精神疾患はカテゴリー化されている?分類の仕組みと代表疾患・相談先を解説
精神疾患には、うつ病・統合失調症・アルツハイマー型認知症・アルコール依存症など、さまざまな種類があります。
原因や症状も一人ひとり異なるため、正確な診断には専門的な知識と時間が必要になります。
そこで医療の現場では、世界保健機関(WHO)が定める「ICD-10」という国際的な基準に基づき、
精神疾患をカテゴリーごとに整理して考えることがあります。
このカテゴリーを知ることで、自分や家族の状態がどのような領域に当てはまるのかを理解しやすくなり、医療機関への相談や支援の受け方もイメージしやすくなります。
本記事では、ICD-10による精神疾患のカテゴリー、その代表例、そして相談先についてわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
精神疾患はICD-10でカテゴリー化されている

ICD-10とは
世界保健機関(WHO)は、病気やケガを国際的に分類するための基準として『ICD-10(国際疾病分類第10版)』を公表しています。
ICD-10は精神疾患だけではなく身体の病気も含めて幅広い疾患を体系的にまとめたもので、医師が診断名をつけたり治療方針を検討したりする際の目安になります。
分類は非常に細かく整理されており、精神疾患についても「F00〜F99」といったコードとともにカテゴリー(領域)が定義されています。
こうした国際基準があることで、同じ症状でも診断名や対応が医療機関ごとにぶれにくくなるというメリットがあります。
精神疾患のカテゴリー分けの目的
精神疾患は「気分が落ち込む」「妄想が出る」「お酒をやめられない」「もの忘れがひどい」など、表れ方が人によって大きく違います。
そこでICD-10では、症状の特徴や原因の傾向に応じてカテゴリー(F0・F1・F2・F3・F4…)に分けて整理しています。
たとえばF0は認知症など脳の器質的な変化に関連する障害、F1はアルコール依存症など依存に関わる障害、F2は統合失調症のような妄想や幻覚が中心の障害、F3はうつ病や双極性障害のような気分の障害といった具合です。
このような考え方によって、医療・介護・福祉の現場で支援内容を検討しやすくなり、必要なサポートにつなげやすくなります。
代表的な精神障害のカテゴリー一覧
症状性を含む器質性精神障害(アルツハイマー型認知症など)
F1
タバコ・酒・薬物などの使用による精神および行動の障害(アルコール依存症など)
F2
統合失調症・統合失調症型障害・妄想性障害
F3
気分(感情)障害(うつ病・双極性障害など)
F0ではアルツハイマー病や血管性認知症など「認知症」にあたる病気が代表的です。
F1ではアルコール依存症など、精神作用物質が原因となる依存症が含まれます。
F2は統合失調症や妄想性障害といった、幻覚・幻聴・被害妄想などの症状が中心となる領域です。
F3はうつ病・躁病・双極性障害など、気分や感情の波が大きく生活に支障が出る病気が該当します。
このように、ICD-10では精神疾患をカテゴリー別に把握することで、症状の理解や治療方針の検討に役立てています。
精神疾患に該当する病気の代表例

ここからは、ICD-10で分類されるカテゴリーの代表的な疾患を具体的に見ていきましょう。
それぞれのカテゴリーには特徴的な症状や原因があり、医療現場での診断や治療方針の判断材料となっています。
以下では、F0からF4までの代表例を取り上げ、それぞれの特徴を解説します。
| カテゴリー | 病名例 | 主な症状 |
|---|---|---|
F0![]() |
アルツハイマー病 | 記憶障害 判断力の低下 見当識障害 |
F1![]() |
アルコール依存症 | 飲酒のコントロール喪失 妄想・幻覚 離脱症状 |
F2![]() |
統合失調症 | 幻覚・妄想 思考の混乱 意欲の低下 |
F3![]() |
うつ病・双極性障害 | 気分の落ち込み 睡眠障害 極端な気分変動 |
F4![]() |
不安障害(パニック障害など) | 動悸・息苦しさ 強い恐怖感 過呼吸 |
F0例:アルツハイマー病などの認知症
F0に分類される「器質性精神障害」には、アルツハイマー病をはじめとする認知症が含まれます。
アルツハイマー病では脳の神経細胞が少しずつ減少し、記憶力や判断力が低下していきます。
症状が進行すると、家族の顔がわからなくなったり、日常生活が困難になったりすることもあります。
現在は進行を遅らせる薬の治療が中心であり、早期発見・早期治療が非常に大切です。
