PTSDの治療薬とは|症状別の薬と効果・注意点を解説
PTSD(外傷後ストレス障害)は、強い精神的ショックやトラウマ体験が原因で発症するといわれる心の病気です。フラッシュバックや不眠、不安感など多岐にわたる症状が現れるため、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
治療の中心は心理療法ですが、症状をやわらげ回復をサポートするために「PTSDの治療薬」が処方されることも少なくありません。特に抗うつ薬や抗不安薬は症状の軽減に役立つとされ、多くの患者さんに使用されています。
この記事では、PTSDの治療薬にはどのような種類があるのか、また薬物療法とあわせて有効とされる治療法について詳しく解説します。正しい知識を持つことで、安心して治療を進めるための参考にしていただければ幸いです。
PTSDの治療薬にはどんなものがある?

全般の症状に使われる治療薬
抗うつ薬
PTSDの治療薬の中でも第1選択薬とされるのがSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)です。脳内のセロトニン濃度を高めることで気分を安定させ、不安感や抑うつを軽減する効果が期待できます。
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質で、気分のコントロールに深く関与しています。そのため、SSRIはPTSDにおける基本的な治療薬として位置づけられているのです。
また、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)なども用いられることがあり、患者さんの症状に合わせて処方が行われます。
抗不安薬
不安感や恐怖感が強い場合には抗不安薬が併用されることもあります。抗不安薬は、緊張を和らげたり心身の落ち着きを取り戻すために有効ですが、長期使用による依存性のリスクがあるため、医師の指導のもとで適切に使用することが大切です。
特に急性期の強い不安やパニック症状の緩和に役立つことが多く、短期間での使用が推奨されます。
不安や焦燥感の症状に使われる治療薬
睡眠導入剤
PTSDでは不眠症状がよく見られます。そのため睡眠導入剤が処方されるケースもあります。
十分な睡眠を取ることは症状の改善につながるため、短期的に利用することが回復のサポートになります。ただし、副作用や依存性に注意が必要です。
抗精神病薬(症状が強い場合に使用)
PTSDの中には幻覚や妄想を伴うケースもあり、その際には抗精神病薬が処方されることがあります。
過覚醒や強い不安が抑えられない場合に効果的で、症状を安定させる役割を果たします。
その他の合併症に使われる治療薬
うつ病・不眠症への治療薬
PTSDにうつ病や慢性的な不眠症を合併する場合には、三環系抗うつ薬や睡眠改善薬が使われることもあります。
ただし副作用のリスクもあるため、慎重に投与が行われます。
双極性障害などの合併症に対する薬
双極性障害を併発している場合には気分安定薬が処方されることがあります。
これは躁状態や気分の波を抑える効果があり、症状をコントロールするために有効です。
PTSD治療薬の注意点
PTSDの治療薬は、あくまでも症状を軽減し、心理療法を受けやすい状態に整えるための補助的な役割を担っています。
薬の種類や用量は患者さん一人ひとりに合わせて調整されるため、必ず主治医と相談しながら治療を進めることが大切です。副作用や飲み合わせに不安がある場合は、自己判断せずに専門家へ相談するようにしましょう。
治療薬以外に有効なPTSDの治療方法は?

心理教育
心理教育とは、患者さん自身やその家族がPTSDという病気について正しく理解するための取り組みです。
病気に対する誤解や偏見をなくし、治療の流れや回復の見通しを共有することは、安心感を高めるうえでとても大切です。特に「症状は病気によるものであり、本人の性格や努力不足ではない」という事実を知ることが、過度な自己否定を防ぐきっかけになります。
心理教育は治療の土台となるステップであり、患者本人が自分の状態を冷静に理解できるようになることで、その後の心理療法や薬物療法にも前向きに取り組めるようになります。
認知行動療法
認知行動療法(CBT)は、考え方や受け取り方(認知)の歪みを修正することで感情や行動を改善していく方法です。PTSDでは「自分は無力だ」「世界は危険に満ちている」といった極端な認知が形成されやすいため、それを少しずつ修正していきます。
また、過去のトラウマを想起する「曝露療法」を通じて、記憶が現実の危険とは結びつかないことを理解していくのも特徴です。辛い作業ですが、専門家のサポートのもとで段階的に行うことで、症状の軽減につながります。
持続エクスポージャー療法
持続エクスポージャー療法は、PTSDにおける代表的な曝露療法のひとつです。患者さんが避けてきた記憶や状況に意図的に向き合うことで、恐怖や不安が徐々に弱まることを狙います。
この方法では、安全な環境で繰り返しトラウマ体験を語る、あるいは関連する状況に段階的に触れていくなどのアプローチがとられます。時間はかかりますが、根本的な回復をめざせる治療法といえるでしょう。
EMDR(眼球運動脱感作)
EMDRは比較的新しい心理療法で、眼球の左右運動などを利用して脳の情報処理を促進し、トラウマ記憶に伴う苦痛を軽減することを目的としています。トラウマ体験を思い出しながら目を左右に動かすことで、記憶がより適切に処理され、不安や恐怖が和らぐとされています。
世界保健機関(WHO)も有効性を認めており、薬物療法に依存しない治療法として注目を集めています。ただし、専門的な研修を受けた治療者による施術が必要となるため、信頼できる医療機関で受けることが重要です。
PTSDの主な症状にはどんなものがある?

