精神疾患をお持ちの方が使える就労支援と相談先|シンプレ訪問看護
精神疾患の治療が落ち着いてくると、多くの方が「そろそろ働きたい」「でも前と同じようには働けないかもしれない」という気持ちのあいだで揺れます。働きたい気持ちはあるのに体調の波が不安で、一歩が踏み出せない。そんなときに間に立って調整してくれるのが、精神疾患のある方に向けた就労支援の仕組みです。
就労支援というと「事業所に通って訓練する」というイメージが強いかもしれませんが、実際にはもっと幅があります。一般企業への就職を目指す支援、自分のペースで通える場所、就職したあとを支える支援、そして相談だけできる窓口まで。この記事では、精神疾患のある方の就労支援にどんな種類があるのか、どこに相談し、どんな流れで使うのか、費用はどうなるのかを整理し、最後に働き始めてからの体調を支える訪問看護の役割までお伝えします。
精神疾患があっても働きたいと思ったら

精神疾患のある方への就労支援とは、病気や障害があっても自分に合う形で働けるように、福祉・医療・労働のそれぞれの分野が用意している支援の総称です。ひとつの制度を指す言葉ではなく、働くまでと働いたあとの両方を支える仕組みの集まりだと考えるとイメージしやすくなります。訓練を受ける場所、相談する窓口、就職後に伴走してくれる支援が、それぞれ別の制度として用意されています。
働きたい気持ちを支えてくれる仕組みがある
精神疾患のある方が働くことを後押しする流れは、ここ十数年で大きく変わってきました。企業には障害のある人を一定の割合以上雇う義務があり、この割合(法定雇用率)は少なくとも5年ごとに見直されています。民間企業の法定雇用率は2024年4月に2.5%へ引き上げられ、2026年7月から2.7%になりました。あわせて対象となる企業の規模も、従業員40人以上から37.5人以上へ広がっています。
つまり、これまで障害者雇用に縁のなかった中小企業も、新たに採用を考える立場になっています。就職先の選択肢という点では、追い風が吹いている時期といえます。もっとも、数だけが増えても働き続けられるとは限りません。だからこそ「就職すること」と「働き続けること」の両方を支える仕組みが必要とされています。
働くまでと働いたあとの両方を支えてもらえる
就労支援でしてもらえることは、事業所や窓口によって幅がありますが、大きく分けると次のようなものです。訓練だけでなく、体調に合わせた働き方の調整まで含まれるのが、精神疾患のある方の就労支援の特徴です。
- 生活リズムを整えながら通う練習をする
- パソコン操作・事務作業・軽作業などの実習を通じて自分に合う作業を探す
- 履歴書の書き方や面接の練習をする
- 職場体験や実習の場をつくってもらう
- 企業に対して、必要な配慮を一緒に伝えてもらう
- 就職したあとも定期的に面談し、困りごとを整理する
ここで大事なのは、就労支援は「働けるようになるまで待つ場所」ではないという点です。通うこと自体が生活リズムを取り戻す練習になり、他の人と一緒に作業することが、少しずつ自信を戻していくきっかけにもなります。
ひとりで抱えず医療と福祉と一緒に進められる
精神疾患のある方の就労支援では、関わる専門職が一人ではありません。診断や治療の方針を決めるのは主治医で、働ける状態かの判断も主治医が行います。そのうえで、通う場所や訓練の内容を組み立てるのが福祉サービスの事業所、求人紹介や企業への働きかけを担うのがハローワークなどの労働分野の窓口です。
それぞれが別の場所にあるため、最初は「どこから聞けばいいのか分からない」と感じるかもしれません。ただ、どの窓口も他の窓口につなぐ役割を持っています。まずは今かかっている医療機関か、お住まいの市区町村の障害福祉の窓口に一度声をかけてみると、そこから先を整理してもらいやすくなります。
自分に合った働き方を選ぶ

精神疾患のある方の就労支援で中心になるのが、障害者総合支援法にもとづく「就労系の障害福祉サービス」です。名前が似ていて混乱しやすいのですが、目指す働き方と、雇用契約を結ぶかどうかで分かれていると考えると整理しやすくなります。ここでは代表的な5つを順に見ていきます。
一般企業への就職を目指すなら就労移行支援
