認知症の原因とは?種類と危険因子を解説|シンプレ訪問看護
ご家族の言動が少し変わってきたとき、多くの方がまず「認知症なのだろうか」と考え、次に「その原因は何だろう」と調べ始めます。認知症の原因は一つではなく、背景にある病気によって症状や経過が変わります。なかには、原因を治療することで症状の改善が期待できるタイプもあります。この記事では、認知症の原因となる主な病気と危険因子、原因の調べ方、そして在宅での暮らしを支える訪問看護までをまとめました。
認知症の原因を知る前に押さえたい認知症の基本

認知症の原因を調べるとき、多くの情報は「アルツハイマー型」「血管性」といった病名から始まります。ただ、その手前で認知症は状態の呼び名だという点を押さえておくと、原因の話がずっと理解しやすくなります。ここでは、加齢によるもの忘れとの違いや、その前の段階とされる軽度認知障害まで、原因の話に入る前の土台を整理します。
認知症は病名ではなく状態をあらわす言葉
認知症は、特定の一つの病気の名前ではありません。脳の病気や損傷によって記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態をまとめて指す言葉です。2024年1月に施行された認知症基本法でも、アルツハイマー病をはじめとする神経の変性による病気や脳血管の病気などによって、日常生活に支障が生じる程度まで認知機能が低下した状態、と定義されています。
つまり「認知症の原因」を考えることは、背景にどの病気があるのかを探すことにほかなりません。同じ「もの忘れが増えた」という変化でも、原因となる病気が違えば、出やすい症状も、進み方も、対応の仕方も変わってきます。
加齢によるもの忘れと認知症の違い
年齢を重ねれば、誰でも人の名前が出てこなくなったり、置いた場所を思い出せなくなったりします。一般的に、加齢によるもの忘れは体験の一部を忘れるもので、ヒントがあれば思い出せることが多く、本人にも「忘れっぽくなった」という自覚があるとされています。
一方、認知症では体験そのものが抜け落ちやすく、食事をしたこと自体を覚えていない、といった形で現れることがあるといわれています。もの忘れの自覚が乏しくなりやすい点も違いの一つです。ただし、この線引きは実際にはあいまいで、家族の印象だけで判断するのは難しいものです。気になる変化が続くときは、自己判断で様子を見続けず、かかりつけ医などに相談することが大切です。
軽度認知障害と呼ばれる前の段階
認知症と正常な状態の間には、軽度認知障害(MCI)と呼ばれる段階があるとされています。記憶力などの低下は見られるものの、日常生活はおおむね自分で送れている状態です。この段階の人が1年間にどれくらい認知症へ進むかは、おおよそ1割程度とされる一方で、変化しない人や、認知機能が改善する人もいると報告されています。
この段階で原因を調べておく意味は小さくありません。後述するように、治療によって改善が期待できる原因が見つかることもありますし、アルツハイマー病に対する新しい薬は、この軽度の時期が対象になっています。
日本で認知症とともに暮らす人はどのくらいか
厚生労働省の研究班による推計では、65歳以上で認知症のある人は2025年時点で約472万人、有病率は12.9%とされています。軽度認知障害のある人は約564万人、15.4%です。高齢者のおよそ3割が認知機能に関わる状態にあるという計算になり、決して特別な病気ではありません。
興味深いのは、有病率そのものは2012年の15.0%から2022年には12.3%へ下がっている点です。喫煙率の低下や生活習慣病の管理の改善、健康への意識の変化などが背景にあるのではないかと考えられています。認知症の原因やリスクを知っておくことには、こうした裏づけもあります。
認知症の原因となる主な病気とその種類

認知症の原因となる病気はいくつもありますが、頻度が高いものとしてアルツハイマー病・血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭葉変性症の四つが挙げられ、四大認知症と呼ばれています。日本ではアルツハイマー型が全体のおよそ3分の2を占めるとされ、以下、それぞれの原因と特徴を見ていきます。