再体験症状
PTSDの代表的な症状のひとつが「再体験症状」です。過去のトラウマ体験がフラッシュバックとして突然よみがえり、まるでその場にいるかのような恐怖を感じることがあります。悪夢として繰り返し現れるケースも多く、本人にとって強い苦痛となります。
再体験症状は心身に強いストレスを与え、生活の質を大きく下げる要因となるため、適切な治療が不可欠です。
回避行動
トラウマを思い出させる場所や状況、人を避けるのが「回避行動」です。例えば、交通事故が原因でPTSDを発症した人が車や道路を極端に避けてしまい、日常生活に支障をきたす場合があります。
一時的な回避は自己防衛として自然な反応ですが、慢性的に続くと外出困難や人間関係の悪化につながり、社会生活への影響が深刻になります。
認知の歪み
PTSDでは「自分は無力だ」「すべて自分のせいだ」といった偏った思考が強まることがあります。これは「認知の歪み」と呼ばれ、過度な自己否定や他者への不信感を引き起こします。
この症状は抑うつや孤立を悪化させやすく、認知行動療法による修正が有効とされています。考え方の偏りを修正することで、現実的でバランスの取れた認知を取り戻すことが可能になります。
過覚醒
常に緊張している、音や光に敏感に反応してしまう、寝つきが悪いといった状態を「過覚醒」と呼びます。これは心身が常に警戒モードにある状態で、集中力の低下やイライラ、怒りっぽさにつながることもあります。
過覚醒が長引くと、身体的な疲労や不眠、さらには他の精神疾患を合併するリスクが高まるため、早期の介入が重要です。
PTSDの相談はどこにすればいいのか?

専門家の相談先
- 保健所
- 市町村(保健センター)
- 精神保健福祉センター
- いのちの電話
- 精神科医療機関
PTSDは専門的な治療を必要とする疾患であるため、信頼できる相談先を見つけることが重要です。代表的な相談先としては、保健所や市町村の保健センター、精神保健福祉センターがあります。これらの機関では、保健師や精神保健福祉士が中心となり、相談や訪問支援に対応してくれます。
また、自殺など緊急性のある悩みには「いのちの電話」や、夜間・休日でも対応可能な精神科医療機関を利用することも選択肢の一つです。
専門家へ早めに相談することが、症状の悪化を防ぎ回復への第一歩になります。
その他の支援窓口
・全国被害者支援ネットワーク
・各県の被害者支援団体
・警察庁犯罪被害者支援室
女性の場合(家庭内暴力や性被害など)
・東京強姦救援センター
・自治体の女性(婦人)相談センター
子供の場合(家庭内暴力や性被害・いじめなど)
・自治体の児童相談所
・自治体の家庭福祉相談所
・学校のカウンセラー
PTSDの原因は多様であるため、被害の種類に応じた支援窓口も整備されています。たとえば、犯罪被害の場合には「全国被害者支援ネットワーク」や各都道府県の被害者支援団体、警察庁の犯罪被害者支援室などがあります。
また、DVや性被害といった女性特有の問題に関しては、自治体の女性相談センターや「東京強姦救援センター」が窓口となります。さらに、子どもが被害を受けた場合には児童相談所や学校のカウンセラーなどが対応します。
このように状況ごとに適切な支援機関があるため、自分や家族が抱える問題に合った窓口を利用することが大切です。一人で抱え込まず、安心できる場所に相談する勇気が回復への大きな支えとなります。
精神科訪問看護を利用するという選択肢も
自宅での療養を続けながら外部からのサポートを受けたい場合には、精神科訪問看護を利用する方法もあります。専門的な知識を持つ看護師や作業療法士が自宅を訪問し、症状の観察や服薬管理、再発予防などを支援してくれます。
特に外出が難しい方や家族の負担が大きい場合には、精神科訪問看護が心強いサポートとなります。医療機関と連携して支援を受けられるため、安心して療養を続けることが可能です。
精神科訪問看護ではどんなことをしてもらえるのか?