一般企業への就職を目指す方が通うのが就労移行支援です。事業所に通いながら、ビジネスマナー、パソコンスキル、履歴書や職務経歴書の作成、面接の練習などに取り組み、職場実習の調整や就職活動への同行までしてもらえます。利用期間は原則2年で、状況によって延長が認められる場合もあります。
ここでは賃金や工賃は基本的に発生しません。あくまで「就職するための準備をする場所」だからです。そのぶん、体調に合わせて週2日から始めて少しずつ日数を増やす、といった通い方の相談がしやすいのが特徴です。就職後も一定期間はフォローが続き、必要に応じて後述の就労定着支援へつながります。
雇用契約を結んで働くなら就労継続支援A型
一般企業での勤務は難しいけれど、雇用契約を結んで働くことはできる、という段階の方が利用するのが就労継続支援A型です。事業所と雇用契約を結び、労働者として働くため、最低賃金以上の賃金が支払われるのが大きな違いです。カフェの店員、データ入力、清掃、パンや弁当の製造など、事業所によって仕事の内容はさまざまです。
厚生労働省がまとめた令和5年度の実績では、A型事業所の全国平均賃金は月額86,752円でした。フルタイムの一般就労と比べると少なく感じるかもしれませんが、勤務時間が1日4〜6時間程度に設定されている事業所が多いことが背景にあります。障害への配慮がある環境で、働くリズムを取り戻しながら収入も得られる位置づけです。
自分のペースで通うなら就労継続支援B型
雇用契約を結ばず、体調や希望に合わせて通うのが就労継続支援B型です。部品の組み立て、袋詰め、農作業、手工芸などの生産活動を行い、その対価として「工賃」を受け取ります。体調の波に合わせやすいのが特徴で、「今日は2時間だけ」「今週は3日だけ」といった通い方も相談できます。
工賃は事業所の生産活動の収入から支払われるため、A型の賃金より低くなります。令和5年度の全国平均工賃は月額23,053円でしたが、これは令和6年度の報酬改定で計算方法が見直された影響で、前年度の数字より大きく上がっています。実際の金額は事業所によってかなり差があるため、見学のときに直接たずねてみるのが確実です。
就職したあとを支えてもらう就労定着支援
就労移行支援などを経て一般企業に就職した方が、働き続けられるように支えるのが就労定着支援です。就職してからが本番だという考え方にもとづいた制度で、定期的な面談で生活や仕事の困りごとを聞き取り、必要に応じて企業や医療機関との間に入って調整してくれます。利用できる期間は最長で3年間とされています。
精神疾患のある方の場合、就職そのものより「就職後に体調が崩れる」ことのほうが課題になりやすいといわれます。実際、ハローワークの紹介で就職した方を追った調査では、精神障害のある方の就職1年後の職場定着率は49.3%と、他の障害種別と比べて低い水準でした。だからこそ、就職後を支える制度が別に用意されています。
進む道に迷ったら就労選択支援
2025年10月から始まったのが就労選択支援です。これまでの支援と違い、働く場所を提供するのではなく、本人に合う進路を一緒に整理するための短期のサービスです。原則1か月ほどの期間で、実際の作業に近い体験や面談を通して、希望・得意なこと・必要な配慮を整理し、その先の選択肢を提案します。
2025年10月以降、新しく就労継続支援B型を利用したい方は、原則としてこの就労選択支援を経ることになりました。ただし全員に一律ではなく、50歳以上の方や障害基礎年金1級を受けている方などは、希望に応じて利用する形とされています。就労継続支援A型については2027年4月から同じ流れになる予定です。制度が動いている途中の領域なので、最新の運用はお住まいの市区町村の障害福祉窓口で確認してください。
働きたいときにどこに相談すればいい

就労支援は、福祉サービスの事業所だけで完結するものではありません。相談だけなら手続きなしで使える窓口もいくつかあります。「まだ働けるか分からない」「情報だけ知りたい」という段階でも問題ありません。ここでは代表的な相談先を、役割の違いとともに紹介します。
ハローワークの障害者窓口