F1例:アルコール依存症
アルコール依存症は、長期的に過度な飲酒を続けることで心身ともに依存してしまう病気です。
飲酒をやめようとしてもやめられず、幻覚や妄想、記憶の断片化などの症状が見られます。
重症化すると肝機能障害やうつ状態を併発することもあり、専門的な治療と家族のサポートが必要です。
断酒のためのプログラムやカウンセリングを組み合わせることが効果的です。
F2例:統合失調症
統合失調症は、思考や感情のバランスを保つ脳の機能に障害が生じることで、幻覚・幻聴・妄想などの症状が現れます。
「誰かに監視されている」「声が聞こえる」といった体験を訴えるケースが多く、発症初期には本人も病気の自覚がないことがあります。
薬物療法や心理社会的リハビリテーションによって、再発を防ぎながら安定した生活を送る支援が行われます。
F3例:うつ病・双極性障害
・睡眠障害
・吐き気
・食欲減退
・疲労・倦怠感 など
うつ病の心の症状
・意欲の低下
・何をしても気分が晴れない など
うつ病は、気分の落ち込みや無気力感、食欲不振などの症状が長く続く病気です。
一方で、双極性障害は「うつ」と「躁(ハイテンション)」の状態を繰り返すのが特徴です。
どちらも気分の波が激しく、生活への影響が大きいため、薬による治療と休養、カウンセリングの併用が重要です。
特に早期に専門医へ相談することで、回復までの時間を短縮できることがあります。
F4例:不安障害(パニック障害など)
不安障害には、パニック障害・社交不安障害・強迫性障害などが含まれます。
突然の動悸や息苦しさなどの身体的な発作が起こることがあり、
「このまま死んでしまうのでは」という強い恐怖を感じる方も少なくありません。
治療には抗不安薬や認知行動療法が用いられ、安心して外出や通院ができるよう段階的に支援していくことが大切です。
カテゴリーに該当しない精神疾患もある?

ICD-10では精神疾患をF0〜F9までに分類していますが、なかにはどのカテゴリーにもはっきり当てはまらない病気も存在します。
精神疾患は一人ひとり症状や原因が異なり、複数の特徴を併せ持つ場合もあるため、明確に分類することが難しいケースもあるのです。
ここでは、そうした「カテゴリーに該当しにくい精神疾患」や、ICD-10以外の分類基準であるDSM-5との違いについて解説します。
詳細不明や分類が難しい精神疾患について
| カテゴリー | F99![]() |
|---|---|
| 内容 | F0〜F9に分類できない精神疾患 |
| 概要 | ・原因が多様で特定が難しい ・診断基準を満たさないが 症状がある場合 |
F99は「詳細不明の精神疾患」を意味し、ほかのカテゴリー(F0〜F9)に分類できない精神疾患が含まれます。
例えば、症状が多岐にわたって明確な原因が特定できない場合や、他の診断基準を部分的に満たすのみで正式な病名がつけにくい場合などが該当します。
このようなケースでは、医師が経過を観察しながら最適な治療方針を検討していくことになります。
精神疾患は「分類外」だからといって軽視できるものではなく、本人に合った支援が必要です。
また、分類が難しい精神疾患の多くは複数の症状が重なっており、ストレス・環境・遺伝要因などが複雑に関係しています。
そのため、診断名よりも「症状に合わせたケア」を重視し、医療機関や訪問看護などのサポートを利用しながら回復を目指すことが大切です。
ICD-10とDSM-5の違い
精神疾患の診断には、WHOが定めるICD-10のほかに、
アメリカ精神医学会が作成した「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)」という基準もあります。
ICD-10が世界的に使われる医学的分類であるのに対し、DSM-5は主に精神科臨床での診断に特化しているのが特徴です。
どちらも同じ病名を扱っていますが、ICD-10は“医学的な疾患分類”であり、DSM-5は“精神症状の診断基準”として使い分けられています。
たとえば、うつ病や統合失調症などの診断基準には共通点がありますが、DSM-5では症状の持続期間や重症度など、より詳細な臨床的判断を求める傾向にあります。
医師はICD-10とDSM-5の両方を参照しながら診断を行うため、診療記録にはどちらの基準で診断したのかが明記されることもあります。
このように複数の基準があることで、より正確で国際的に共有しやすい診断が可能になっているのです。
精神疾患に心あたりのある方が相談できる場所は?

