薬物依存症の後遺症ってどんなもの?
薬物依存に陥ってしまった方は、薬物の乱用をやめて普通の生活を送るようになってからも後遺症に悩まされるケースがあります。
最悪の場合、被害妄想から事件や事故を起こすこともあるため、適切なサポートを受けることが重要です。
今回は、薬物依存の後遺症や相談を受け付けている支援機関などを紹介します。
ご自身やご家族が薬物依存の後遺症で苦しんでいるという方は、ぜひこの記事を最後まで読んでみてくださいね。
薬物依存の主な後遺症にはどんなものがあるのか?
覚醒剤の後遺症
- 幻覚
- 妄想
- 不安感
- 激しい気分の移り変わり
- フラッシュバック
覚醒剤を使用すると、気分が高揚したり、疲れを感じにくくなったり、集中力が増すような感じになりますが、乱用すると幻覚妄想や不安感などの後遺症に悩まされます。
覚醒剤の後遺症のひとつにフラッシュバック(自然再燃)があり、覚醒剤の乱用を中止しても幻覚妄想などの症状が再び出現し、長期間にわたって後遺症が残ります。
覚醒剤の後遺症の症状だけではなく、心臓の働きが低下することで急性心不全などの心臓疾患の症状が出ることもあり、最悪の場合は死亡することもあります。
大麻の後遺症
- 幻覚
- 妄想
大麻(マリファナ)を吸引すると、浮遊感や幻覚などで感覚が変化して、一時的に心地よい気持ちになりますが、幻覚や妄想などの後遺症が残ることがあります。
大麻の吸引を合法化している国もありますが、日本では大麻は麻薬に指定されており、厚生労働省は「大麻は、実際にはあなたの脳を壊します」と警告しています。
大麻の後遺症は幻覚妄想などの症状だけでなく、知的機能が低下したり、何もやる気がしなくなったり、男女とも生殖器官に異常が出ることもあります。
有機溶剤の後遺症
- 幻覚
- 妄想
- 記憶力の減退
- 抑うつ状態
有機溶剤とはシンナーやトルエン(ボンド・接着剤)などで、有機溶剤を吸引するとアルコール飲料と同じような酩酊状態になりますが、長期間使用すると後遺症が強く残ります。
有機溶剤の後遺症には、幻覚妄想や記憶力の減退、抑うつ状態などがあり、幻覚妄想は長期間にわたって続き、有機溶剤を吸引すると脳が萎縮するため記憶力も低下します。
頭痛やめまい、倦怠感、呼吸器障害、肝障害、腎障害などの後遺症が残ることもあるので、有機溶剤を乱用することはとても危険です。
薬物依存が引き起こすさまざまな問題
身体的障害、精神障害、性格の変化
家族の問題
家族機能の障害、家庭内暴力、家族崩壊、家族の心身の健康
対人関係の問題
社会から孤立する、薬物乱用仲間の形成
社会生活上の問題
職務能力の低下、怠業・怠学、失業・退学、借金
社会全体の問題
薬物汚染、犯罪・事故の増加、治安の悪化
厚生労働省は、薬物依存は本人の心身に異変を起こすだけでなく、上記のような二次的な問題が発生することを指摘しており、周囲の人にも被害をもたらします。
これらの問題は本人の性格によるものではなく薬物依存が原因ですので、薬物依存症の治療を受けると、少しずつ目立たなくなってきます。
借金・犯罪・家庭不和などの二次的な問題が深刻化するとご家族の方は大変ですので、専門機関に早めに相談することが大切です。
薬物依存は3つの段階で進行する
薬物乱用
覚醒剤は覚醒剤取締法、大麻は大麻取締法によって所持や使用、売買などが禁止されていますが、薬物乱用とは法律によって禁止されている薬物を不正に使用することをいいます。
シンナーや接着剤などは、本来の目的のために使用するのであれば乱用にはなりませんが、吸引を目的に使用すると薬物乱用になり、1回だけ吸引しても乱用になります。
成人のアルコール飲料の摂取は法律では禁止されていないものの、朝から晩までお酒を飲み続けるなど、社会通念上の限度を超えてアルコールを摂取ことは乱用になるでしょう。
薬物依存
薬物依存とは、薬物乱用を繰り返した結果、脳が慢性的な異常状態になってしまい、薬物の使用をやめようと思ってもやめられなくなくなり、薬物乱用を続けることをいいます。