ハローワークには、障害のある方の相談を専門に受ける部門(専門援助部門)があります。障害者向けの求人を紹介するほか、応募の際に企業へ配慮事項を伝える橋渡しもしてくれます。手帳がなくても相談は可能で、診断書などで状況を説明できれば対応してもらえる場合があります。
一般の求人窓口とは受付が分かれているので、来所したときに「障害者の相談窓口を利用したい」と伝えるとスムーズです。担当者が固定されることが多く、同じ人に継続して相談できるのも利点です。ただし対応の細かい部分は所によって差があるため、最初の相談で自分の希望と体調の状況を率直に伝えておくとよいでしょう。
地域障害者職業センターとジョブコーチ
各都道府県に置かれているのが地域障害者職業センターです。ここには障害者職業カウンセラーがいて、職業能力の評価や、働き方の方向性を一緒に考える支援を行っています。職場に出向いて調整してくれる専門職もいて、これはジョブコーチ(職場適応援助者)と呼ばれています。
ジョブコーチは、本人に対して仕事の覚え方を一緒に工夫するだけでなく、職場の上司や同僚に対しても「どう指示を出すと伝わりやすいか」を助言します。本人だけに頑張らせるのではなく、職場の側にも働きかけてくれるのが特徴です。また、休職中の方の職場復帰を支える支援(リワーク支援)を行っているセンターもあります。
仕事と暮らしをまとめて相談できるセンター
仕事の相談と生活の相談を、ひとつの窓口でまとめて受けてくれるのが障害者就業・生活支援センターです。全国に300か所以上あり、「なかぽつ」という略称で呼ばれることもあります。仕事と暮らしを一緒に相談できるのが、他の窓口と違う点です。
働くうえでの悩みは、仕事の中だけで完結しないことが多くあります。朝起きられない、お金の管理が難しい、家族との関係がしんどい——こうした生活面の課題が、そのまま働き続けにくさにつながります。センターでは、就業面の担当者と生活面の担当者が連携して、必要な支援機関につないでくれます。
医療機関のリワークや精神保健福祉センター
いま休職中で、もとの職場への復帰を考えている方には、医療機関が実施している復職支援プログラムという選択肢もあります。決まった時間に通い、集団での作業や学習に取り組むことで、復職に必要な体力と集中力を段階的に取り戻していく形が一般的です。実施している医療機関は限られるので、主治医に相談してみてください。
また、各都道府県・政令指定都市には精神保健福祉センターがあり、精神保健福祉士や保健師が相談を受けています。市区町村の保健センターや障害福祉課でも相談できます。どこに行けばよいか迷ったときは、まずは通っている医療機関の相談員(精神保健福祉士・医療ソーシャルワーカー)に声をかけると、地域の窓口を整理して案内してもらいやすくなります。
利用したいと思ってから通い始めるまで

就労支援は、思い立ったその日から通えるわけではなく、いくつかの段階を踏みます。とはいえ手続きは窓口が整理してくれるので、すべてを自分で調べて進める必要はありません。ここでは一般的な流れをお伝えしますが、細かい部分は自治体によって異なります。
まずは主治医に相談する
最初の一歩は、主治医に「働くことを考えている」と伝えることです。働ける状態かどうかを判断するのは主治医で、就労支援の利用に医師の意見書が必要になる場面もあります。「まだ早いと止められるのではないか」と心配になるかもしれませんが、伝えておかないと治療の方針にも反映されません。
実際には「いきなり就職ではなく、まず週2日から通う形なら」といった中間の提案が出てくることもあります。就労支援には段階の幅があるので、今の体調に合う入口を一緒に探す、という相談の仕方をしてみてください。
見学と体験で自分に合うか確かめる
方向性が見えてきたら、気になる事業所を見学します。複数を見比べるのがおすすめです。同じ「就労移行支援」でも、事業所によって力を入れている分野(事務系、IT系、軽作業など)や雰囲気がまったく違うためです。多くの事業所では、数日間の体験利用を受け付けています。
見学のときに聞いておくとよいのは、通っている方の年齢層、1日の流れ、体調が悪い日の休みの扱い、就職までにかかった期間の実績、そして就職後のフォロー体制です。実際に通う人の様子を見て「ここなら通えそうか」を確かめることが、いちばん確実な判断材料になります。
障害福祉サービス受給者証の手続き
