PTSDとパニック障害の関係性

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とパニック障害はいずれも不安障害で、似ている特性を持っています。そのため、PTSDとパニック障害を混同して考えている方も多いかもしれません。
しかし、PTSDとパニック障害には明確な違いがあります。今回は、PTSDとパニック障害それぞれの特徴を見ていきましょう。
それぞれの適切な治療方法についても触れていきますので、PTSDやパニック障害の症状にお悩みの方はぜひ参考にしてくださいね。
PTSDとパニック障害の共通点は?

PTSDとパニック障害には明確な違いがありますが、共通点もいくつか存在します。はじめに、PTSDとパニック障害の共通点について見ていきましょう!
初回発作を思い出すことで苦痛に襲われる
PTSDは虐待や暴力、自然災害、交通事故、戦争などで命に関わるような恐ろしい体験をした人が心に深く傷を負い、トラウマ体験を突然思い出すことで発作が起こります。
パニック障害は前触れや理由もなく突然発作(パニック発作)が起こり、極めて強い不安感や恐怖感などの精神症状や、動悸やめまい、発汗、窒息感などの身体症状が現れます。
PTSDとパニック障害はどちらも突然発作が起こり、精神的・肉体的な苦痛に襲われる点では共通しており、PTSDとパニック障害が混同される原因になっています。
発作が起こる不安から回避行動をとる
PTSDとパニック障害はどちらも不安障害という精神疾患であり、「また突然発作が起こるのではないか」という不安感から回避する行動を取る傾向があります。
PTSDの主な回避行動として、トラウマになっている恐ろしい記憶を呼び起こす状況や場面を無意識のうちに避けるようになり、ひどくなると家から出られなくなります。
パニック障害の回避行動として、「また発作が起きたらどうしよう」という不安感(予期不安)から鉄道や飛行機などの乗り物やエレベーターなどに乗れなくなることがあります。
予期不安から鬱症状や神経質な状態が続く
PTSDやパニック障害などの不安障害の精神疾患は、「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安が原因でうつ状態になりやすく、うつ病を併発することが多いです。
PTSDの合併症でうつ病を併発すると、うつ状態が続いて無気力になったり、頭痛や食欲不振などの身体症状も現れ、アルコール依存症や薬物依存症を併発することもあります。
パニック障害で併発するうつ病は「パニック性不安うつ病」といい、急に落ち込んだり、突然怒り出すなど、気分の浮き沈みが激しくなることが特徴です。
PTSDとパニック障害の違いは?

PTSDとパニック障害の共通点について見てきましたが、PTSDとパニック障害には明確な違いがあります。では次に、PTSDとパニック障害の違いを詳しく見ていきましょう!
原因の違い
PTSDとパニック障害は発症する原因が異なり、それぞれの発症する原因を知っておくと、PTSDとパニック障害の違いが理解しやすくなります。
PTSDは過去の出来事や体験が原因
PTSDの原因は、長年にわたって親から受けた虐待や交通事故で生死をさまようようなどの恐ろしい体験が原因であり、PTSDの原因になった体験のことをトラウマ体験といいます。
パニック障害は理由もなく突然発作が起こるのに対して、PTSDはトラウマ体験が原因であり、トラウマ体験の有無がPTSDとパニック障害の大きな違いです。
なお、PTSDを発症するきっかけになるトラウマ体験は一般的な恐怖感ではなく、命に関わるような強烈な恐怖体験であることが特徴です。
パニック障害は前触れや理由なく起こる
パニック障害は何の前触れや理由もなく突然パニック発作が起こることが特徴であり、命に関わるようなトラウマ体験がなくてもパニック障害は発症します。
PTSDはトラウマ体験を突然思い出し、トラウマ体験がフラッシュバックされるという再体験症状が出ますが、パニック障害はPTSDのような再体験症状が出ることはありません。
なお、PTSDの患者さんもパニック発作が起こる場合がありますが、これはパニック障害ではなく「パニック発作があるPTSD」と診断され、PTSDの治療法が適用されます。
症状の違い
PTSDとパニック障害の症状はよく似ていますが、微妙な点が違ってきます。では、PTSDとパニック障害の症状の違いを見ていきましょう!
PTSDの症状
突然つらい記憶がよみがえる
回避・精神麻痺症状
・記憶を呼び起こす状況や場面を避ける
・感覚が麻痺する
過覚醒症状
常に神経が張りつめている
PTSDの症状の特徴は、突然つらい記憶がよみがえる「再体験症状」が出現することです。トラウマ体験を生々しく思い出してしまい、その時に感じた恐怖感を再体験します。
トラウマに結びつく状況や場所を避ける「回避行動」を取ることもPTSDの特徴であり、交通事故に遭った人が車を避けたり、性被害を受けた人は異性を避ける行動を取ります。
PTSDになると、トラウマ体験を思い出していない時でも常に神経が張りつめている状態になり、イライラ感や過度な警戒心、不眠などの症状が現れる場合があります。
パニック障害の症状
予期されないパニック発作を繰り返す
予期不安
「また発作が起きるのではないか」
という不安を常に感じる
広場恐怖
苦手な場所ができ、
その場所や状況を避けるようになる
パニック障害の症状の特徴は、予期されない「パニック発作」を繰り返すことであり、死を感じるような恐怖感に襲われ、動悸やめまい、窒息感などの症状が短時間出現します。
「また発作が起きるのではないか」という不安を常に感じる「予期不安」もパニック障害の症状の特徴で、予期不安がエスカレートすると仕事や日常生活にも支障をきたします。
苦手な場所ができ、その場所や状況を避けるようになる「広場恐怖」もパニック障害で起こりやすい症状で、電車や飛行機などに乗れなくなるなど生活に支障が出ます。
PTSDの治療方法にはどんなものがある?

