ADHDは発達障害のひとつ|特徴・原因・接し方・相談先を専門家が詳しく解説
ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害のひとつであり、集中力が続かなかったり、落ち着きがない行動をとってしまうなど、日常生活の中で困難を感じることがあります。
子どもの頃に症状が現れるケースが多いですが、大人になってから気づく方も少なくありません。
近年では、ADHDを正しく理解し、早期に支援や療育を受けることで、社会生活における困難を軽減できるとされています。
この記事では、ADHDの特徴や原因、接し方のポイント、そして相談先について詳しく解説します。
発達障害のひとつ「ADHD」とは?

ADHDとはどんな障害なのか
ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、注意力の維持が難しかったり、じっとしていられない、考えるより先に行動してしまうなどの特徴が見られる発達障害です。
この障害を持つ人は、学校や職場などで集中力を保つことが難しく、周囲との人間関係にも影響を及ぼすことがあります。
しかし、ADHDは本人の努力不足ではなく、脳の働き方に違いがあることが原因と考えられています。
適切なサポートや環境調整により、得意分野を伸ばしながら社会生活を送ることが可能です。
治療や支援の方法には、環境を整える療育や、必要に応じた薬物療法などがあります。
ADHDを発症する割合や有病率
成人期:3〜4%程度
ADHDは子どもだけでなく、成人にも見られる障害です。
成長とともに症状が軽くなる場合もありますが、大人になってから診断を受けるケースも増えています。
社会人になり、仕事でミスを繰り返したり、人間関係の難しさを感じたことで初めて気づく方もいます。
最近では、発達障害に対する理解が広まり、ADHDの正しい診断と支援を受けられる環境が整いつつあります。
自分や家族がADHDかもしれないと感じたら、早めに専門機関に相談することが大切です。
ADHDの特徴と主な症状

ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害の中でも「注意が続かない」「落ち着きがない」「思いついたことをすぐに行動してしまう」などの特徴が見られます。
人によって症状の現れ方には違いがあり、特に子どもの頃は「やる気がない」「わがまま」と誤解されてしまうこともあります。
しかし、ADHDの症状は性格ではなく、脳の働き方による特性であるため、正しい理解と支援が必要です。
ADHDの特徴は大きく「不注意」「多動性」「衝動性」 の3つに分けられます。
ここでは、それぞれの症状と日常生活への影響を具体的に見ていきましょう。
注意が続かない「不注意」
・集中力が続かない
・周囲の刺激で気が散りやすい
不注意の特徴が強いタイプでは、集中して作業を続けることが難しく、周囲の音や人の動きなどに気を取られてしまいます。
子どもの場合は、授業中に別のことを始めたり、宿題や持ち物を忘れたりすることが多く見られます。
大人になると、仕事でのケアレスミスや締め切りを守れないなどの形で表れることがあります。
本人は「頑張っているのにできない」と感じることが多く、自己肯定感が下がりやすい傾向があります。
環境を整え、集中できる時間や空間をつくる工夫が大切です。
じっとしていられない「多動性」
・体を動かしていないと落ち着かない
・授業や会議中に席を離れてしまう
多動性の特徴が強い人は、静かにしていなければならない場面でも体を動かさずにいられません。
たとえば、授業中に立ち上がってしまったり、大人であればデスクワーク中に何度も席を立つなどの行動が見られます。
また、落ち着いて話を聞くことが苦手で、相手の話に割り込んだり、自分の話を止められなくなることもあります。
これは「集中力がない」というよりも、「動きたい・話したいという衝動を抑えるのが難しい」というADHD特有の特徴です。
周囲が「我慢ができない人」と判断してしまう前に、この特性を理解することが支援の第一歩となります。
考える前に行動してしまう「衝動性」
・思いついたことをすぐに行動に移す
・感情のコントロールが難しい
衝動性の強いタイプでは、考えるよりも先に体が動いてしまう傾向があります。
子どもの場合、危険な場所に突然走り出したり、感情的に怒ってしまうことがあります。
大人でも、思わず言ってはいけないことを口にしたり、衝動的な買い物をしてしまうケースが見られます。
感情をコントロールするのが難しいため、トラブルに発展することもありますが、これも脳の働きによるものです。
周囲が冷静に対応し、失敗した時には責めずに一緒に解決策を考えることで、本人の安心感につながります。
ADHDを発症する原因について

ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害の一種であり、生まれつきの脳の働き方の違いが関係していると考えられています。
「しつけの問題」や「本人の努力不足」と誤解されることもありますが、医学的には脳の構造や神経伝達のバランスに要因があるとされています。
ADHDの原因は主に、前頭前野の一方的な働きと、神経伝達物質のバランス異常にあるといわれています。
ここでは、その2つの観点から詳しく見ていきましょう。
前頭前野の機能調節が一方的になることがあること
脳の中でも「前頭前野」は、注意力・感情のコントロール・判断力などを司る重要な部分です。
ADHDの方は、この前頭前野が一方的な働きになることがあるとされ、情報の整理や集中の維持が難しくなります。
たとえば、興味のあることには集中できる一方で、退屈な作業や単調なタスクには注意が続きにくい傾向があります。
これは意欲や注意を調節する神経回路の働きが不安定なためであり、本人の意志では制御しづらい特徴です。
また、ドーパミンなどの神経伝達物質がうまく働かないことも、集中力の低下や衝動的な行動の要因と考えられています。
ADHDは育て方が原因ではなく、脳の特性に基づいたれっきとした医学的な状態です。
脳内の神経伝達物質の不足との関係
ADHDの原因の一つとして注目されているのが、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの働きです。
これらは、集中力や意欲、感情のコントロールに深く関わっており、量や働きが不足すると注意が散漫になったり、感情的な行動が増えたりします。
ドーパミンは「達成感ややる気」を生み出す物質で、ノルアドレナリンは「集中と冷静さ」を保つ役割を持っています。
これらのバランスが崩れると、ADHDの特徴的な症状である「不注意」「多動性」「衝動性」が強く現れるとされています。
さらに、感情を安定させるセロトニンの働きにも関係があるという研究結果もあり、ADHDは単一の原因ではなく、複数の脳内機能の相互作用によって生じると考えられています。
医療機関では、こうした脳内メカニズムを整える薬物療法や、行動面をサポートする療育を組み合わせて治療を進めていきます。
ADHDの方への接し方のポイント

ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害の一種として、日常生活の中で周囲の理解やサポートがとても重要です。
子どもや大人を問わず、ADHDを持つ方は「うまくいかない自分」に落ち込んでしまったり、誤解を受けて自信を失ってしまうことがあります。
周囲の人が適切な関わり方を心がけることで、ADHDの特性を理解し、より良い人間関係と自立を促すことができます。
ここでは、ADHDの方と接するときに意識しておきたい3つのポイントを紹介します。
「できること」に注目してサポートする
ADHDの方は、苦手なことを繰り返し注意されることで自己肯定感を失いやすい傾向があります。
「できないこと」に焦点を当てるよりも、その人が「できること」や「得意なこと」に注目してサポートする姿勢が大切です。
たとえば、子どもの場合は「忘れ物が少なかったね」「きちんと片付けられたね」といったように、行動の中で小さな成功を褒めることが効果的です。
大人であっても、職場や家庭での得意分野を活かすことで、自信と安定感が生まれます。
成功体験の積み重ねは、ADHDとうまく付き合ううえで大きな力になります。
こまめな声かけで行動を促す
ADHDの方は、周囲の変化や刺激に影響されやすく、集中を維持することが難しい傾向があります。
そのため、一度に多くの指示を出すよりも、短く明確な言葉でこまめに声をかけることが大切です。
たとえば「今はこれをやろうね」「次は何をする時間かな?」といった促し方が効果的です。
感情的に叱ったり、否定的な言葉を使うと、相手は不安や反発を感じやすくなります。
穏やかなトーンで伝えることで、安心感が生まれ、行動の安定にもつながります。
また、できたときには「ありがとう」「助かったよ」といった肯定的なフィードバックを忘れずに伝えましょう。
時間や行動にメリハリをつける工夫
ADHDの方は、時間の感覚をつかみにくいという特徴があります。
そのため、「いつ」「どのくらい」を視覚的に示してあげると効果的です。
たとえば、タイマーを使って作業時間を区切ったり、スケジュールを色分けして見える化することで、集中の切り替えがスムーズになります。
子どもの場合は、授業や勉強の合間に軽い運動の時間を取り入れることで、落ち着いて取り組めるようになります。
また、頑張りすぎて疲れてしまうことを防ぐためにも、リラックスの時間を意識的に設けることが重要です。
ADHDの特性を理解した環境づくりが、本人の生活の質を大きく高めてくれます。
ADHDを相談できる場所はあるの?