利用する事業所が決まったら、お住まいの市区町村の障害福祉窓口へ申請し、「障害福祉サービス受給者証」の交付を受けます。この受給者証があってはじめて福祉サービスを使える仕組みです。申請では、どのように暮らしていて何に困っているかの聞き取り(アセスメント)があり、サービス等利用計画を作成します。
この計画は、相談支援専門員という専門職に作ってもらうのが一般的です。申請から交付までは1か月前後かかることが多く、自治体によって前後します。書類の準備や日程の調整は、見学した事業所や相談支援事業所が一緒に進めてくれることがほとんどなので、ひとりで抱え込む必要はありません。
障害者手帳や障害年金との関係
「手帳がないと就労支援は使えないのでは」と思われがちですが、手帳がなくても利用できる場合があります。福祉サービスの利用に必要なのは受給者証であり、精神障害者保健福祉手帳とは別の制度だからです。自立支援医療の受給者証や診断書で対象と判断されるケースもあります。
一方で、手帳があると障害者雇用の枠で応募できる、税の控除や公共料金の割引を受けられるといった利点があります。また、生活の支えとして障害年金という制度もあります。どれが自分に当てはまるかは状況によって変わるため、市区町村の窓口や医療機関の相談員に、まとめて整理してもらうのが近道です。
お金の不安を減らすために知っておきたいこと

就労支援を検討するとき、多くの方が気にされるのがお金のことです。結論からいえば、無料で通っている方が少なくありません。福祉サービスの利用料には所得に応じた上限が決まっていて、その上限が0円になる区分があるためです。ここでは費用の考え方を順に整理します。
福祉サービスの利用料はいくらかかるのか
就労移行支援や就労継続支援などの障害福祉サービスは、かかった費用の1割が利用者の負担で、残りは公費でまかなわれます。ただし1割をそのまま払うのではなく、世帯の収入状況に応じて1か月の上限額が決まっています。上限を超えた分は請求されません。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護を受けている世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税が非課税の世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯のうち所得割16万円未満 | 9,300円 |
| 一般2 | 上記に当てはまらない課税世帯 | 37,200円 |
表の金額は1か月に支払う上限で、実際にはこれより少なくなることもあります。ここで見落とされやすいのが「世帯」の範囲です。18歳以上で自宅から通う場合、収入を見るのは本人と配偶者だけで、親の収入は含みません。そのため、市町村民税が非課税で0円の区分に当てはまる方が多くなります。※一般1の区分では入所施設やグループホームの利用者が除かれるなど例外があり、自治体独自の軽減がある地域もあります。最新の区分と金額は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口でご確認ください。
工賃や賃金として受け取れるお金
就労継続支援を利用する場合は、支払うだけでなく受け取るお金もあります。A型は雇用契約にもとづく賃金、B型は生産活動に応じた工賃という違いがあり、金額の水準も大きく変わります。令和5年度の全国平均では、A型が月額86,752円、B型が月額23,053円でした。
ただしこれはあくまで全国の平均で、事業所ごとの差はかなり大きいのが実情です。また、就労移行支援は訓練の場という位置づけなので、賃金や工賃は基本的にありません。生活費をどう組み立てるかは、障害年金や他の制度と合わせて考える必要があります。この点も、市区町村の窓口や相談支援専門員が一緒に整理してくれます。
自立支援医療で通院の負担を軽くする
就労支援そのものの費用とは別に、治療にかかるお金も続きます。ここで使えるのが自立支援医療(精神通院医療)です。精神疾患で継続的に通院している方が対象で、医療費の自己負担が原則1割になり、さらに所得に応じた月額の上限が設定されます。うつ病、統合失調症、双極症、てんかんなどが対象になります。