アルツハイマー型認知症の原因
アルツハイマー型は、脳の中にアミロイドβというたんぱく質が少しずつたまり、老人斑と呼ばれるかたまりをつくることから始まると考えられています。続いてタウという別のたんぱく質が異常な形に変化し、神経細胞が傷ついて減っていくとされています。記憶をつかさどる海馬のあたりから萎縮が進むため、新しいことを覚えにくくなるもの忘れが最初に目立ちやすいといわれています。
注目したいのは時間軸です。アミロイドβの蓄積は、症状が出る15〜20年ほど前から始まっているとされています。「急に始まった」ように見えても、脳の中では長い時間をかけて変化が進んでいたと考えられているわけです。
血管性認知症の原因
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などによって脳の血流が途絶え、その部分の神経細胞が働かなくなることで起こります。認知症全体のおよそ2割を占めるとされ、アルツハイマー型に次いで多いタイプです。
傷んだ部分と保たれている部分が混在するため、できることとできないことの差が大きく、まだら認知症と呼ばれることがあります。脳卒中の発作をきっかけに段階的に進むこともあれば、はっきりした発作がないまま細い血管の病変が積み重なって進むこともあるとされています。原因が脳卒中である以上、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動といった病気の治療が、そのまま予防の柱になります。
レビー小体型認知症の原因
レビー小体型は、αシヌクレインというたんぱく質からなるレビー小体が神経細胞にたまることが原因とされています。同じレビー小体がたまる病気にパーキンソン病がありますが、パーキンソン病では蓄積が脳幹部に限られるのに対し、レビー小体型認知症では大脳の広い範囲にたまるとされています。
特徴的なのは、実際にはいないものが生々しく見える幻視、睡眠中に大声を出したり暴れたりするレム睡眠行動障害、手のふるえや動きの遅さといったパーキンソン症状、そして頭がはっきりしている時とぼんやりしている時の差が目立つという認知機能の変動です。立ちくらみや便秘などの自律神経症状を伴うこともあります。転びやすくなること、一部の薬に過敏に反応しやすいことが知られており、処方は主治医が慎重に判断します。
前頭側頭型認知症の原因
前頭側頭型は、判断や感情のコントロールを担う前頭葉と、言葉や記憶に関わる側頭葉が縮んでいく病気の総称です。神経細胞の中に異常なたんぱく質がたまることが関係していると考えられていますが、詳しい仕組みは完全には解明されていないといわれています。
もの忘れよりも先に、性格や行動の変化が目立つことが多いのが特徴です。周囲に遠慮せず思ったまま行動する、決まった時間に決まった道を歩き続ける、言葉が出にくくなる、といった形で現れることがあります。比較的若い世代で発症することも多く、原因となる前頭側頭葉変性症は国の指定難病になっています。
複数の原因が重なることもある
実際の医療現場では、原因がきれいに一つに定まらないことも珍しくありません。とくに高齢になるほど、アルツハイマー病と血管性認知症が合併するなど、複数の病気が重なった状態が増えてくるとされています。混合型と呼ばれることもあります。
ですから「幻視があるからレビー小体型に違いない」といった決めつけは禁物です。症状の組み合わせや経過を見ながら、検査を重ねて診断していくことになります。似た症状を示す病気もあるため、専門の医師に相談することが大切です。
認知症の原因になりやすいとされる危険因子

認知症の原因を語るとき、病名と並んでよく取り上げられるのが「危険因子」です。医学雑誌ランセットの国際委員会は2024年の報告で、認知症のリスクに関わる修正可能な要因を14項目に整理し、これらに生涯を通じて取り組めば、世界の認知症の約45%を予防または遅らせられる可能性があるとしています。裏を返せば、残りは加齢や体質など今のところ変えにくい要因です。