薬物依存になると、離脱症状(幻覚や手の震えなど)が出ることが多く、なんとしてでも薬物を入手しようと精神的にも依存し、犯罪などの二次的問題が発生する場合もあります。
薬物の使用をやめても、薬物依存症という病気は変わらず残り、完治することはありませんが、医療機関などで継続的適切な治療を受けると回復することは可能です。
薬物中毒
以前は、薬物依存と薬物中毒は同じ意味で使われていたことがありましたが、現在は薬物依存と薬物中毒は区別されており、薬物依存と薬物中毒の違いを理解することは大切です。
薬物中毒は急性中毒と慢性中毒に分けられ、依存状態の有無に関係なく、アルコールの一気飲みや危険ドラッグの大量摂取などで意識不明などになることをを急性中毒といいます。
薬物中毒は薬物依存よりも重度な状態です。薬物依存や薬物中毒に悩んでいる場合は、早めに専門家の助けを求めることが大切です。
薬物依存の回復の段階
段階 | 状態 |
---|---|
身体の回復 |
薬物によって疲弊し衰弱した身体が正常化する |
脳の回復 |
薬物による幻覚・妄想がなくなる 思考力や記憶力が正常化する |
心の回復 |
歪んでしまった物の考え方・感じ方・生活習慣が正常化する |
人間関係の回復 |
壊れてしまった人間関係が修復され信頼を取り戻す |
薬物依存を治療しても一気に回復することはなく、身体→脳→心→人間関係の4つの段階を経て、時間をかけてゆっくりと薬物依存の状態から回復します。
第1段階では薬物依存で衰弱した身体の機能を回復させるための治療が行われ、第2段階では妄想や幻覚などの中毒性精神病の治療を行って脳の機能を回復させます。
第3段階では薬物依存で乱れてしまった生活習慣を改めさせることで心を回復させ、第4段階では薬物依存で壊れてしまった人間関係を回復させて、失った信頼を取り戻します。
薬物依存症の治療
幻覚や妄想の治療
治療対象となる症状 | 幻覚や妄想 |
---|---|
治療目的 | 身体の回復 脳の回復 |
治療内容 | 投薬を中心とした治療 |
薬物依存症の後遺症の幻覚や妄想の治療には、薬物療法が中心となります。薬物療法では、幻覚や妄想を抑える薬や、脳の回復を促す薬が処方されます。
症状に合わせて医師がお薬を処方しますが、患者さん本人の同意がなくても医師が処方したお薬が投与され、強制的に入院させて治療が行われる場合もあります。
薬物依存症の治療は、長期にわたることが多いですが、早期に治療を始めることで、回復の可能性が高まります。
生活習慣や考え方歪みを改善する
治療対象となる症状 | 生活習慣・考え方歪み |
---|---|
治療目的 | 心の回復 薬物なしの新しい生活習慣を築く |
治療内容 | 教育的プログラムの参加 自助グループへの参加 |
薬物療法を行うことで、幻覚や妄想などの症状は治まっていきますが、薬物依存そのものに対する治療は、患者さんが薬物に依存しない新しい生活習慣を構築させることが目標になります。
薬物依存症の治療は、患者さん自身が薬物依存から脱却するという強い意志を持つことが重要です。
専門病院の教育プログラムや自助グループに参加するなどして専門家の助けを受けながら、薬物依存症のない生活を送るための新しい生活習慣を構築していくことが大切です。
薬物依存症の後遺症をもつご家族にできること
薬物依存症は、ご家族にとってとてもつらい経験です。しかし、家族が力を合わせて、患者さんを支えれば、患者さんは回復することができるでしょう。
薬物依存症について学ぶことで、家族は患者さんのことをよりよく理解し、支えることができるようになります。
また、患者さんの気持ちを理解し、寄り添うことで、患者さんは一人ではないと感じることができます。
家族の中だけで抱え込まず、休息をとったり、趣味を楽しんだりするなど、自分自身の健康を大切にしながら、専門家の助けを借りることも大切です。
薬物依存の後遺症はどこに相談すればいいのか?