「もしかして自分も精神疾患かもしれない」と感じても、どこに相談すればいいのか分からず、不安を抱えたまま過ごしてしまう方も少なくありません。
精神疾患は早期発見・早期治療がとても大切であり、早めに相談することで回復が早まるケースも多くあります。
ここでは、精神疾患に心あたりのある方が相談できる主な窓口を紹介します。
精神科・心療内科
精神疾患の疑いがある場合、まずは精神科や心療内科を受診しましょう。
精神科は主に「統合失調症」「双極性障害」などの重い精神疾患を扱い、心療内科はストレスや不安などによる心身の不調を中心に診ます。
どちらを受診すればいいか迷うときは、症状を電話で相談すると案内してもらえることが多いです。
診察時には、日常生活での困りごとや気分の変化、睡眠や食欲の状態などを医師に伝えると、より適切な診断につながります。
「我慢できるから大丈夫」と放置せず、気になった時点で受診することが何より大切です。
電話相談窓口
- よりそいホットライン(24時間対応)
- こころの健康相談統一ダイヤル
「直接病院へ行くのは不安」「家族や友人にも話しにくい」という方には、電話での相談窓口がおすすめです。
よりそいホットラインでは、24時間いつでも専門スタッフが話を聞いてくれるほか、必要に応じて地域の支援機関を紹介してくれます。
また、「こころの健康相談統一ダイヤル」では、各都道府県の精神保健福祉センターにつながり、臨床心理士や保健師などが対応してくれます。
相談は匿名で可能なので、安心して利用できます。
SNS相談窓口
- こころのほっとチャット
- 生きづらびっと
- チャイルドラインチャット(18歳まで)
最近ではSNSやチャットで相談できる窓口も増えています。
文字でのやりとりなら「声を出すのがつらい」「緊張して話せない」という人でも利用しやすいのがメリットです。
SNS相談は、時間を選ばず気軽にアクセスできるのも大きな特徴です。
特にチャイルドラインチャットは、18歳までの子どもを対象とした専門窓口で、どんな悩みでも一人の人として尊重しながら丁寧に対応してくれます。
誰かに話すことが、回復への第一歩になります。
公的機関への相談
- 保健センター(市区町村に設置)
- 精神保健福祉センター(都道府県に設置)
行政の相談窓口でも、精神疾患に関する支援を受けられます。
保健センターでは、こころの健康相談だけでなく、高齢者支援やひきこもり支援など生活全般に関わる相談も可能です。
また、精神保健福祉センターは精神疾患に特化した公的機関で、医師や臨床心理士、ソーシャルワーカーなどがチームで対応しています。
受診先の紹介や医療費助成制度の案内など、専門的な支援も受けられます。
「どこに相談したらいいか分からない」ときは、まず身近な公的窓口に連絡をしてみましょう。
精神科訪問看護を頼るという選択肢も
精神科訪問看護とは?
・精神科や心療内科に通院中の方
・精神疾患の診断を受けている方
・診断がなくても医師が訪問看護を必要と判断した方
訪問するスタッフ
・看護師・准看護師・作業療法士などの専門職
訪問時間
・1回30〜90分程度(週1〜3回が目安)
・祝日・土曜日の訪問にも対応
精神科訪問看護とは、精神疾患を抱える方が安心して自宅で生活を送るために、
看護師などの専門職が定期的に自宅を訪問して支援を行うサービスです。
退院後の生活に不安がある方や、通院が難しい方にとって大きな助けとなります。
訪問の目的は「病状の安定」「再発防止」「社会復帰支援」などで、医師の指示に基づき一人ひとりの状態に合わせたケアを行います。
また、服薬の管理や日常生活のサポート、再発を防ぐための相談など、医療だけでなく心理的・社会的なサポートも行われます。
本人の気持ちに寄り添いながら、生活のリズムを整える支援を受けられるのが特徴です。
自宅で治療を続けたい方や、一人暮らしでサポートが必要な方にも適しています。
精神科訪問看護ってどんなことをしてくれるの?
