心的外傷後ストレス障害の症状・治療法・相談窓口について詳しく解説
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状は、きっかけとなるつらい出来事を何度も思い出して苦しんだり、トラウマとなる経験から身を守るため感覚が麻痺したりと生活にも支障が出ます。
天災や事故、犯罪被害などで命の危険を感じる出来事の体験がトラウマとなり、さまざまな症状が現れます。
今回は心的外傷後ストレス障害(PTSD)の詳しい症状や治療法などを解説します。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の主な症状
再体験
・意識をしていない状況で苦痛な記憶を思い出す
・つらい記憶が夢に何度も出てくる
再体験は、侵入症状やフラッシュバックともいわれます。再体験は、心的外傷後ストレス障害の原因となった出来事が、繰り返し再現されているような感覚になることをいいます。
心的外傷後ストレス障害の原因となった出来事が、あまりに衝撃的であるために、体験が整理できない代わりに、夢などで症状として現れることです。
思い出したくない記憶が、危機的な感覚とともに再現されることで、不眠などの他の症状を引き起こすこともあります。
再体験の症状は、思い出すという以上に、まるで本当に繰り返し体験する感覚になるため、辛い症状になります。
過覚醒症状
・物音に過剰に敏感になりドキドキする
・少しのことで怒りを爆発させてしまう
・感情を抑えきれずイライラする
・わずかな音や臭いに反応し眠れない
心的外傷後ストレス障害の原因となった出来事の影響を受けることが、体験の後も続くことがあります。その結果、気持ちが常に張りつめるため、リラックスができない状態です。
少しの物音などに敏感になることや感情の起伏が激しくなることがあります。この過敏性も不眠や抑うつの原因になる場合があるでしょう。
前述した再体験の症状が、日常生活で繰り返されることも、過覚醒症状の原因になるようです。
この症状は、心的外傷後ストレス障害がよくなっていく過程で必要な身体やこころの反応と考えられています。
認知と気分の異常
・自分や他人に対して否定的な感情が強くなる
・興味関心がなくなり幸福感を感じなくなる
・罪悪感を感じ自分を責める
・強い孤独感を感じる
心的外傷後ストレス障害の原因となった出来事の影響で、認知や気分の異常が現れる場合があります。
出来事に関係する人を責めるだけでなく、自分を責める気持ちになることがあるようです。
他の症状でも、認知や気分に影響が出ます。そのうえで、自分を責めることで不安定な気分や日常生活に幸福感を感じなくなります。
心的外傷後ストレス障害の原因となった出来事の影響が強く、現実をありのままにとらえられなくなるという認知面の症状も現れる場合があります。
回避・麻痺症状
・つらい記憶を思い出すきっかけとなる状況を避ける
・苦しい経験を思い出すような場所・人物・会話を避ける
・トラウマとなった体験の記憶がなくなる
心的外傷後ストレス障害の原因となった出来事に関連する状況を避けようとして、回避という症状が現れます。
この症状は、つらい出来事を思い出したくないことや、向かい合いたくない心理状態からおこります。
避けようとする回避の症状によって、外出することもままならず、引きこもりになる可能性のある症状です。
心的外傷後ストレス障害の原因となった出来事についても、全く思い出せないという症状も起こります。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の原因
心的外傷後ストレス障害が診断されるには、原因となる危機的な出来事があることが条件にあります。その出来事として、おおいのは自然災害、交通事故などです。
これらの出来事は、命の危機を強く感じさせ、心的外傷後ストレス障害の原因となります。大きな自然災害の後には、一定数の人に心的外傷後ストレス障害の症状が現れます。
災害や交通事故で、被害にあった人を目撃した場合などでも、心的外傷後ストレス障害となることがあるようです。
心的外傷となる出来事を再体験したり、強い恐怖感を感じたりします。一ヶ月が経過しても、このような状態で、日常生活に支障が出ている場合に診断されます。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)かも?と思ったら
・よりそいホットライン
・こころの健康相談ダイヤル
電話・窓口
・保健所・保健センター
・精神保健福祉センター
心的外傷後ストレス障害の症状があり、心的外傷後ストレス障害があるかもしれないと思ったら、専門家へ相談をすることをおすすめします。
よりそいホットラインなどの電話相談は、電話があれば相談することができるサービスです。つらい症状などを、ひとまず話し相談することもできます。
受診先など、どのように選べばよいか悩む場合などに、保健所や保健センターに相談することもできます。
保健所には、お住まいの地区によって、担当の保健師が在籍しています。保健所の規模にもよりますが、保健師以外にも、医師や心理士などの専門家も所属しています。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断
心的外傷後ストレス障害の診断は、他の精神障害と同様に、診断の基準が決められています。
心的外傷後ストレス障害と診断されるには、診断基準であるICD-10で、心的外傷の原因となる出来事が半年以内にあることが条件になります。
極度のストレスを与える出来事としては、災害による被災や人からの暴力行為や性的虐待などがあげられます。