中年期にとくに気をつけたい危険因子
ランセットの報告では、影響が大きいのは中年期の要因だとされています。とくに大きいとされたのが難聴と、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールの高さで、それぞれ全体の7%にあたると試算されました。続いて、うつ、頭部の外傷、運動不足、糖尿病、喫煙、高血圧、肥満、過度の飲酒が並びます。
難聴が挙がっているのは意外に思われるかもしれません。聞こえにくさが会話や外出の機会を減らし、脳への刺激や人との関わりが乏しくなることが関係していると考えられています。補聴器の使用や、中年期からの健診とコレステロールの治療は、いずれも今日から取りかかれる項目です。
高齢期にとくに気をつけたい危険因子
高齢期に入ってから影響が大きくなるとされたのは、社会的な孤立(5%)、大気汚染(3%)、矯正されていない視力の低下(2%)です。視力低下が2024年の報告で新たに加えられたのは、聞こえの問題と同じように、見えにくさが生活の幅を狭めることが関係しているとみられています。
白内障の手術や眼鏡の作り直しといった、いわば当たり前の対処が意味を持つということでもあります。人と会う機会を保つことも同じで、通いの場やデイサービスは孤立を防ぐ具体的な手立てになります。地域包括支援センターで、住まいの近くの通いの場を教えてもらうこともできます。
生活習慣病と認知症のつながり
高血圧・糖尿病・脂質異常症は、脳梗塞や脳出血を通じて血管性認知症に直結します。加えて、これらがアルツハイマー型の発症にも関わっているのではないかと考えられており、福岡県久山町で長年続けられている住民調査でも、糖尿病のある人で認知症の頻度が高いことが示されています。
ただし、生活習慣を整えれば認知症を防げる、という書き方は正確ではありません。リスクを下げうるという位置づけであり、危険因子をすべて避けても発症することはあります。持病の治療を続けること、健診を受けることを、認知症対策の一部としてとらえておく程度がちょうどよい距離感です。
遺伝は認知症の原因になるのか
「親が認知症だったから自分も」と不安になる方は少なくありません。親から子へ高い確率で受け継がれる家族性のアルツハイマー病は存在しますが、全体のごく一部にとどまるとされています。多くの認知症は、体質と生活習慣と加齢が重なって起こると考えられています。
体質に関わる遺伝子としてはアポリポたんぱくE(APOE)のε4型が知られており、持っている人はリスクがやや高まるとされています。ただしこの型を持っていても発症しない人は多く、持たない人が発症することもあります。遺伝子の検査は結果の受け止めが難しく、気になる場合は自己判断で受けずに、かかりつけ医や認知症疾患医療センターに相談してください。
治療によって改善が期待できる認知症の原因

認知症の原因のなかには、もとになっている病気を治療することで症状の改善が期待できるものがあります。数としては多くありませんが、見つかれば対応できるという点で、原因を調べる意味を最もよく表す領域です。ここで挙げるものは、いずれも受診しなければ分からないものばかりです。
正常圧水頭症によるもの
脳のまわりを流れている髄液がうまく吸収されず、脳室が広がって脳を圧迫する状態です。歩幅が狭くなり足が上がりにくくなる歩行障害、もの忘れなどの認知機能の低下、尿失禁の三つがそろって現れやすいとされています。とくに歩き方の変化が先に出ることが多いといわれています。
髄液を腹腔などへ逃がすシャント手術によって、歩行や認知機能の改善が期待できる場合があります。相談先は脳神経外科や、もの忘れ外来を持つ医療機関です。ただし、すべての方が手術の対象になるわけではなく、髄液を抜いて症状の変化を見る検査などを経て、主治医が適応を判断します。
慢性硬膜下血腫によるもの
頭を打ってから数週間から数か月かけて、脳の表面と硬膜の間に血液が少しずつたまる状態です。本人も家族も打ったことを覚えていないほど軽い転倒がきっかけになることがあり、ぼんやりする、反応が鈍い、片側の手足が動かしにくい、といった形で現れます。高齢の方やお酒をよく飲む方に多いとされています。