ADHD(注意欠如・多動症)やその他の発達障害に気づいたとき、どこに相談すればよいのか迷う方は少なくありません。
早期に専門的な支援を受けることで、本人の生活の安定や家族の不安軽減にもつながります。
ADHDは適切なサポートを受けることで、日常生活や学校・職場での困りごとを軽減できる可能性が高い<障害です。
ここでは、身近に相談できる機関や、医療・在宅支援の窓口を紹介します。
相談機関での支援
学校での支援体制
お子さんにADHDの傾向が見られる場合、まずは学校や幼稚園の先生に相談してみましょう。
先生は日常の様子を観察しており、集団生活の中での行動特性を把握しています。
学校によっては特別支援コーディネーターやスクールカウンセラーが在籍しており、学習面・生活面でのサポート体制を整えてくれることもあります。
家庭と学校が協力して支援を行うことで、子どもが安心して過ごせる環境を整えることができます。
児童家庭支援センター
児童家庭支援センターは、地域の福祉機関や学校、児童相談所などと連携して、子どもや家庭の支援を行う公的機関です。
発達や行動に関する悩み、ADHDに関する相談も受け付けています。
専門の相談員が家庭環境や子どもの発達状況を踏まえ、支援方法や必要な医療・福祉サービスを紹介してくれることがあります。
家庭児童相談室
市区町村の福祉事務所に設置されている家庭児童相談室でも、ADHDなどの発達に関する相談を行うことができます。
家庭での関わり方のアドバイスや、必要に応じて医療機関や児童相談所への橋渡しを行ってくれます。
子どもの行動や情緒に不安を感じたら、早めに相談して支援につなげることが大切です。
医療機関での診断と治療
小児神経科での診療
小児神経科では、子どもの脳や神経の働きに関する疾患を専門的に診療しています。
ADHDの診断では、行動観察や心理検査を通して、注意力や多動性の傾向を確認します。
治療には行動療法や環境調整に加えて、必要に応じて薬物療法が行われる場合もあります。
家庭や学校と連携しながら、子どもの成長に合わせた支援を受けることができます。
児童精神科でのサポート
児童精神科では、子どものこころの発達や情緒面の問題に焦点を当てた診療が行われます。
ADHDだけでなく、うつ、不安障害、発達障害の併存など、幅広い症状に対応しています。
保護者へのカウンセリングや家庭環境への助言を行うことで、子どもと家族双方の安心につながります。
在宅で支援を受けられる精神科訪問看護
| サービス名 | 精神科訪問看護 |
|---|---|
職種![]() |
・看護師 ・准看護師 ・作業療法士 |
訪問日数![]() |
原則週3日以内(※例外もあります) |
精神科訪問看護は、医師の指示のもとで看護師などの専門職が自宅を訪問し、心身のサポートを行うサービスです。
ADHDを含む発達障害のある方も対象で、生活リズムの安定や服薬管理、家族へのアドバイスなどが行われます。
外出が難しい方や、通院だけでは支援が不十分な場合にも有効な支援方法です。
利用を希望する場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談し、訪問看護を行っている医療機関を紹介してもらうとよいでしょう。
精神疾患や発達障害のケアならシンプレ訪問看護ステーションへ