・掃除や食事、服薬など生活リズムの安定をサポート
・外出や社会活動の練習、就労支援へのつなぎ
症状の悪化防止・服薬支援
・体調や精神状態を観察し、医師と連携
・服薬状況の確認、薬の飲み忘れ防止
社会復帰への支援
・地域活動や職場復帰を目指した支援
・関係機関との情報共有、通院サポート
家族への支援
・家族への接し方のアドバイス
・介護や見守りの負担を軽減する支援
精神疾患は長期的な支援が必要になることが多いため、
「病気とともに生活を続ける力」を育むことが重要です。
精神科訪問看護では、本人のペースを尊重しながら必要な支援を継続的に提供します。
また、訪問看護ではご家族の不安や悩みに対しても支援を行います。
「どう接すればいいかわからない」「対応に疲れてしまった」といった相談も受けられるため、家庭全体の安心感につながります。
精神訪問看護ならシンプレ訪問看護ステーションにお任せください!
シンプレ訪問看護ステーションって?
シンプレ訪問看護ステーションは、精神疾患に特化した訪問看護サービスを提供するステーションです。
当ステーションでは、精神科医の指示のもと、看護師・准看護師・作業療法士といった専門スタッフがチームでサポートを行っています。
ご利用者さまの症状や生活環境に合わせて支援内容を調整し、再発予防や社会復帰のサポートまで一貫して対応します。
また、ご本人だけでなく、ご家族へのケアにも力を入れています。
「どう関わればいいかわからない」「対応の仕方に悩んでいる」といったご家族の不安にも丁寧に寄り添い、安心して暮らせる環境づくりをお手伝いします。
シンプレ訪問看護ステーションの対応エリア
-
<東京都>
・東京23区
※足立区、荒川区は1部エリアとなります。
・西東京市
・三鷹市
・調布市
・武蔵野市
・府中市※1部エリア
・東久留米市※1部エリア
<埼玉県>
・和光市
・朝霞市
・戸田市※1部エリア
・川越市※1部エリア
・新座市※1部エリア
・川口市※1部エリア
シンプレ訪問看護ステーションでは、東京都を中心に上記のエリアで訪問看護サービスを行っています。
※近隣の市区町村でも訪問可能な場合があります。まずはお気軽にご相談ください。
訪問時間は1回あたり30〜90分、週1〜3回が基本ですが、必要に応じて週4回以上の訪問も可能です。
祝日や土曜日も訪問対応を行っているため、ライフスタイルに合わせた柔軟なサポートが受けられます。
対応可能な処置も幅広く、胃ろう・ストーマ管理・在宅酸素療法・褥瘡ケアなど、医療的なサポートも行っています。
また、自立支援医療制度や生活保護などの公的制度にも対応しており、経済的な負担を軽減しながら安心して利用できます。
ご相談の問い合わせはこちら▼
まとめ
精神疾患はカテゴリーごとに理解すると分かりやすい
精神疾患は、ICD-10によって「F0〜F9」に分類されています。
カテゴリーごとに特徴を理解することで、症状の違いや治療方針のイメージがつきやすくなります。
自分や家族の状態を把握しやすくなることは、早期発見や適切な支援につながる大切なステップです。
たとえば、F0はアルツハイマー型認知症などの器質的障害、F1はアルコール依存症などの依存系障害、F2は統合失調症などの妄想系、F3はうつ病や双極性障害といった気分障害に分類されます。
これらを理解しておくことで、精神疾患に対する偏見を減らし、正しい知識でサポートできるようになります。
気になる症状があれば早めに相談を
精神疾患は、放置すると悪化しやすい一方で、早期に治療を始めれば十分に回復が期待できる病気です。
「気分の落ち込みが続く」「眠れない」「不安で仕事に行けない」といった症状がある場合は、精神科や心療内科などの専門医に早めに相談しましょう。
また、病院へ行くことに抵抗がある場合は、電話相談やSNS相談、公的機関の窓口などを活用するのもおすすめです。
誰かに話すことで、気持ちが整理されることも多くあります。
サポート体制を活用して安心した生活を
精神疾患の治療や支援は、医療機関だけでなく、訪問看護や地域の支援機関など複数のサポートを組み合わせて行うのが理想です。
特に「精神科訪問看護」は、自宅にいながら専門的なサポートを受けられる心強い制度です。
シンプレ訪問看護ステーションでは、精神疾患に精通したスタッフが、病状の安定や社会復帰を目指して丁寧な支援を行っています。
東京都や埼玉県の一部地域を中心に訪問を行っていますので、気になる方はぜひ一度ご相談ください。
精神疾患は、誰にでも起こり得る身近な病気です。
正しい知識と支援体制を活用しながら、焦らず少しずつ自分らしい生活を取り戻していきましょう。
ご相談の問い合わせはこちら▼
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