頭部CTで比較的分かりやすく、血腫を抜く手術によって症状の改善が期待できます。転倒のあとに様子が変わった、という経過があるときは、その経過を受診時に伝えてください。
甲状腺の働きの低下やビタミン不足によるもの
甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症では、動作や思考が遅くなり、意欲が落ち、もの忘れが目立つことがあります。ビタミンB12や葉酸の不足でも、同じように認知機能の低下が現れることがあるとされています。
いずれも血液検査で調べられるもので、ホルモンの補充やビタミンの補充によって改善が期待できます。もの忘れ外来で血液検査が行われるのは、こうした原因を見落とさないためでもあります。
うつ病や薬の影響で似た症状が出ることもある
高齢期のうつ病では、気分の落ち込みよりも、集中力の低下や意欲の低下、動作の遅さが前面に出ることがあり、認知症とよく似た状態になることがあるといわれています。治療によって認知機能が戻ることがあるため、区別は大切です。
また、睡眠薬や抗不安薬、一部の胃腸薬やアレルギーの薬など、複数の薬の影響でぼんやりしたり混乱したりすることもあります。受診のときはお薬手帳を持参してください。自己判断で薬をやめると持病が悪化することがあるため、中止や変更は主治医の指示に従ってください。
六十五歳未満で起こる若年性認知症の原因

認知症は高齢者の病気というイメージがありますが、65歳未満で発症する若年性認知症もあります。調査では18歳から64歳の人口10万人あたり50.9人、全国で約3万5700人と推計されています。数としては高齢者の認知症より格段に少ないものの、働き盛りの世代で起こるため、原因の内訳も、必要になる支えも高齢期とは違ってきます。
若年性認知症で多い原因疾患
2020年に公表された調査によると、若年性認知症の原因疾患はアルツハイマー型が52.6%と最も多く、次いで血管性が17.1%、前頭側頭型が9.4%、頭部外傷によるものが4.2%、レビー小体型およびパーキンソン病によるものが4.1%、アルコール関連によるものが2.8%と続きます。
高齢者の認知症と比べると、前頭側頭型や頭部外傷、アルコール関連の割合が高い点が特徴とされています。この調査では、最初に症状に気づいた平均年齢は54.4歳で、50歳未満で発症した人が約3割を占めていました。なお、以前の調査では血管性が最も多かったものが、今回はアルツハイマー型が上回っており、その背景には、若い世代の認知症への関心の高まりと、医療機関の診断精度の向上があるのではないかとみられています。
働く世代だからこそ起こる困りごと
若い世代では、認知症がまず疑われにくいという事情があります。仕事のミスが増えたり段取りが組めなくなったりしても、うつ病や更年期の不調、疲れのせいと考えられ、診断までに時間がかかることがあるといわれています。
生活面の影響も大きくなります。仕事を続けられるかどうかが収入に直結し、住宅ローンや子どもの教育費が重なる時期でもあります。配偶者が仕事と介護を同時に担うことになりやすく、親の介護と重なるケースも少なくありません。だからこそ、医療だけでなく生活と就労の相談先を早い段階で確保しておくことが大切です。
仕事や生活を支える相談窓口
各都道府県には若年性認知症支援コーディネーターが配置されており、就労の継続や退職後の生活設計、使える制度の整理まで相談できます。全国どこからでもかけられる若年性認知症コールセンターもあります。診断や治療については認知症疾患医療センターが、介護保険の手続きや地域のサービスについては地域包括支援センターが窓口になります。
お金の面では、療養で働けない期間の傷病手当金、症状が重くなったときの障害年金、通院医療費の負担を軽くする自立支援医療などが検討できます。介護保険については、40歳から64歳でも初老期における認知症は特定疾病に含まれますので、要介護認定を受ければ訪問看護やデイサービスなどを利用できます。40歳未満の場合は医療保険での対応になります。制度は年度によって変わることがあるため、詳しくは市区町村の窓口や病院の医療ソーシャルワーカーにご確認ください。