PTSDは精神科や心療内科などの医療機関で治療することが可能です。では次に、PTSDの主な治療方法を見ていきましょう!
認知療法
認知療法とはお薬を使わない非薬物療法であり、持続エクスポージャー療法や眼球運動脱感作療法などがあります。
持続エクスポージャー療法
持続エクスポージャー療法(PE療法)は、安全な環境の中で専門家が立ち会い、患者さんにトラウマ体験の記憶を思い出させ、トラウマに慣れさせることを目的とします。
トラウマ体験を思い出すことは最初はつらいですが、何度も繰り返すことで自然に慣れてきて、トラウマを乗り越えることでPTSDからの回復を目指せます。
持続エクスポージャー療法は7~8割程度の改善がみられる有効な療法ですが、この療法を行える施設や専門家が少なく、希望をしても治療が受けられない場合があります。
眼球運動脱感作療法
命に関わるような恐ろしい体験をした時には目が点になり、眼球の動きが止まると、その時に体験した出来事が未処理のまま脳の中にずっと残ります。
眼球運動脱感作療法(EMDR療法)とは、トラウマになっている体験を思い出しながら、眼球を左右に動かすことで気持ちを楽にする療法です。
PTSDのきっかけになったトラウマ体験を思い出しながら眼球を動かすことで、脳が未処理になっている体験を処理することができ、気持ちが楽になってきます。
薬による治療
PTSDを発症するとうつ病を併発することが多いですが、うつ病を治療するには薬物療法で脳内の神経伝達をスムーズにすることが必要になってきます。
PTSDでうつ病を併発している場合は、脳内の神経伝達をスムーズにするために、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)というお薬が処方されることが多いです。
SSRIはうつ病や強迫性障害などの精神疾患の治療に広く使用されているお薬で、従来の抗うつ薬と比べると副作用が少なく患者さんの負担が軽減します。
パニック障害の治療方法にはどんなものがある?

PTSDの治療法を見てきましたが、では次に、パニック障害の主な治療方法を見ていきましょう!
薬物療法
パニック障害の治療方法は薬物療法と精神療法があり、薬物療法で治療を続けながら並行して精神療法を行うのが一般的です。
薬物療法では、PTSDと同様に抗うつ薬のSSRIが処方されることが多く、パニック発作の抑制と予期不安、広場恐怖の克服を目指します。
医師は薬の効果を確認しながら薬の量を調整し、十分な効果が得られない場合は薬の種類を変更するなどして治療を続け、症状が改善されるとお薬の服用は終了です。
精神療法
パニック障害の認知行動的な精神療法(心理療法)として曝露(ばくろ)療法や森田療法などがあり、患者さんの症状に応じて最適な療法が用いられます。
曝露療法とは、パニック発作を引き起こす場所や場面に直面させることで、不安や恐怖感に徐々に慣れてきて、予期不安や広場恐怖が軽減してきます。
森田療法とは神経症の治療法として広く実践されている日本発祥の精神療法で、パニック発作が起こったとしても死ぬことはないと正しく理解することで気持ちが楽になります。
PTSD・パニック障害の相談窓口は?