この制度は年齢を問わず使え、医療保険と併用する形の公費です。訪問看護も対象に含まれるため、就労支援に通いながら訪問看護を利用する場合の負担も軽くなります。申請は市区町村の窓口で行い、診断書が必要です。手続きの手順は主治医や医療機関の相談員が案内してくれるので、まずは通院先で聞いてみてください。
生活を支えるほかの制度
働き始めるまでの期間、収入をどう確保するかは切実な問題です。使える可能性がある制度としては、障害年金・傷病手当金・失業給付・生活保護などがあります。休職中であれば健康保険の傷病手当金、退職後であれば雇用保険の基本手当(障害者手帳があると給付日数が長くなる場合があります)といったように、状況によって使える制度が変わります。
どれが自分に当てはまるかを一人で判断するのは難しく、また併用の可否や申請の期限もあります。医療機関の相談員、市区町村の窓口、障害者就業・生活支援センターは、こうした整理を仕事として担っています。「制度を調べる」よりも「相談できる人を1人つくる」ほうが、結果的に早く前に進むことが多いものです。
働き始めてからつまずかないために

就職が決まると、まわりは「よかったね」と喜んでくれます。けれど本人にとっては、そこからが長いのが実際のところです。先ほど触れたように、精神障害のある方の就職1年後の職場定着率は49.3%という調査結果があります。ここでは、働き始めてから起こりやすいことを、あらかじめ知っておくために整理します。
体調の波と生活リズムの乱れ
離職の理由を尋ねた調査では、「職場の雰囲気・人間関係」「賃金・労働条件への不満」といった、誰にでも起こりうる理由と並んで、疲れやすく体力や意欲が続かなかった「症状が悪化した」という理由がそれぞれ3割ほどを占めていたといわれます。つまり、働き続けられるかどうかは、仕事の能力よりも体調の安定に大きく左右されます。
働き始めると生活は一気に変わります。起きる時間が早くなり、通勤の負担が加わり、家に帰ってからの時間が減る。すると睡眠が削られ、服薬の時間がずれ、食事が簡素になる。この積み重ねが数か月後に効いてきます。最初の3か月は「頑張りすぎない」ことのほうが大事だといわれるのは、このためです。
職場に伝えるかどうかで迷うとき
病気のことを職場に伝えて働くか、伝えずに働くか。これは多くの方が悩むところです。正解はありません。伝えれば配慮を求めやすくなる一方で、任される仕事の幅が狭まると感じる方もいます。伝えなければ自由度は保てますが、体調が崩れたときに理由を説明しにくくなります。
ひとつの考え方として、「全部を伝える/何も伝えない」の二択にしない、という方法があります。診断名までは伝えず、「定期的な通院があるため月に1回半休をいただきたい」「疲れがたまりやすいので残業は控えたい」というように、必要な配慮だけを伝える形もあります。この線引きをどうするかは、支援機関の担当者と一緒に考えることができます。
合理的配慮として相談できること
事業主には、障害のある人が働くうえで支障となっていることについて、本人の申し出に応じて必要な配慮を行うことが法律で求められています。これは合理的配慮と呼ばれ、本人が申し出て、話し合って決めていくのが基本の形です。会社が勝手に用意してくれるものではなく、こちらから相談して始まります。
具体的には、通院日に休みを取りやすくする、勤務時間を短めから始める、静かな席に配置する、指示を口頭ではなく文書で出す、といったものがあります。ただし、事業主に過度な負担がかかる内容は対象外とされているため、何でも通るわけではありません。どこまで求められるかは、ジョブコーチや就労定着支援の担当者に間に入ってもらうと整理しやすくなります。
再発のサインに早めに気づくために
調子が崩れるとき、多くの場合は前触れがあります。眠れない日が続く、朝起きるのがつらくなる、人と話すのが億劫になる、細かいミスが増える——こうした変化は、本人が最後に気づくことも珍しくありません。夢中で頑張っているときほど、自分の変化は見えにくくなります。
だからこそ、自分のサインをあらかじめ書き出しておき、家族や支援者、訪問看護師など複数の人と共有しておく方法がとられます。「この状態になったら受診する」「この段階になったら勤務時間を戻す」と、あらかじめ決めておく。無理を早めに止められる仕組みを、元気なうちに作っておくという考え方です。