認知症の原因を調べる検査と受診の流れ

認知症の原因は、症状の様子だけでは分かりません。問診・認知機能の検査・画像検査・血液検査を組み合わせて、少しずつ絞り込んでいくことになります。初めての受診が不安という声はとても多いので、どこへ行き、何をするのかを具体的にたどっておきます。
まずどこに相談すればよいか
迷ったときの入口は、ふだんかかっているクリニックです。持病や飲んでいる薬を把握しているため、必要に応じて専門の医療機関へ紹介してもらえます。専門的に診てもらえるのは、もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、老年科などです。都道府県が指定する認知症疾患医療センターは、鑑別診断から地域の相談まで担う中核的な窓口になります。
難しいのは、本人が受診を嫌がる場合です。このときは無理に説得するより、地域包括支援センターに家族だけで相談する方法があります。市区町村によっては、専門職が家庭を訪問して受診や介護サービスにつなぐ認知症初期集中支援チームが動いてくれることもあります。
問診と認知機能の検査でわかること
診察ではまず、いつごろから、どんな変化があったのかをたずねられます。本人の説明だけでは経過が分かりにくいことも多いため、家族からの情報が診断の重要な材料になります。気づいた出来事と時期をメモにして持参すると役立ちます。
認知機能の検査としては、改訂長谷川式簡易知能評価スケールやMMSEといった質問形式の検査が使われます。ただし、点数だけで診断が決まるわけではありません。緊張や難聴、その日の体調でも結果は動きますし、教育歴や職業によっても差が出るとされています。あくまで判断材料の一つとして扱われます。
画像検査や血液検査でわかること
頭部のCTやMRIでは、脳の萎縮の程度や部位に加えて、脳梗塞・脳出血の跡、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症といった、前章で触れた原因を確認できます。脳の血流を見るSPECT検査で、血流が落ちている部位のパターンから原因疾患を推定することもあります。
血液検査では、甲状腺ホルモンやビタミンB12、肝臓・腎臓の働きなどを調べます。治療で改善が期待できる原因を見落とさないための検査でもあります。必要に応じて、脳脊髄液の検査やアミロイドPET検査で、脳にアミロイドβがたまっているかを確かめることもあります。
早めに受診しておくとよい理由
一つは、治療によって改善が期待できる原因が見つかる可能性があることです。もう一つは、後述するアルツハイマー病の新しい薬が、軽度認知障害から軽度の認知症の時期を対象としている点です。進んでからでは選べない治療があります。
そして、生活の準備を本人と一緒に進められることも大きな理由です。本人の希望を確認できるうちに、これからどこで暮らしたいか、お金や書類の管理をどうするかを話し合っておけると、家族の判断もぐっと楽になります。もっとも、早く受診すれば認知症が治るというものではありません。できることの選択肢が増える、という受け止め方が実情に近いといえます。
原因に合わせて考える認知症の治療とケア

認知症の原因が分かると、治療とケアの方針も具体的になります。薬による治療がある一方で、暮らし方や環境を整える工夫が果たす役割も同じくらい大きいとされています。どちらか一方ではなく、組み合わせて考えていくのが基本です。
薬による治療の考え方
従来から使われてきたのは、ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミンといったコリンエステラーゼ阻害薬と、メマンチンです。症状の進行をゆるやかにすることを目的とした薬で、認知症そのものをなくすものではありません。