専門家の相談先
- 保健所
- 精神保健福祉センター
- 依存症相談拠点機関
- 民間のリハビリ施設
- 自助グループ
これらの機関では、保健師や医師、精神保健福祉士、依存症相談員などの専門職が、薬物依存症の後遺症について相談に乗ってくれます。
また、同じ病気を抱えている仲間と一緒に薬物依存からの回復を目指すことができる自助グループ・回復支援施設もあります。
同じ病気を抱えている仲間と一緒に薬物依存からの回復を目指すことができます。薬物依存症は、一人で克服することは難しいため、家族や友人、専門家などのサポートが大切です。
精神科訪問看護を利用するという選択肢も
薬物依存から回復するには、乱れてしまった日常生活の習慣を改めさせることが重要になってきます。
精神科訪問看護は薬物依存にも対応しており、自宅療養をしている薬物依存の患者さんのお宅を訪問し、患者さんが健全な日常生活を送れるようにサポートします。
精神科訪問看護では、「健康状態の観察」「病状悪化の防止・回復」「社会復帰の支援」など、症状の改善に向けてさまざまな支援を受けることができます。
精神科訪問看護ではどんなことをしてもらえるのか?
精神科訪問看護とは?
・精神科・心療内科に通院中の方
・精神疾患の診断を受けた方
・診断がなくとも医師が必要と判断した方
訪問する人
・看護の専門職
・リハビリテーションの専門職
訪問時間
・医療保険
(30分から90分程度)
精神科訪問看護は、うつ病や統合失調症などの精神疾患を持つ患者さんのお宅に看護師などが訪問し、薬物依存症の方も訪問の対象です。
患者さんの自宅に訪問する専門職は、看護師や准看護師、作業療法士などの有資格者で、医師の指示に基づいて看護を行います。
薬物依存の回復へ向けての必要なアドバイスや日常生活の相談などのサポートが受けることができます。
薬物依存に対する看護内容
薬物依存の後遺症に対する訪問看護のサービス内容を見ていきましょう。
回復に必要なメニューの提示
精神科訪問看護では、医師の指示にしたがって、薬物依存からの回復に向けて必要となるメニューを提示し、薬物依存からの回復を目指すうえでの重要な指針になります。
万一、薬物依存の患者さんが再び薬物に手を出した場合でも決して見放したりせず、患者さんが薬物依存から回復するまで徹底的にサポートを続けます。
家族に対する治療教育
患者さんが薬物依存から回復するためには、同居をするご家族の協力が重要になってくるため、精神科訪問看護ではご家族に対する治療教育も行います。
ご家族に対しては、患者さんに監視的・干渉的対応をしないなどの回復に向けての注意事項をわかりやすく説明し、ご家族と一緒に薬物依存からの回復に向けて取り組みます。
精神科訪問看護ならシンプレ看護ステーションへ!
シンプレ訪問看護ステーションとは?
シンプレ訪問看護ステーションは精神科に特化した訪問看護サービスを提供しており、薬物依存の後遺症にも対応しています。
治療においては、家族のサポートや安心できる環境作りが重要なため、精神科訪問看護では安心して自宅療養できる環境を整え、再発を予防していきます。
シンプレは精神疾患に特化した訪問看護サービスで、家族とともに本人に寄り添い、本人らしく生きていけるようサポートします。
訪問看護サービスを通して、治療への頑張りを一緒に共有し、心から安心できる居場所づくりをお手伝いします。
シンプレ訪問看護ステーションの対応エリア
-
<東京都>
・東京23区
※足立区、荒川区は1部エリアとなります。
・西東京市
・三鷹市
・調布市
・武蔵野市
・府中市※1部エリア
・東久留米市※1部エリア
<埼玉県>
・和光市
・朝霞市
・戸田市※1部エリア
・川越市※1部エリア
・新座市※1部エリア
・川口市※1部エリア
シンプレ訪問看護ステーションの現在の対応エリアは、上記を中心となっております。
記載しているエリアを中心に行っていますが、他のエリアの方も対応が可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせいただければと思います。
TwitterやLine、TikTokなどのSNSでも情報を発信していますので、ぜひご覧ください。
ご相談の問い合わせはこちら▼
まとめ
薬物依存の後遺症について解説してきました。薬物依存の後遺症の治療は時間をかけてゆっくり焦らず治療に取り組むことが大切です。
薬物依存の後遺症については保健所や精神保健福祉センター、依存症相談拠点機関、民間のリハビリ施設、自助グループなどの専門機関で相談することができます。
精神科訪問看護では、自宅療養をしている薬物依存の患者さんの自宅に看護師などが訪問し、回復に向けてのトータルサポートを行います。
シンプレ訪問看護ステーションでは、精神科に特化した訪問看護を行っており、薬物依存の後遺症でお悩みの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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