戻すことを目標に、支えあう集まりです。
定例会と酒害相談が主な活動内容になります。断酒会では、家族も影響を受けていることから、家族を準会員として受け入れていて、全国的に広がっています。
AA(アルコホーリクス・アノニマス)
AAはアメリカ発祥のお酒をやめたい人のための自助グループです。AAは「回復のための12ステップ」「12系統」などのプログラムに沿って活動しています。
参加者は匿名で参加します。AAでは、参加者が平等で、民主的な集まりであることが大切にされています。決められた曜日に定期的に集まるミーティングがあります。
家族でやってはいけないこと
やってはいけないこと
- 家族間で抱え込む
- 飲酒を助長させる行為をする(イネイブリング)
- 依存者の責任を自分の所為だと考える
家族がしてはいけないこと、一方で、理解や工夫が必要な点があります。この点を理解して、関わりを持たないと家族自身が辛くなりすぎる傾向があります。
アルコール依存症は、依存性のあるアルコールが患者さんの意思を失わせてしまう病気です。患者さん本人は自分より家族よりもお酒を選ぶ状態に陥っています。
お酒を飲むことをやめさせたい一心で家族が行動することで、家族自身の生活が、家族のアルコール依存症にふりまわされてしまう状況になります。
家族はこのアルコール依存性の病気の性質を十分に理解して、家族自身が自責の念に悩まされる事がないようにしましょう。家族も疲弊してしまう前に、相談できるとよいでしょう。
イネイブリングとは何か
イネイブリングとは、周囲の人が、アルコール依存症の患者さんがアルコールを摂取することを結果的に支えてしまう行動をすることです。
例えば、飲み代のツケを代わりに支払うことや泥酔しておこしたトラブルの謝罪におわれる行動です。本人がお酒を飲まないように観察する、ということもイネイブリングです。
これらの行動は、ほとんどがアルコール依存症の患者さんをなんとかアルコールから遠ざけようする行動です。これらの行動は、患者さんを思う気持ちから生じるものです。
しかし、依存症の場合、飲酒をしないことが難しいので、家族は裏切られることになります。イネイブリングに陥ると、家族との関係が悪化していく一方になってしまいます。
断酒後に気を付けたいこと
依存症回復期に起こり得る事態
- 過去の経験から嫌悪感、拒否感を抱く
- 償いを求め本人を追い込む
- 過去にとらわれて前向きになれない
- 飲酒問題の影響が子供にあらわれる
依存症回復期には、アルコール依存症の症状がひどかった時期に失った人間関係や自分の生活を取り戻す必要があります。仕事への復職なども必要になります。
しかし、回復期には、アルコール依存症の症状がひどかった頃の自分に対して罪悪感を感じてしまい、自信を取り戻せず、生活が安定しない場合があります。
アルコールをまた飲んでしまい、依存症に後戻りしてしまう不安を常に抱えて過ごすことにもなります。
アルコール依存症はお酒を飲まなくなったからといってすぐに治癒するものではありません。お酒を飲まない状態でいることを継続する必要があります。
家族一体となって回復を目指す
アルコール依存症を持った家族がいると、家族の気持ちとして、いろいろな葛藤があります。たとえば、お酒を飲むことを止めたい一心で、お酒を隠すといったことをします。
お酒を隠されるということは、患者さんとしては、とても苦しい状況といえます。家族は、患者さんのことを思ってした行動なのですが、それによって追い詰められてしまいます。
そうなると、家族が飲酒をやめさせたい気持ちが強く、本人の気持ちや行動がついていかないことが目立ち、家族関係がこじれてしまうことがあります。
家族会に参加して、飲酒をしてしまった時の対応のポイントなどを学ぶことができます。その対応の違いで、アルコール依存症の改善や大切にしあえる家族をめざすことができます。
精神科訪問看護も利用してみる
精神科の治療では訪問看護の利用してみるのもいい場合がございます。サービス内容や料金について紹介していきます。
精神科訪問看護のサービス内容
- 日常生活の維持
- 生活技能の獲得・拡大
- 対人関係の維持・構築
- 家族関係の調整
- 精神症状の悪化や増悪を防ぐ
- ケアの連携
- 社会資源の活用
- 対象者のエンパワーメント
アルコール依存症の患者さんも、精神科訪問看護のサービスをうけることができます。看護師などが、精神科の疾患のある方が地域で暮らすことを支援します。