これに加えて、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβに直接働きかける薬として、レカネマブ(レケンビ)とドナネマブ(ケサンラ)が国内で使えるようになっています。対象は軽度認知障害または軽度の認知症の段階で、脳脊髄液検査かアミロイドPET検査でアミロイドβの蓄積を確かめる必要があります。レカネマブは2週間に1回、ドナネマブは4週間に1回の点滴で、脳のむくみや微小な出血などの副作用に備えた定期的な検査も必要です。実施できる医療機関は限られているため、まずはかかりつけ医や認知症疾患医療センターに相談してください。
なお、レビー小体型認知症では一部の薬に過敏に反応しやすいなど、原因によって使える薬・避けたい薬が変わります。処方の判断は主治医が行いますので、他院でもらっている薬を含めて情報を共有しておくことが大切です。
薬を使わないケアと暮らしの工夫
不安や興奮、昼夜の逆転といった行動・心理面の変化は、認知症そのものだけでなく、体調不良や便秘、痛み、環境の変化が引き金になっていることがあるとされています。原因を探して取り除けると、落ち着くことがあります。
暮らしの工夫としては、生活のリズムを保つこと、家の中の物の位置を大きく変えないこと、本人が続けられる役割を残すことなどが挙げられます。デイサービスや通所リハビリなど、人と関わり体を動かす機会を生活に組み込むことも支えになります。
家族の接し方で変わること
できないことを指摘したり、間違いを正そうとしたりすると、本人の不安が強まり、かえって混乱が増すことがあります。否定せず急かさないという関わり方が基本とされていますが、毎日続く生活のなかでそれを保ち続けるのは簡単ではありません。
家族が抱え込まないことのほうが、結果として本人の安定につながります。同じ立場の人が集まる家族会や、市区町村が開く認知症カフェで話を聞いてもらうと、気持ちが軽くなります。困っていることを言葉にしておくと、ケアマネジャーや主治医にも伝えやすくなります。
介護保険サービスの使い方と相談先
在宅で暮らしていくには、医療だけでなく、食事・入浴・掃除といった生活の支えも必要になります。ここを家族だけで担うと負担が偏りやすいため、介護保険サービスを組み合わせるのが現実的です。
手順は、市区町村の窓口か地域包括支援センターで要介護認定を申請し、認定を受けたらケアマネジャーとケアプランを作る流れです。訪問介護・デイサービス・ショートステイ・福祉用具の貸与などを組み合わせられます。掃除や買い物などの生活援助は訪問介護、医療面のケアは訪問看護と役割が分かれている点は、押さえておくと相談がスムーズです。2026年8月時点の制度をもとにしています。利用できる内容や自己負担は地域と状態によって異なりますので、最新の内容は各窓口でご確認ください。
認知症のある方の在宅生活を支える訪問看護

認知症の原因が何であれ、多くのご家族が最後に行き着く心配は「これから家でどう過ごしていくか」です。訪問看護は、看護師などが自宅を訪問して体調を見守り、必要なケアを行い、主治医やケアマネジャーとの橋渡しをする仕組みです。家に来てもらえるという点が、通院が難しくなる場面での安心につながります。
認知症のある方への訪問看護でできること
訪問看護は、主治医が交付する訪問看護指示書に基づいて行われます。看護師が治療方針を決めるのではなく、暮らしのなかで気づいたことを主治医へ報告し、指示の精度を高める役割を担います。
実際の訪問では、血圧や熱、食事や水分の量、便通、痛みや皮膚の状態などを確認します。脱水や便秘、感染症が混乱の引き金になることがあるため、こうした変化を早めにとらえることが大切だとされています。認知症以外に糖尿病や心臓の病気を抱えている方も多く、持病の管理を含めて全体を見ていきます。清潔を保つケアや、身体の動きを保つためのリハビリも行います。
服薬や体調の変化を一緒に見守る
認知症のある方の在宅生活で、つまずきやすいのが薬です。飲み忘れや、飲んだことを忘れての重複が起こりやすくなります。訪問看護では、残っている薬の量を確認しながら、飲み方の工夫を主治医や薬局と相談していきます。