これらの出来事の後に、心的外傷後ストレス障害の症状が持続的にあり、日常生活や就労に影響が出てしまう場合に、心的外傷後ストレス障害の診断となります。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療法
環境調整
環境調整では、心的外傷後ストレス障害の原因となった出来事に関連する環境を避けることが中心になります。
ここでいう環境とは、場所以外にも人間関係も含まれます。心的外傷後ストレス障害の原因となった出来事に関係する人に合わないように調整するということです。
心的外傷後ストレス障害の原因になっている出来事によって、児童相談所や精神福祉保健センターなどの社会資源を利用し、相談することができます。
仕事復帰をしたい場合などには、仕事先の立地や働く時間などを調整することができます。
心理療法
心的外傷後ストレス障害の心理療法には、認知行動療法の治療効果が有効であることが示されています。
認知行動療法をすることによって、心的外傷後ストレス障害から現れる抑うつや罪悪感などを軽減する効果があります。
認知行動療法のなかでも、持続的暴露療法という心理療法が行われています。原因となった出来事について話をすることなどが治療の内容です。
個人セッションや集団セッションで、専門的な知識のある心理士などが治療を担当します。
薬物療法
心理療法とあわせて、薬物療法も行われることがあります。心的外傷後ストレス障害は、お薬だけで治療ができるわけではありません。
過緊張や再体験といった症状から現れるつらい症状などに対して、お薬の内服が検討されます。再体験が強く現れ妄想のような症状にも内服がすすめられます。
この場合、SSRIといったお薬が処方されます。SSRIは、不安感からくる動悸などの身体的な症状にも、効果のあるお薬になります。
強い抑うつや不安がある場合には、気分を安定させるお薬も処方されることがあります。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の方との接し方
心的外傷後ストレス障害になった方が、身近にいると、周囲の人は無意識にそっとしておくといったように、距離をとる場合があります。
また、よくなってもらいたい気持ちで励ましてしまうこともあります。しかし、本人は自分でも対処しきれないストレスに悩まされています。
まずは、患者さん本人が話すことができるのであれば、ありのままを聞き、なるべく早く、専門的な知識のある医療を受けられるとよいでしょう。
また、支える側の方もひとりで抱え込まないことが大切です。自分がなんとか治してあげたいと思わないことが大切です。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の方が受けられる支援
休職・傷病手当
休職・傷病手当は、ケガや病気で仕事を休む場合に、申請できます。経済的な不安で、休養できないことがないように、収入を保障する制度です。
精神障害などの療養のために仕事を休まなければならない場合に、勤務先で加入する健康保険組合から手当が支給されます。
その方の標準報酬月額に応じて、三分の二が支払われます。最長で、1年6ヶ月の期間で手当の支給があります。
傷病手当が支給されるのは、健康組合、協会けんぽ、共済組合に加入している場合になります。
精神保健福祉手帳
精神保健福祉手帳は、精神の障害があることを認定する証明書である福祉手帳の制度です。障害を持つ方が自立して社会生活をおくることを支援する目的で行われています。
この手帳の対象となる精神障害は多岐にわたります。ストレスが原因で発生した精神障害についても症状によっては交付の対象になります。
全国一律に行われているのは、公共料金などの割引、税金の控除や減免といったことです。
こころの健康センターという名称でも知られる精神保健福祉センターでは社会復帰などにむけた相談などにも対応しています。
自立支援医療制度(精神通院)
区分 | 上限額 |
---|---|
生活保護 |
0円 |
低所得1 |
2,500円 |
低所得2 |
5,000円 |
中間所得1 |
5,000円 |
中間所得2 |
10,000円 |
一定所得以上 |
20,000円 |
表の料金は所得に応じた医療費の月額自己負担額の上限額となっております。
表の料金を超えた場合には、自己負担なしで医療が受けられます。
自立支援医療制度とは、精神的に障害を受けた方が、自立して地域で生活できることを支援するための制度です。精神に障害のある方の、障害の軽減などのために医療の自己負担費が補助されます。
助成の内容としては精神科にかかわる医療費が1割負担になることと、所得に応じて月の自己負担上限額が設定され上限額を超えた分に関しては自己負担がなしとなります。
通院費やお薬にかかる費用も、自立支援医療の対象になります。そのうえで、精神科デイケアや精神科訪問看護を利用した場合に、その費用が補助されます。
精神科訪問看護
サービス名 | 精神科訪問看護 |
---|---|
職種 |
・看護師 ・准看護師 ・作業療法士 |
訪問日数 |
原則週3日以内 (※例外もあります。) |
精神科訪問看護は、看護師や作業療法士が自宅に訪問して、治療や社会復帰などの生活を支えるサービスです。
精神科の主治医の判断で、患者さんが希望される場合には訪問看護が利用できます。訪問看護の頻度は、基本的に週3日以下です。医師との相談や状態により、調整できます。
精神科医療の研修をうけ、専門的な知識をもった医療スタッフのケアを自宅にいながらうけることができます。
訪問看護では、話をしながら生活の悩みを一緒に考えてもらうことができます。
精神科訪問看護とは?