生活のリズムが整う時間に訪問看護の時間を合わせ、生活リズムの改善をはかったり、近隣との人間関係についての相談を受けたりすることができます。
アルコール依存症があると、身体的な疾患のリスクもあります。バイタルサインを測定し、体調に変化がないか継続して様子をうかがうことができます。
その他、内服薬の管理を一緒に行い、内服忘れなどを防ぐ工夫を一緒に考えることができます。担当医師や地域の支援者との協力で、地域での生活継続を支援します。
精神科訪問看護の利用料金
負担割合 | 月の初回訪問 | 2回目以降 |
---|---|---|
3割負担![]() | 3,897円 | 2,565円 |
2割負担![]() | 2,598円 | 1,710円 |
1割負担![]() | 1,299円 | 855円 |
上記は週3回までの訪問料金となります。週4回以上訪問となる場合には料金が異なります。
精神科訪問看護では、医療保険を利用することにより自己負担を軽減できるメリットがあります。
30分を一区切りに利用可能。かかった費用については、年齢や所得によって変わり、医療費の1〜3割が自己負担となります。
また早朝や深夜などの時間外に依頼する場合や、長時間の訪問を行う場合は別途料金が発生します。
また自立支援医療制度いう制度を利用すると料金が1割負担になるほか、所得に応じて自己負担が0円になる場合もございます。
精神疾患をお持ちならシンプレへ
当ステーションの特徴
シンプレ訪問看護ステーションは精神科看護に特化した、訪問看護を提供しています。アルコール依存症で高血圧や糖尿病などの内科疾患をお持ちの方の看護も行なっています。
バイタルサインを測定し体調に変調がないか様子を伺うことができます。また、内服の管理のお手伝いもできます。
担当の医師や地域の支援者と協力し精神科疾患をお持ちの患者様を支えます地域で暮らす患者様の自主性を尊重し回復に向けてサポートいたします。
看護師をはじめ、精神科疾患をお持ちの方を事業所全体で支えています。患者さんの個性を伸ばす関わり、その人らしく、社会の中で過ごしていくための支援を目指しています。
対象となる精神疾患
- アルコール依存症
- うつ病
- 自閉スペクトラム症
- 統合失調症
- ADHD
- 双極性障害
- その他精神疾患全般
シンプレ訪問看護ステーションは、上記のように幅広く精神疾患に対応しています。アルコール依存症の対応も可能です。
アルコール依存症で、お悩みの方はぜひご相談下さい。アルコール依存症の方はうつ病などを持っていることもあります。
そういった場合でも精神科訪問看護が支援することができます。患者さんを支えるご家族からの相談にも乗ることができます。
アルコール依存症で、お悩みの方は訪問看護を検討されてみてはいかがでしょうか。生活の立て直しの支援も行なっています。
シンプレ訪問看護ステーションの対応エリア
- 新宿区・中野区・練馬区・豊島区
- 文京区・杉並区・渋谷区・千代田区
- 板橋区・葛飾区・江東区・江戸川区
- 墨田区・荒川区・北区・世田谷区
- 西東京市・三鷹市・武蔵野市・台東区
シンプレ訪問看護ステーションの対応地域はおもに上記が中心で、訪問活動をおこなっています。該当エリアにお住まいの方はぜひご検討ください。
また上記以外のエリアにお住まいでも、対応できる場合がございますので、一度当社スタッフへご相談ください。
サービス内容を詳しく聞きたい、スケジュールの相談なども承っております。電話やメールなどで相談を受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。
ご相談のお問い合わせはこちら
まとめ
これまで、アルコール依存症と家族の状況や治療上の関係についてまとめました。家族は、なるべく患者さんの尻ぬぐいなどは行わず、干渉しすぎずに関わることが大切です。
アルコール依存症のご本人と家族が一体となって、適度な距離感をたもち回復することについて整理しました。このことは、なかなか難しいと感じられるかもしれません。
しかし、アルコール依存症に詳しい医師や訪問看護師、地域のケアマネージャーなどを頼りに、自助グループも活用し、さまざまな支援者と乗り越えることは可能です。
アルコール依存症の家族のことでお悩みがある場合、アルコール依存症の症状でお悩みのある場合など、シンプレ訪問看護ステーションにぜひご相談ください。