お薬カレンダーや一包化などの方法はありますが、どれが合うかはご本人の生活によって違います。ご家庭ですでに続けてきたやり方があるはずなので、まずはそれを一緒に確認するところから始めます。うまくいっている工夫は、そのまま活かすほうが続きます。
家族の困りごとを相談できる
入浴や着替えの介助がうまくいかない、夜に落ち着かない、食事が進まない。こうした具体的な困りごとを、看護師と一緒に整理できるのが訪問看護の利点です。介助の方法を一緒に確かめたり、体の負担が少ない動かし方を確認したりできます。
また、どの制度やサービスが使えそうかを整理し、担当のケアマネジャーへつなぐことも役割の一つです。困っていることを毎回すべて説明し直さなくても、状況を知っている相手がいる、という状態をつくれます。
介護保険と医療保険のどちらを使うか
認知症のある方の訪問看護は、要介護認定を受けていれば原則として介護保険が使われます。65歳以上の方が中心ですが、40歳から64歳の方も、初老期における認知症は介護保険の特定疾病に含まれるため、認定を受ければ介護保険の対象です。
一方、40歳未満の方や、要介護認定を受けていない方は医療保険での利用になります。また、精神科を標榜する医療機関の医師が精神科訪問看護指示書を交付した場合は、介護保険より医療保険が優先されます。どちらになるかは状態や指示書によって変わりますが、判断や手続きは主治医・ケアマネジャー・訪問看護ステーションが整理してくれますので、ご家族が一から調べる必要はありません。訪問の回数も指示書で細かく決まるものではなく、状態やご希望をふまえて相談しながら決めていきます。
費用のめやすと相談できる窓口
介護保険の訪問看護は、所得に応じて1割から3割の自己負担です。1割負担の方の場合、1回あたりの目安は30分未満でおよそ450円前後、30分以上1時間未満でおよそ800円前後です。週1回・1時間未満の訪問を月4回受けるなら、1割負担で月3,000円台がひとつの目安になります。ここに緊急時の対応などの加算が付くこと、地域によって単価が変わることは押さえておいてください。
負担が増えすぎないよう、1か月の自己負担には所得に応じた上限が設けられています。一般的な所得の世帯では月44,400円が上限で、これを超えた分は高額介護サービス費として払い戻されます。医療保険で利用する場合も、高額療養費制度で月ごとの上限が定められています。生活保護を受けている方は介護扶助の対象となり、訪問看護の利用者負担は生じません。
数値は2026年8月時点の制度をもとにした目安で、年度の改定や地域によって変わります。実際の金額は契約前にステーションから説明がありますので、心配な点は遠慮なく確認してください。制度全体については、市区町村の窓口や地域包括支援センター、病院の医療ソーシャルワーカーが相談先になります。
認知症の在宅ケアでシンプレ訪問看護ステーションができること

認知症の原因を調べ、治療の方針が決まったあとに始まるのは、毎日の暮らしです。家で続けていけるかという不安に、ひとつずつ具体的に応えていくのが訪問看護の仕事です。シンプレ訪問看護ステーションでも、認知症のある方とご家族の在宅療養を支えています。
シンプレ訪問看護ステーションの特徴
シンプレ訪問看護ステーションには、看護師をはじめとする専門職が在籍し、ご自宅へ訪問して体調の観察や服薬の見守り、清潔を保つケア、身体の動きを保つ支援などを行っています。認知症のある方の場合、持病の管理や体調の変化への気づきが暮らしの安定に直結するため、日々の小さな変化を主治医へ伝える橋渡しを大切にしています。
ご家族からの相談にも対応しています。介助の方法を一緒に確認する、困っていることを整理してケアマネジャーや主治医へつなぐ、といった実務的な支えを、ご本人とご家族のペースに合わせて続けていきます。すでにご家庭で続けてこられた工夫を伺うところから始めますので、はじめての方もご相談ください。
シンプレ訪問看護ステーションの対応エリア
- 東京23区
- 立川市
- 武蔵野市
- 三鷹市
- 府中市
- 昭島市
- 調布市
- 西東京市
- 小金井市
- 小平市
- 日野市