働き続けられるように訪問看護ができること

ここまで見てきたように、精神疾患のある方の就労支援では「働く場所を探すこと」と同じくらい「体調を保つこと」が重要になります。その体調を暮らしの側から支えるのが訪問看護です。事業所や職場では見えにくい、家での様子に関わることができるのが、他の支援機関との大きな違いです。
体調と生活リズムを一緒に整える
訪問看護では、看護師や作業療法士などの専門職が自宅を訪ね、睡眠、食事、活動量、気分の変化などを一緒に確認します。暮らしの側から支える役割なので、「今週は何時に寝ていたか」「どの日がつらかったか」といった具体的なところから話が始まります。
就労支援に通い始めた時期や、就職して間もない時期は、生活が一気に変わるタイミングです。本人は「まだ大丈夫」と思っていても、記録をたどると睡眠が削られていた、ということはよくあります。定期的に一緒に振り返る相手がいると、変化に早めに気づける可能性が高まります。無理のないペース配分を一緒に考えることも、訪問看護の役割のひとつです。
服薬を続けられるように支える
働き始めると、薬の飲み忘れが増えやすくなります。朝の時間に余裕がなくなる、昼の薬を職場で飲みにくい、調子がいいので自分の判断で減らしてしまう——理由はさまざまです。飲み方の工夫を一緒に考えることは、訪問看護が日常的に行っている支援です。
大切なのは、薬の種類や量を決めるのは主治医だという点です。訪問看護師が処方を変えることはありません。看護師が担うのは、飲めている・飲めていないという事実や、副作用と思われる様子を観察し、主治医へ報告・相談して、判断の材料を届けることです。「働き始めてから朝がつらい」といった変化も、次の診察で伝わるように整理しておくことができます。
主治医や支援機関との橋渡し
精神疾患のある方が働くまでには、主治医、就労支援事業所、ハローワーク、ジョブコーチ、相談支援専門員と、多くの関係者が関わります。それぞれが別の場所にいるため、情報が分断されやすいのが実情です。訪問看護は家での様子を知る立場から、必要に応じて関係機関との連絡や情報共有に加わります。
たとえば、事業所では明るく振る舞っているけれど家では動けなくなっている、という状況は、家に入る職種でないと見えません。そうした様子を主治医や支援機関に伝えることで、通う日数やペースの見直しにつながることがあります。本人の同意を前提に、間をつなぐ役割を担います。
家族が相談できる場になる
本人が働き始めるとき、家族もまた不安を抱えます。「背中を押したほうがいいのか、止めたほうがいいのか」「調子が悪そうだけれど声をかけていいのか」。距離感に迷う家族の相談先としても、訪問看護は使えます。訪問の場で家族の話を聞き、関わり方を一緒に考えることは、精神科の訪問看護が日常的に担っている支援です。
家族が一人で抱えて疲れきってしまうと、その緊張は本人にも伝わります。家族が誰かに話せる場所を持っておくことは、本人の安定にもつながります。「こんなことを聞いてもいいのか」と迷うような内容でも、遠慮なく話してもらえればと思います。
精神疾患のある方の就労を支えるシンプレ訪問看護ステーション

精神疾患のある方が働くことを考え始めるとき、通う場所や相談窓口は整っていても、「家に帰ってからの時間」を支えてくれる存在は意外と見つかりません。シンプレ訪問看護ステーションは精神科に特化した訪問看護を行っており、働くことを考え始めた方の暮らしを、自宅から支えています。
シンプレ訪問看護ステーションの特徴
シンプレでは、看護師や作業療法士などの専門職が定期的にご自宅を訪問し、体調や生活リズムの確認、服薬を続けるための相談、気持ちの整理のお手伝い、ご家族からのご相談への対応などを行っています。うつ病、統合失調症、双極症、不安症、発達障害など、幅広い精神疾患のある方にご利用いただいています。
大切にしているのは、その方のペースに合わせることです。就労支援に通い始めた方、就職が決まって環境が変わった方、いったん休職して立て直しを図っている方——それぞれで必要な関わり方は違います。こちらから何かを決めるのではなく、これまでどう過ごしてこられたかをうかがい、一緒に確認しながら進めていきます。主治医や就労支援の事業所との連絡も、ご本人の同意のもとで担います。