精神科訪問看護ってどんなことをするの?
・自立した生活を営めるための支援
・生活リズムの調整
症状の悪化防止・服薬支援
・生活状況を観察
・受診や服薬を支援
社会復帰へのサポート
・主治医や関係機関と連携
・社会復帰を支援
家族の方への支援
・家族へのアドバイスや相談
・社会資源の活用などを支援
精神科訪問看護は、精神障害のある方へ専門的なケアを提供するサービスです。在宅でどのように療養していくか相談をすることができます。
服薬への支援やバイタルサインを測ること、体調チェックをすることも訪問看護で可能です。
利用者さんの自立支援のために必要なことがどういったことであるのか、ともに考え、支援することができます。
生活リズムを整える工夫や社会復帰に向けての工夫を相談することもできます。必要があれば、医師など他の支援者とも協働し、連携をとることができます。
精神科訪問看護のメリット
- 自宅に居ながら専門的なケアが受けられる
- 自宅での様子を主治医に連携できる
- 対人関係や日常生活の支援を受けられる
精神科訪問看護のメリットは、自宅にいながら専門的なケアがうけられる点にあります。看護師や作業療法士が自宅での生活を支援します。
相談することも可能で、精神的支援として、話を聞いてもらうことができます。
体調不良の際は、自覚的には問題があると気づけなかったりすることもあるようです。しかし、訪問看護のサービスをうけていると、医師との連携で重症になるまえに相談できます。
利用者さんを支えるご家族の相談にものる場合があります。利用者さんが過ごす環境を踏まえたうえで、具体的なアドバイスを受けることができます。
精神科訪問看護の料金
負担割合 | 月の初回訪問 | 2回目以降 |
---|---|---|
3割負担 | 3,897円 | 2,565円 |
2割負担 | 2,598円 | 1,710円 |
1割負担 | 1,299円 | 855円 |
上記は週3回までの訪問料金となります。週4回以上訪問となる場合には料金が異なります。
精神科訪問看護では、医療保険を利用することにより自己負担を軽減できるメリットがあります。
30分を一区切りに利用可能。かかった費用については、年齢や所得によって変わり、医療費の1〜3割が自己負担となります。
また早朝や深夜などの時間外に依頼する場合や、長時間の訪問を行う場合は別途料金が発生します。
また自立支援医療制度いう制度を利用すると料金が1割負担になるほか、所得に応じて自己負担が0円になる場合もございます。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)をお持ちの方はシンプレへ
シンプレの特徴
シンプレ訪問看護ステーションは、精神科訪問看護に特化した訪問看護ステーションです。精神科の経験や知識のある看護師などが訪問を行います。
シンプレ訪問看護ステーションでは、精神的支援をするなかで、利用者さんの主体性を大切にしています。
利用者さんがどのように過ごしていきたいか、そのためにはどのようなことが必要か、一緒に考えることができます。
必要があれば、地域の支援者や医師と連携をして在宅療養を支えます。退院後の在宅生活支援も行っています。
シンプレ訪問看護ステーションの対応エリア
-
<東京都>
・東京23区
※足立区、荒川区は1部エリアとなります。
・西東京市
・三鷹市
・調布市
・武蔵野市
・府中市※1部エリア
・東久留米市※1部エリア
<埼玉県>
・和光市
・朝霞市
・戸田市※1部エリア
・川越市※1部エリア
・新座市※1部エリア
・川口市※1部エリア
シンプレ訪問看護ステーションの対応地域はおもに上記が中心で、訪問活動をおこなっています。該当エリアにお住まいの方はぜひご検討ください。
また上記以外のエリアにお住まいでも、対応できる場合がございますので、一度当社スタッフへご相談ください。
サービス内容を詳しく聞きたい、スケジュールの相談なども承っております。電話やメールなどで相談を受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。
ご相談の問い合わせはこちら▼
まとめ
この記事では、心的外傷後ストレス障害のさまざまな症状を紹介しました。心的外傷後ストレス障害は、症状のせいで仕事などの日常生活が普段通り行えなくなる障害です。
時間の経過で治癒する場合もあるものの、専門的な精神的ケアを受けることが望ましいといえます。
社会復帰に向けて、訪問看護のサービスを利用することができます。シンプレ訪問看護ステーションは、精神科に特化した訪問看護を行っています。
心的外傷後ストレス障害でつらい症状のある方、社会復帰をめざしていきたい方は、ぜひシンプレ訪問看護ステーションにご相談ください。
ご相談の問い合わせはこちら▼
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