- 東村山市
- 国分寺市
- 国立市
- 福生市
- 狛江市
- 東大和市
- 清瀬市
- 東久留米市
- 武蔵村山市
- 多摩市
- 稲城市
- 和光市
- 朝霞市
- 志木市
- さいたま市
- 蕨市
- 川越市
- ふじみ野市
- 所沢市
- 川口市
- 戸田市
- 富士見市
- 新座市
シンプレ訪問看護ステーションの対応地域はおもに上記が中心で、訪問活動をおこなっています。該当エリアにお住まいの方はぜひご検討ください。
また上記以外のエリアにお住まいでも、対応できる場合がございますので、一度当社スタッフへご相談ください。
サービス内容を詳しく聞きたい、スケジュールの相談なども承っております。電話やメールなどで相談を受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。
訪問の頻度は週1回から3回程度が目安で、状態によってはそれ以上の対応を相談できる場合もあります。1回の訪問時間はおおむね30分から90分です。土曜・祝日の訪問についてもご相談いただけます。ご本人だけでなく、ご家族からのご相談も承っていますので、認知症の診断を受けたばかりで何から始めればよいか分からない、という段階でもお気軽にお問い合わせください。
※お受けできる内容は、時期・対応エリア・ご本人の状態によって異なり、医療的に重いケースなど一部対応できない場合もあります。まずはお問い合わせから対応可否をご確認ください。
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まとめ|認知症の原因を知ることが本人と家族の暮らしを支える第一歩になる

認知症の原因は一つではありません。アルツハイマー型・血管性・レビー小体型・前頭側頭型という四つの病気が多くを占め、日本ではアルツハイマー型が全体のおよそ3分の2とされています。複数の原因が重なることもあり、症状の印象だけで見分けるのは難しいのが実際のところです。
一方で、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、甲状腺の働きの低下やビタミン不足のように、治療によって症状の改善が期待できる原因もあります。うつ病や薬の影響で似た症状が出ることもあります。これらは検査をしなければ分かりません。もの忘れが増えた、様子が変わったと感じたら、かかりつけ医やもの忘れ外来、認知症疾患医療センターに相談してみてください。本人が受診を渋るときは、家族だけで地域包括支援センターに相談する方法もあります。
危険因子については、難聴や視力の低下、生活習慣病、社会的な孤立など、対処できる項目が整理されてきています。すべてを避ければ発症しないというものではありませんが、持病の治療を続けることや、聞こえ・見え方を整えること、人と関わる機会を保つことには意味があるとされています。
そして、診断のあとに続くのは長い日々の暮らしです。介護保険サービスや訪問看護、家族会や認知症カフェなど、家族だけで抱え込まずに済む仕組みは整えられています。認知症の原因を知ることは、その先の選択肢を広げ、相談できる相手を見つけるための第一歩です。困っていることがあれば、どうぞ一人で悩まずにシンプレ訪問看護ステーションまでご相談ください。
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※本記事は執筆時点の一般的な情報をまとめたものです。制度の内容や保険のあつかい、費用の目安は年度の改定・地域・ご本人の状態により異なる場合があります。また、シンプレ訪問看護ステーションがお受けできる内容は、時期・対応エリア・ご本人の状態によって異なり、医療的に重いケースなど一部対応できない場合もあります。ご利用を検討される際は、お問い合わせから対応可否をご確認ください。参考:厚生労働省、日本認知症学会、国立長寿医療研究センター、東京都健康長寿医療センター研究所、認知症介護情報ネットワーク、健康長寿ネット、Lancet認知症予防・介入・ケア委員会2024年報告。最新・正確な内容は各窓口でご確認ください。