シンプレ訪問看護ステーションの対応エリア
- 東京23区
- 立川市
- 武蔵野市
- 三鷹市
- 府中市
- 昭島市
- 調布市
- 西東京市
- 小金井市
- 小平市
- 日野市
- 東村山市
- 国分寺市
- 国立市
- 福生市
- 狛江市
- 東大和市
- 清瀬市
- 東久留米市
- 武蔵村山市
- 多摩市
- 稲城市
- 和光市
- 朝霞市
- 志木市
- さいたま市
- 蕨市
- 川越市
- ふじみ野市
- 所沢市
- 川口市
- 戸田市
- 富士見市
- 新座市
シンプレ訪問看護ステーションの対応地域はおもに上記が中心で、訪問活動をおこなっています。該当エリアにお住まいの方はぜひご検討ください。
また上記以外のエリアにお住まいでも、対応できる場合がございますので、一度当社スタッフへご相談ください。
サービス内容を詳しく聞きたい、スケジュールの相談なども承っております。電話やメールなどで相談を受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。
訪問の頻度は週1〜3回が目安で、ご本人の状態によっては、主治医の指示にもとづいて週4回以上の訪問ができる場合もあります。1回の訪問時間はおおむね30〜90分です。土曜・祝日の訪問についてもご相談いただけます。ご本人だけでなく、ご家族からのご相談にも対応しています。まずは「就労支援に通い始めたが体調が心配」といった内容でかまいませんので、お気軽にご連絡ください。なお、お受けできる内容は時期・対応エリア・ご本人の状態によって異なり、一部お受けできない場合もありますので、対応可否はお問い合わせでご確認ください。
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まとめ|精神疾患があっても自分に合う働き方は見つけられる

精神疾患のある方の就労支援には、一般企業への就職を目指す就労移行支援、雇用契約を結んで働く就労継続支援A型、自分のペースで通えるB型、就職後を支える就労定着支援、そして進路を整理する就労選択支援があります。相談先も、ハローワークの障害者窓口、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、精神保健福祉センターなど複数あり、相談だけなら手続きなしで使える窓口もあります。
費用の面では、福祉サービスの利用料に所得に応じた上限があり、0円の区分に当てはまる方も少なくありません。通院の負担は自立支援医療で軽くでき、生活面では障害年金などの制度もあります。どれが自分に当てはまるかは状況で変わるため、市区町村の障害福祉窓口や医療機関の相談員に、まとめて整理してもらうのが確実です。
そして、働き始めてからの体調をどう保つかが、その先を大きく左右します。生活リズム、服薬、無理をしすぎない配分——こうした暮らしの側面を自宅から支えるのが訪問看護の役割です。働きたい気持ちを、一人で抱えなくて大丈夫です。就労支援に通うことを考え始めた段階でも、就職が決まって不安が増した段階でも、シンプレ訪問看護ステーションにご相談いただけます。
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※本記事は執筆時点の一般的な情報をまとめたものです。制度の内容や利用者負担のあつかいは年度の改定・地域・ご本人の状態により異なる場合があります。また、シンプレ訪問看護ステーションがお受けできる内容は、時期・対応エリア・ご本人の状態によって異なり、一部対応できない場合もあります。ご利用を検討される際は、お問い合わせから対応可否をご確認ください。参考:厚生労働省(障害者雇用率制度、就労系障害福祉サービス、工賃〔賃金〕の実績、自立支援医療制度の概要、障害福祉サービスの利用者負担)、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」、各自治体の公開情報。最新・正確な内容は各窓口でご確認ください。