ADHDをはじめとする発達障害や精神疾患をお持ちの方の中には、外出や通院が難しく、日常生活に不安を感じている方も多くいます。
シンプレ訪問看護ステーションでは、そうした方が安心して自宅で過ごせるよう、専門の看護師・准看護師・作業療法士がチームでサポートを行っています。
医療機関やご家族と連携しながら、再発予防や服薬支援、社会復帰に向けた生活支援などを継続的に行うことが可能です。
ここでは、シンプレ訪問看護ステーションの特徴や対応エリアなどを紹介します。
シンプレ訪問看護ステーションの特徴
シンプレでは、精神科に特化した訪問看護を行い、患者さま一人ひとりの状態に合わせた支援を提供しています。
週1〜3回の訪問を基本とし、必要に応じて週4回以上の対応も可能です。
看護師や作業療法士が自宅を訪問し、服薬管理、体調確認、生活のリズムづくりなどをサポートします。
また、祝日や土曜日の訪問にも対応しており、急な体調変化にも柔軟に対応できる体制を整えています。
ご本人だけでなく、ご家族からの相談や支援も積極的に行っており、「安心して暮らせる環境づくり」を一緒に考えていきます。
サポート対象となる精神疾患の一例
・集中力が続かない、不注意や多動、衝動的な行動が見られる
うつ病
・気分の落ち込み、意欲の低下、身体のだるさなどが続く
統合失調症・双極性障害・PTSD
・幻覚・妄想・感情の起伏など、日常生活に影響する症状
自閉スペクトラム症(ASD)・知的障害
・対人関係の難しさや、感覚過敏などの特性を持つ
その他
・不安障害・パニック障害・強迫性障害・アルコール依存症など
ADHDなどの発達障害は、一人ひとり症状の現れ方が異なります。
シンプレでは、その方の特性に合わせた訪問支援を行い、苦手を補いながら「自分らしく生活できる」ことを大切にしています。
服薬や生活習慣のサポートを通して、社会参加への一歩を一緒に支えます。
シンプレ訪問看護ステーションの対応エリア
-
<東京都>
・東京23区
※足立区、荒川区は1部エリアとなります。
・西東京市
・三鷹市
・調布市
・武蔵野市
・府中市※1部エリア
・東久留米市※1部エリア
<埼玉県>
・和光市
・朝霞市
・戸田市※1部エリア
・川越市※1部エリア
・新座市※1部エリア
・川口市※1部エリア
東京23区、西東京市、武蔵野市、三鷹市、調布市、府中市、東久留米市、埼玉県一部
※近隣の市区町村の場合も訪問可能な場合がありますので、お気軽にご相談ください。
対応エリア外であっても、訪問が可能なケースもあります。
まずはお電話やメールでお問い合わせください。
ご相談の問い合わせはこちら▼
まとめ|ADHDは発達障害のひとつ、早期の相談と支援が大切

ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害の一つであり、「不注意」「多動性」「衝動性」という特徴を持っています。
子どもの場合は学習や人間関係に影響が出やすく、大人では仕事や家庭生活の中でトラブルを感じやすい傾向があります。
ADHDは本人の努力や性格の問題ではなく、脳の働き方の違いによる特性であることを理解することが大切です。
そのうえで、早期に支援につなげることで、生活のしづらさを減らし、より良い日常を送ることができます。
ADHDの原因には、前頭前野の働きや神経伝達物質のバランスの乱れなど、医学的な要因が関係しています。
このため、本人や家族が悩みを抱え込まず、医療機関や相談機関に早めに相談することが大切です。
適切な診断と支援によって、学習や仕事への取り組み方、人間関係の築き方を見直すきっかけにもなります。
周囲の理解とサポートがあれば、ADHDの方も自分らしいペースで成長し、社会で活躍することが可能です。
また、シンプレ訪問看護ステーションでは、ADHDをはじめとする精神疾患や発達障害を持つ方々を対象に、訪問型の支援を行っています。
在宅での療養を支えるだけでなく、生活リズムの改善や服薬管理、家族へのサポートなどを通して、安心して過ごせる毎日をサポートしています。
地域の医療機関とも連携し、再発予防や社会復帰に向けた支援も行っています。
「病院には通いにくい」「一人での生活に不安がある」という方も、まずは気軽にご相談ください。
ADHDは、早期に理解と支援を受けることで、本人も家族も前向きな生活を取り戻せる可能性があります。
焦らず、自分のペースで歩んでいくために、専門家や支援サービスをうまく活用していきましょう。
周囲のあたたかなサポートが、ADHDの方が安心して社会とつながる第一歩になります。
ご相談の問い合わせはこちら▼
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