精神科訪問看護とは?
| サービス名 | 精神科訪問看護![]() |
|---|---|
| ケア内容 | ・日常生活の維持 ・生活技能の獲得、拡大など |
| 訪問日数 | 原則週3日以内 |
精神科訪問看護とは、自宅で療養している方に対して、精神疾患に特化したサポートを提供するサービスです。精神科での勤務経験や専門研修を受けた看護師・作業療法士などが、直接ご自宅に伺い、症状の観察や生活支援を行います。
「治療の継続を支える在宅サポート」として、患者さんやご家族の不安を和らげ、安心して生活できるように支援するのが特徴です。医療保険が適用されるため、費用負担を抑えながら利用できる点もメリットといえるでしょう。
精神科訪問看護のサポート内容
精神科訪問看護の具体的なサポート内容は多岐にわたります。例えば、症状のコントロールや体調の観察、服薬の確認や助言、日常生活の支援などがあります。さらに、利用者の気分転換や健康管理を行ったり、ご家族の悩みに寄り添うことも大切な役割です。
また、医師や医療機関と連携して情報を共有することで、より適切な治療が続けられるよう調整します。必要に応じて、デイケアやショートステイといった社会資源の活用を提案することもあります。
利用者一人ひとりの状況に合わせた柔軟な支援を提供できる点が、精神科訪問看護の大きな魅力です。
精神科訪問看護ならシンプレ訪問看護ステーションへ!

当ステーションの特徴
シンプレ訪問看護ステーションは、精神科に特化した訪問看護を提供している点が大きな特徴です。うつ病や統合失調症、PTSDをはじめとした幅広い疾患に対応し、患者さんが「その人らしい生活」を送れるようサポートを行っています。
訪問するのは精神科勤務経験を持つ看護師や准看護師、作業療法士などの専門スタッフです。専門知識と豊富な経験を活かし、患者さんとご家族に寄り添った看護を心がけています。
訪問時間は1回あたり30分〜90分、訪問回数は週1〜3回が基本ですが、必要に応じて週4回以上の対応も可能です。土日や祝日も訪問を行っているため、安心してご利用いただけます。
シンプレで対象となる精神疾患
- PTSD(外傷後ストレス障害)
- うつ病・双極性障害
- 統合失調症
- 発達障害・自閉スペクトラム症
- 不安障害・パニック障害
- アルコール依存症・薬物依存症
- 認知症・適応障害 など
このように幅広い精神疾患を対象としており、患者さんの症状や生活状況に合わせてオーダーメイドの支援を行います。記載されていない疾患でも対応できる場合がありますので、まずはお気軽にご相談ください。
シンプレ訪問看護ステーションの対応エリア
-
<東京都>
・東京23区
※足立区、荒川区は1部エリアとなります。
・西東京市
・三鷹市
・調布市
・武蔵野市
・府中市※1部エリア
・東久留米市※1部エリア
<埼玉県>
・和光市
・朝霞市
・戸田市※1部エリア
・川越市※1部エリア
・新座市※1部エリア
・川口市※1部エリア
対応エリアは東京23区、西東京市、武蔵野市、三鷹市、調布市、府中市、東久留米市、さらに埼玉県の一部地域です。近隣の市区町村にお住まいの方も訪問できる場合があるため、まずはお問い合わせいただくのが安心です。
また、シンプレでは胃ろうやカテーテル交換、在宅酸素療法などの医療的処置にも対応可能です。医療保険の利用はもちろん、自立支援医療制度や生活保護など、各種制度を活用しながら費用の負担を抑えて利用できます。
患者さんとご家族の生活をトータルで支えるため、私たちは一人ひとりに合った最適なサポートを提供し続けます。
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まとめ

PTSDの治療薬は症状に応じて使い分けられる
PTSD(外傷後ストレス障害)の治療では、心理療法が中心となりますが、抗うつ薬や抗不安薬といった治療薬が症状の軽減に大きな役割を果たします。
不眠に対しては睡眠導入剤が、幻覚や妄想を伴う場合には抗精神病薬が使用されるなど、症状に応じて薬が使い分けられることが特徴です。患者さんごとに必要な治療は異なるため、必ず医師の指導を受けながら服薬を進めることが大切です。
心理療法と組み合わせることで効果が高まる
薬物療法だけでなく、心理教育や認知行動療法、持続エクスポージャー療法、EMDRといった心理療法を組み合わせることで治療効果がより高まります。特に心理教育によって病気への理解を深めることは、患者さんが自分の症状を受け入れ、治療に前向きに取り組むための大きな支えとなります。
薬と心理療法の両立がPTSD回復への近道といえるでしょう。
早めに相談し正しい治療を受けることが大切
PTSDの症状は時間が経っても自然に消えるとは限らず、放置すると悪化したり、うつ病や依存症といった他の疾患を併発することもあります。そのため、少しでもおかしいと感じたら、専門の相談窓口や医療機関に早めに相談することが重要です。
さらに、自宅での療養が必要な場合には精神科訪問看護の活用も有効です。看護師や作業療法士が生活に寄り添い、服薬支援や再発予防を行ってくれるため、安心して治療を継続できます。
シンプレ訪問看護ステーションでも、東京23区や西東京市、武蔵野市、埼玉県一部など幅広い地域に対応し、多様な精神疾患をサポートしています。PTSDに悩む方やそのご家族が、一歩踏み出すための力になれるよう取り組んでいます。
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