・こころのに関する相談
・未治療、医療中断の方の受診相談
・思春期問題、ひきこもり相談など
精神保健福祉センター
・こころの健康についての相談
・精神科医療についての相談
・社会復帰についての相談など
いのちの電話
自殺を考えている人からの
電話を匿名で受け悩みを聞く
PTSDやパニック障害は精神科や心療内科などの医療機関で治療や相談ができますが、上記の公的機関でも相談に乗ってもらえます。
最寄りの保健所や保健センター、精神保健福祉センターでは、PTSDやパニック障害などの精神疾患について気軽に相談ができ、専門家によるアドバイスが受けられます。
PTSDやパニック障害の合併症でうつ病になった場合は、自殺を考えるようなことがありますが、いのちの電話に連絡をすると匿名で専門家に悩みを聞いてもらえます。
PTSD・パニック障害のケアを行う精神科訪問看護とは?

サービス名 | 精神科訪問看護![]() |
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ケア内容 | ・日常生活の維持 ・生活技能の獲得 対人関係の維持など |
訪問日数 | 原則 週3日以内 |
PTSDやパニック障害を治療するために自宅療養をしている方は、精神科訪問看護を利用すると、看護師などの医療従事者が自宅を訪問し、さまざまなサポートが受けられます。
精神科訪問看護のサポート内容は多岐にわたりますが、PTSDの症状がある方は訪問する看護師との会話を通じて、PTSDのきっかけになったトラウマの克服につながるでしょう。
精神科医療は入院から地域中心へと移行が進んでおり、精神科訪問看護を利用することで家庭や地域社会で生活を送りながら治療を継続でき、早期の社会復帰を目指せます。
PTSD・パニック障害のサポートなら当ステーションへ!

では最後に、精神疾患に特化した訪問看護を提供しております、当シンプレ訪問看護ステーションをご紹介いたします。
シンプレ訪問看護ステーションの看護内容
・統合失調症
・パーソナリティ障害
・アルツハイマー型認知症適応障害
・アルコール依存など
主な看護内容
・生活支援
・自立支援
・症状の悪化防止
・服薬支援
・社会復帰へのサポートなど
シンプレ訪問看護ステーションは精神疾患に特化した訪問看護サービスを提供しており、PTSDやパニック障害、うつ病などの合併症についてもご支援をさせていただきます。
看護師などの医療従事者がご利用者様の自宅を定期的に訪問し、生活支援や症状の悪化防止、服薬支援など、回復へ向けてのトータルサポートを行います。
シンプレ訪問看護ステーションには、専門知識や経験が豊富なスタッフが多数在籍しており、精神疾患に対する看護を行いたいという気持ちの強い看護師が集まっています。
患者さんらしさを失わないよう自立した生活をするためのサポートを心がけています。
シンプレ訪問看護ステーションの対応エリア
- 新宿区・中野区・練馬区・豊島区
- 文京区・杉並区・渋谷区・千代田区
- 板橋区・葛飾区・江東区・江戸川区
- 墨田区・荒川区・北区・世田谷区
- 西東京市・三鷹市・武蔵野市・台東区
シンプレ訪問看護ステーションでは記載のエリアを中心に訪問看護を行っています。
上記のエリア以外にお住まいの方でも、ご利用が可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
ご相談のお問い合わせはこちら
まとめ

PTSDとパニック障害は似たような症状が出て、うつ病を併発することが多いですが、治療方法などが異なりますので、両方の疾患の違いを知って適切に対処することが大切です。
PTSDとパニック障害は医療機関で薬物療法や精神療法で治療することができ、自宅療養をする場合は精神科訪問看護を利用すると、治療を続けながら早期の社会復帰を目指せます。
当ステーションは、精神科医療の専門知識や経験があるスタッフが多数在籍していますので、精神科訪問看護サービスを受けるのが初めての方でも安心してご利用いただけます。
PTSDやパニック障害、合併症でお悩みで訪問看護のご利用検討されたい、一度話を聞いてみたい等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。